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ドラフト候補カタログ【8】東野龍二(Honda)

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 東野龍二には、2歳上の兄がいる。

「小学校2年のとき、少年野球の体験入部の兄について行ったんです。で、兄は入部せずに僕だけ入った(笑)。それと、父が2人で甲子園に連れて行ってくれたとき。阪神ファンでしたが実際に見るのは初めてで、兄は片岡(篤史)さん、僕は桧山(進次郎)さんのユニフォームレプリカを買ってもらい、なんの縁があるのか、その試合では2人ともホームランを打ったんです」

 履正社高時代は2、3年のセンバツ出場があるが、夏は両年とも、決勝で大阪桐蔭高に敗れている。駒大に進むと、1年秋には今永昇太(現横浜DeNA)とともに左の両輪として優勝に貢献し、4年通算で19勝(1部6勝)をあげている。

「今永さんからは、"キャッチボールを大切にしろ"と教わりました。ブルペンでは投げても一日100球ですから、全球のうちキャッチボールの占める割合は高い。だからこそリリースを安定させ、相手の胸にしっかり返すことを意識すべき、と解釈しています」

 そういう日常が「野球を始めた小学生以来、制球で苦しんだ記憶はありません。ほとんど狙ったところに投げられた」という制球力を補強しているのかもしれない。Hondaに入社した2018年は、ルーキーながら、優勝した東京スポニチ大会で決勝の先発を任された。日本選手権でも、JR東海との1回戦で先発し、7回で降板したものの6回までは1失点。プロ入りした齋藤友貴哉(現阪神)に次ぐ7試合に先発し、防御率は2.39だから、試合をつくる能力はもう、エース格といっていい。

抜群の安定感はベテランのよう

 最速は140キロそこそこだがスライダー、カーブ、チェンジアップ、ツーシームを多彩に操る投球の安定感には、「入社当初からベテランのようでしたね」と岡野勝俊監督も舌を巻く。だが本人、2年目の課題を明確に意識していた。

「丁寧にコーナーを突けるのが自分の強みですが、その精度をもっと上げることと、日本選手権では7回で降板したので、完投できる体力をつけること。そのためには走り込んだり、入社前は無知だったトレーニングの意味にも、納得しながらやっています」

 1年目の都市対抗では登板機会がなかったが、今季は三菱自動車岡崎との初戦に先発。「社会人は、東京ドームで投げてナンボ」とは本人で、この試合は敗れたものの、日本選手権の代表決定戦にも先発し、明治安田生命相手の好投で出場を決めるなど、チームの柱として相変わらずの安定感を示している。トヨタ自動車の葛川知哉(大阪桐蔭高・青山学院大)とは高校からのライバルで、大学では直接対決はないものの、

「高校では負けていますからね。それと履正社高で同期だった阪本(大樹・大阪ガス)は去年都市対抗で優勝しているし……」

 もし次のステージで対戦することがあれば、当然負けるつもりはない。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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