Yahoo!ニュース

みずほ銀行「通帳代1100円」戦略を発表 他行も続くか個人はどうすべきか

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
来年からみずほ銀行は「通帳代1100円」を取ると話題です(写真:西村尚己/アフロ)

口座手数料を模索する銀行、りそなはすでに2年利用なしで手数料徴収

銀行にとって、給料振り込み日前日に「残高100円未満」となっているお客さんはあまりうれしいものではありません。毎月の入金額は数十万円程度でそのまま出金されるようでは、ほとんど商売になりません(そのお金を貸し出して金利を得ることもできない)。むしろ通帳を発行し口座データを管理していくコストのほうが高くつきます。

口座管理手数料を徴収する、という考えは何度か浮上しています。例えば昨年12月の報道では、三菱UFJ銀行が年1200円の口座管理手数料を徴収する検討をしていると報じられています。ただし2020年秋以降の新設口座のみを対象に2年間の取引がない場合に限る、と限定的な検討であるようです。

2019/12/5 朝日新聞 三菱UFJ、取引ない口座に手数料検討 年1200円か

その後、三菱UFJ銀行はコンビニATM手数料の改定を発表していますが、口座管理手数料の徴収は発表していません。

三菱UFJ銀行 2020年5月よりコンビニATM利用手数料を改定します

すでに口座管理手数料を取る例はあります。リンクを貼った朝日新聞記事にもあるように、りそな銀行は2年間入出金がない口座について、事前通知を行ったうえで口座管理手数料を年1320円(税込み)を引きます。残高がゼロになったら口座は解約されるしくみです。対象となっているのは2004年4月以降の開設口座を対象としています。

りそな銀行 普通預金口座の未利用口座管理手数料について

ここまでは、優遇や切り替えにポイント付与でオンライン通帳化を促してきた

今までメインバンクが取り組んできたのは「コンビニATM手数料や他行振込手数料についてはもうそんなに簡単に優遇しないぞ」というものでした。

あるいは「オンライン通帳(紙の通帳を発行しない)にしてくれたらコンビニATM手数料や金利の優遇をちょっとするよ」というアプローチでした。

もっとダイレクトに「通帳をデジタル化したら現金やポイント上げます」というキャンペーンを打ち出していることもあります。

三井住友銀行は8月末まで「2000円が5万人にあたる」Web通帳切り替えキャンペーンを行っています。

りそな銀行は9月末までインターネット通帳TIMOへの切り替えに「500ポイントプレゼント」を行っています。このポイントは多くの電子マネー、ポイント、ECサイトに対応しているので実質的に「500円プレゼントとほぼ同義」です。

なお、メガバンク各社がコンビニATM手数料の条件などを見直してきたことについては、私自身が1月に記事を書いていますのでご覧ください。

20/1/14 Yahoo!ニュース 2020年、コンビニATM無料の時代が終わる?みずほ銀見直しが決定打か

みずほ銀行が驚きの一手「通帳代1100円」を繰り出す

しかし、今回みずほ銀行はさらなる一手を繰り出してきたことが、業界では驚きを持って受け止められています。それは

「通帳代1100円を取る」

という方法でオンライン通帳に切り替えさせようというものです。

下記リンク記事によれば、ポイントはこうなるようです。

○紙の通帳に「通帳代1100円」を取る

  • 2021年1月18日以降の口座開設を対象(それ以前に開設の口座は対象外)
  • 通帳を発行しないみずほe-口座をスタート、オンラインで過去10年分は利用履歴を閲覧可能(みずほダイレクト通帳という)
  • 紙の通帳を発行する場合、口座開設時点、また通帳の繰越時に「1100円(税込み)」を徴収する
  • 通帳発行・繰越時に70歳以上の顧客は手数料無料(対象外)

○未記帳口座について通帳レスに強制変更する

  • すべての口座について、毎年1月末時点で1年間以上未記帳だった場合、自動的にみずほe-口座に切り替える(通帳レスに変更)
  • 切り替え後、通帳発行を希望する場合は再発行手続きが必要(通帳の再発行手数料は無料。ただし紛失の場合は1,100円(税込))

2020/8/21 みずほ銀行 通帳のデジタル化に関するお知らせ 

2020/8/21 日本経済新聞 みずほ銀、紙の通帳発行に1000円 新規口座で デジタル誘導

2020/8/22 日本経済新聞 みずほ銀、取引3レス ×通帳×印鑑×書類~経費減と利便性向上

普通の人はオンライン通帳でもOK 個人事業主等は慎重に判断を

今回のみずほ銀行の取り組み、口座管理手数料と銘打つのではなく、「通帳発行費用」に負担を求めているのが興味深いところです。

上記の日経新聞記事によれば「紙の通帳には1口座あたり年200円の印紙税などがかかり、メガバンクは年数十億円の経費を負担している。」ということで「紙の通帳」にかかるコストは銀行にとって相当重いようです(というか「紙」だけ印紙税の対象ということ自体、時代錯誤なのですが)。

さて、私たちは今回のニュースを踏まえてどう動くべきでしょうか。

まず、来年1月以降のみずほ銀行での新規口座開設については、通帳代1100円は大きな負担ですから、オンライン通帳の設定をするのが現実的でしょう。みずほ銀行以外で通帳ありの口座を開設するという選択肢もありです。

しかし、すでに発行済みの通帳については普通の個人にとっては紙の通帳かオンライン通帳かはあまり違いがないので、優遇サービスなどを見ながら有利な方を選択するといいでしょう。

今のところ、紙の通帳の利用者がスマホアプリを使うことはできますので、オンライン通帳に切り替えなければ極端に不便ということもありません。今後の動向を見ながら切り替えを判断しても大丈夫です。

ただし一度インターネット通帳にすると紙の通帳には戻れません。また「サービス変更前に発行した通帳」はみずほ銀行でも無料のまま繰越できますから、紙の通帳を残すという選択はあっていいと思います。特に確定申告を行う個人事業主などはオンライン化に不安があるかもしれません(10年データは残るようですが)。

そして、これはみずほ銀行に限る話ではありません。むしろ同様の波(手数料の負担)はメガバンクの残り2行にも何らかの形で及ぶと考えておいたほうがいいでしょう。メガバンクに限らず、多くの銀行でも同様に「インターネット通帳」への移行が進むことは間違いなさそうです。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

山崎俊輔の最近の記事