同性愛や性別違和をテーマにした映画祭『愛媛LGBT映画祭2014』
愛媛県松山市は人口50万人の四国にある地方都市です。もちろん、地方にも同性愛者や性別違和の人々は暮らしています。
その松山市で長年、性的マイノリティの人権啓発や当事者の支援をしてきたNPOレインボープライド愛媛が、広く市民に向けて性的マイノリティのことを知ってもらおうと開催しているのが、『愛媛LGBT映画祭』です。
LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉ですが、同性や両性に恋愛・性愛の感情を抱いたり、心身の性別に違和感を感じる人々など、当事者が前向きに表現した性的マイノリティの総称です(※)。
※もっと詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
第4回愛媛LGBT映画祭2014(12月13日~19日)
2011年から毎年開催して、今年で4回目になります。松山市内にあるアート系ミニシアター(シネマルナティク)を1週間借り切っての上映です。期間中の毎日、時間を変えてLGBTテーマの作品を6作品一挙上映します。
今年の上映作品も、厳選された6作品
日本の作品から海外のものまで、同性愛や性別違和など、さまざまな作品が揃っています!
「どうしても触れたくない」は、ヨネダコウのBLマンガの金字塔的作品が原作で、まさかの実写化!イケメン同士の切なくいじらしい恋を描きます。
「カミングアウト」は大学生のゲイ男子がカミングアウトをするまでの物語。今どきの若者ゲイの気持ちにキュンとなります。
グレン・クローズが男性として生きた女性を熱演した「アルバート氏の人生」には小さな幸せを求め、つつましく生きようとした一人の人間の愛おしさを感じ
ペルーの漁村で密かに会う男同士の愛を描く「波に流れて」では、厳しい同性愛としての人生が胸に迫る。
HIV/エイズとゲイリブ運動を描くドキュメンタリー「怒りを力に ACT UPの歴史」でアメリカの同性愛史を紐解く。
この秋全国公開のフランスのコメディ俳優ギョームガリエンヌ主演の話題作「不機嫌なママにメルシィ!」は楽しく笑って涙する。
新作話題作からこの映画祭でしか観られそうにない作品まで、すべてを観ておきたい作品がずらっと並んでいます。
チケットは1作品1,600円。数を見るほど安くなる鑑賞券が販売されていて6作品すべてを見ると1本1,000円以下で観ることができます。150名が入る映画館のため、立ち見になる心配はありません。当日会場で、期間中に鑑賞する本数分のチケットを購入すれば良いです。複数作品の鑑賞券を購入後は期間中の都合の良い日程で観ることができます。
毎日時間を変えて6作品のすべてを上映しているので、2日間かけて観ても良いし、仕事帰りに毎日1、2本観ていくことも可能です。
映画館のシネマルナティックがLGBT映画祭に関連して上映する「不機嫌なママにメルシィ!」については、映画祭の終了後も上映が続きます。映画祭のチケット(2作品券以上)はそのまま利用できます。
期間中、12月13日(土)には「HIV/エイズとゲイ運動」と題したトークイベントや、14日(日)には「カミングアウト」の犬童監督によるゲストトーク。映画祭終了後の21日(日)にはLGBTと市民の交流茶話会も開催され、映画祭の感想などを語り合います(場所 コムズ)
映画を通じて、性的マイノリティ当事者の人生や想いを伝えたい
全国でもLGBT映画祭は何カ所かありますが、当事者のお祭りとしての部分も大きく、当事者の参加が大半です。でも、愛媛の場合は、市民向けとしていることもあり、逆に当事者以外の参加が大半となっています。
地方では、当事者が集まるイベントとしてしまうと参加しずらい面があります。隠れた当事者にとって、地方での生活はより深刻なのです。自分のことが知られるのではないか?と、せっかく自分のことを描いている作品も見るチャンスを逃すことになってしまいます。そういう地方ならではの当事者の思いに寄り添う形として、広く市民向けのイベントとすることで、市民としての参加がしやすくなっています。
映画祭としての発信で、地元の新聞にも案内が出るなど、映画祭そのものが性的マイノリティの社会理解を進められている点も意義深いです。
社会の理解を進めていくことと、当事者の自信をどう高めるか。この両面を考えたイベントです。様々な取り組みをしているレインボープライド愛媛の中でも費用や労力ともに大きなイベントになっています。映画を通じて、性的マイノリティ当事者の人生や想いを伝えたいとの想いで作品の選定や交渉、宣伝やチケットの販売など、スタッフには大変な労力がかかっていますが、その大変さを実行し実現してきているゆえに、地域の中で、その本気が伝わっているのかもしれません。
宣伝に撒かれるチラシは4万枚!公共施設や飲食店での配置や学校や公民館にも配布しています。NPOや支援者の協力でDMに同封されたり、他団体のイベントで配布されたり、住宅へのポスティングまでもするそうです。映画祭の案内を通じて、性的マイノリティの存在を伝える機会になっています。
映画祭への後援を見ると、行政からマスコミ、男女共同参画や人権、国際交流協会など幅広い支援を取り付けていることが分かります。
また、映画祭を協賛する企業や団体も多く集まっています。今年はスタッフが今までの経験を元に頑張って、幅広く声掛けして集めたといいます。地域に根差した商店の名前があるなど、レインボープライド愛媛の活動への共感の広がりを感じます。今年度は赤い羽根共同募金の助成が受けられ、大きな後押しになっています。
映画祭に寄せられたメッセージでは、松山市長などの地域の顔ぶれが並んでいます。
このように地方で奮闘している性的マイノリティをテーマとした映画祭が、地方に暮らす人々にとって勇気となり、誰もが生きやすい街になっていく象徴として、今後も開催されていくことを期待したいです。そのためにも多くの人々が来場することで、応援や支援の広がりが出ていくと良いと思います。
第4回愛媛LGBT映画祭2014
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レインボープライド愛媛
同性愛や性違和、性同一性障害など性的マイノリティの当事者団体として、四国愛媛の県庁所在地である松山を中心に活動。当事者同士の支えあいや、社会の理解を進めるべく積極的な活動をしている。2010年からは毎年12月に愛媛LGBT映画祭を開催。2013年には中四国初となる常設の当事者支援施設として「えひめLGBTセンター 虹力(にじから)スペース」を開設。年3回地元愛媛のLGBT情報誌を発行し、公民館や支所をはじめ公共施設や市役所ロビーにも配布するなど、出来る可視化を進めている。また、選挙毎には性的マイノリティに関する公開質問を候補者に実施し、政党向けの調査も行い政権党の考えも明らかにしている。地域に根差した活動により、愛媛県や松山市の人権重要課題として性的マイノリティが入るなど、地域に変化が表れ始めている。