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駅で見掛けるNewDaysのCMキャラクター原愛音。東京に憧れる役に「昔の自分の想いと重なりました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』より(C)AX-ON

JR東日本の駅ナカコンビニ「NewDays」のイメージキャラクターとして、駅や電車内でCM動画やポスターをよく見掛ける原愛音。富山県射水市が舞台の青春映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』でヒロインを演じている。主人公の男子高校生が恋心を抱く同級生の役。自身が地元から上京する前の心境とも重なったという。その軌跡から聞いた。

こんなに見られているのかとビックリしました

――NewDaysのCM動画やポスターは、自分でも駅でよく見ますか?

 はい。福岡ではNewDaysって馴染みがない感じでしたけど、撮影して街で展開されるようになってから、「こんなにあるんだ!」とビックリしました。JRに乗ったら必ず目にする感じで、友だちからも「見たよ」と連絡をいっぱいもらって。たくさんの方の目に留まるCMに出させていただいているんだと、実感しました。

――福岡から仕事で東京に来ていた頃に、先代の芳根京子さんのCMを見てはいませんでした?

 ちょこちょこ見ていて「そう言えば……」と。その後を継ぐプレッシャーも感じつつ、すごくありがたいことで頑張ろうと思いました。最初の頃は恥ずかしいような嬉しいような、不思議な感覚でしたね。

――ポスターと並んで自撮りしたりも?

 しました(笑)。『僕ラー』の撮影で富山に行くとき、新幹線のホームにもNewDaysがあったんですね。大きいモニターに自分が映っていて、お客さんも見ていたりしたから、「本人いますよ」と思ってマスクを外してみたんですけど、声を掛けられることはまったくなくて。そのまま、おとなしく新幹線に乗りました(笑)。

「NewDays」ポスター
「NewDays」ポスター

等身大の頑張る自分が出ていると思います

――オーディションでCMキャラクターに選ばれたんですよね。

 そうです。「おにぎりをおいしそうに食べてください」といった課題がありました。選んでいただいてから、コンテを私に寄せてくださったみたいです。新社会人という設定で、高校を卒業した私の世代にフォーカスした感じでした。

――等身大で演じられたと。

 はい。私も福岡から上京して頑張っているところで、わりとそのままの自分が出ているかなと思います。

――「頑張った日の夜」篇では、通り過ぎかけたNewDaysの前で、後ろ走りで入口に戻るところがいいですね。

 あそこは何回かやりました。「もうちょっとこっち側に」みたいな感じで微調整しながら、作っていった記憶があります。

――あのCMで知名度が上がった実感はありますか?

 インスタのフォロワー数が増えたり、「NewDaysで見ました」というDMをいただくので、ちょっとは上がったのかなと思います。声を掛けられたことは一度もないですけど、マスクを外せるようになったらあるかなと、期待しています(笑)。

中1で自分で事務所に履歴書を送りました

――高校を卒業して、去年の6月に上京したんですよね。福岡は九州一の都会だから、東京で戸惑うことはなかったですか?

 人の多さには驚きました。渋谷の交差点とかテレビで見ていましたけど、実際に行ったら想像以上。平日の渋谷が土・日の天神くらいで(笑)、人酔いしてしまって、あまり行かなくなりました。

――東京でお気に入りの街はないですか?

 人は同じように多いですけど、浅草の街並みは好きです。上京する前、ちょこちょこオーディションを受けに来ていた頃から、空き時間に寄っていたんです。下町感のある雰囲気がいいですね。

――福岡では、中1から地元の芸能事務所に入っていたとか。

 自分で履歴書を送りました。すぐ受かるとは思ってなくて、福岡の事務所を検索して何社かに応募するつもりだったんです。そしたら、最初に送った今の事務所で面接まで行って、所属させてもらうことになりました。

――芸能界を目指したきっかけは、広瀬すずさん主演の映画『ちはやふる』だったそうですね。

 そうなんです。小学生の頃から芸能の世界に興味はありつつ、新体操をやっていて練習で忙しかったので、憧れくらいでした。それが、たまたま友だちに誘われて『ちはやふる』を観て、子どもながらにすごく心を打たれたんです。「自分もここに行ってみたい!」と。ちょうど小学生から中学生になる時期で、当時は映画をよく観ていたわけではなかったので、今思えば、その友だちに感謝ですね。

(C)AX-ON
(C)AX-ON

映画は途中で悩んでも最後には楽しかったと思えて

――学校でも人前に出るタイプだったんですか?

 全然違って、人見知りしまくってました。新体操をやっていても「顔が怖いよ」と言われて。お仕事を始めて人と話す機会が増えて、自分からも声を掛けられるようになりました。中学では学級委員になったり、生徒会に入って書記をやったりもしました。

――中3のときには、短編映画『デッドバケーション』に主演して「MOOSIC LAB」で女優賞を受賞しています。

 初めてお芝居にしっかり触れました。最初はモデルをやりたかったんですけど、女優にシフトチェンジするきっかけになりました。お芝居は人と人が対峙して、一緒に作り上げていくのが心地良くて。途中でどんなに苦しかったり悩んだりしても、最終的には「楽しかった。またやりたい」と思うので、自分に合っているのかなと思います。

――高3でも主演映画『みなに幸あれ』が日本ホラー映画大賞を受賞。自分の才能に自信が芽生えた感じですか?

 そこまではなかったです。むしろ、東京までオーディションを受けに行っても、落ちることのほうが全然多くて。そのたびに落ち込みましたけど、母が支えてくれました。「終わったことは仕方ない。何が足りなかったか考えて、ハイ次!」という感じで切り替えさせてくれたので、頑張れました。

恋模様が見えるように女の子らしさを意識しました

――『僕ラー』では、愛音さんが演じる花凛はラーメンを食べるシーンはありませんでした(笑)。

 そうなんです(笑)。花凛はちょこちょこ出てくる役どころで、自分は撮休でも現場にほぼずっといさせてもらって。ラーメン屋さんのシーンが終わったあと、休憩中に「私もいいですか?」と食べさせてもらったら、めちゃめちゃおいしかったです。

――このヒロイン役は指名が掛かって?

 もともと監督と、福岡にいた頃にFBSの開局50周年ドラマでご一緒していて。その繋がりで、声を掛けていただきました。

――台本を読んで、花凛の人物像をどう捉えました?

 高校3年生で、東京に憧れを持っていて。そこは自分とリンクさせられるかなと思いました。

――「蓋の外に出てみたい」という台詞は、愛音さんも思っていたこと?

 いつかは東京に出て活躍したい気持ちはありました。花凛も地元を嫌いなわけではないけど、自分の意志をしっかり持っている子で、そこは大事に演じようと。主人公のトオルとの恋模様も見えるように、女の子らしくて明るく、笑顔が素敵な子という印象も意識しました。

――川で船に乗っているときやバイバイするときに、元気に手を振るのも印象的でした。

 花凛はお兄さんが船を運転している設定で、川で学校に通っていたんです。トオルたちに声を掛けられて、橋の下から叫んで手を振るように言われました。乗り心地が良くて楽しかったです。私も手を振ったりは、いつも普通にしていると思います。

カラスの鳴き声とベビーカステラに苦戦しました(笑)

――お祭りの日に神社でトオルと隣りに座って、「よその大学に行くつもり」と話すシーンは見せ場でした。

 あそこの撮影は大変でした。夕方でカラスがワーワー鳴いていたので。長回しで、いいところだったのにカラスの声が入って(笑)、何回もリテイクしました。

――花凛の話は率直で、トオルの複雑な想いとのコントラストも出てました。

 どう言ったら、東京に行きたい気持ちと地元への想いが伝わるか考えました。1人ではわからなくて、監督たちと話し合いながら作り上げた感じです。お祭りで買ったベビーカステラを食べながら話していて、口に入れるタイミングが悪いとモゴモゴしてしまって(笑)。ベビーカステラは口が結構パサパサになるから、そういうところも苦労しました。

――停電の夜の、同じく同級生で東京から来たアゲルとの会話は、甘酸っぱさもありました。

 暗い中で、アゲルのことをいいなと思っている空気感を大切にしました。川越しに話すのも、「青春やな」と感じながらやっていました(笑)。

――愛音さん自身にもあった青春ですか?

 実際は全然なくて(笑)。高2からコロナの時期になって、修学旅行も文化祭も体育祭も全部なかったので、青春みたいなものはないまま、学生時代は終わってしまいました。卒業してから射水でこの映画を撮影して、ちょっと修学旅行気分もあって、2週間すごく楽しませてもらいました。

方言は自然にうつっていました

――撮休の日とか、多少は射水で観光的なこともできたんですか?

 そういう1日もありました。地元の方にいいカフェを教えてもらったり、自転車を借りて1人で街を回ったり。映画にも出てきますけど、海王丸という大きな帆船がある港にも行って、展望台から海がバーッと見えるんです。すごくリフレッシュになりました。

――富山弁はどう覚えたんですか?

 現場で教えてもらいました。トオルのお母さん役の雷鳥のお姉ちゃんが方言指導もしてくださって、台詞を言いながら「ここはこう」みたいな。あと、地元のスタッフさんが方言で話されるから、その場にいるだけで自然にうつりました。

――よくあるように、お手本を聞いて練習したりはせず?

 なかったです。最初は不安で、自分でYouTubeで調べたりもしましたけど、私は言葉がうつりやすいみたいで、そこまで苦労しませんでした。ただ、語尾に「〇〇が」と付いて、シチュエーションによって上げ下げがあるのは、ちょっと難しかったです。

間の取り方で印象が変わるのが勉強になりました

――愛音さんは普段は博多弁が出たりはするんですか?

 お仕事では全然出ません。友だちとタメ口で話していると「なんしよっと」とか「〇〇やけん」とか出るくらいです。

――トオル役の酒井大地さんたち男子3人とは、現場で溶け込めました?

 3人は撮影中も撮り終わっても、ずっと変わらない感じでふざけ合っていて、そこに私も巻き込まれました(笑)。受け入れてもらって、みんなでTikTokを撮ったりしていました。

――他に、撮影で特に印象に残っていることはありますか?

 全部撮り終わったあとに、監督から「間(ま)を大事にしたほうがいい」と言われました。掛け合いの中で、間の取り方によって、観ている側の印象が違ってくると。確かに、現場で丘みつ子さんのお芝居を見させていただくと、監督のおっしゃる通りでした。間の使い方で大事にしたい言葉が強調されたり、すごく勉強になりました。

いつかアクションができるようにジムに通っています

――中1から芸能界を目指して、とりあえずここまでやってきて、途中で挫けそうになることはありませんでした?

原 しょっちゅうあります(笑)。毎日いいことばかりではないし、オーディションに落ち続けることもよくあって。全然進まないときは「無理だー!」って、何もやりたくなくなってしまうんです。そういうときは母や地元の友だちに電話して、いったん仕事から離れます。別のことでモチベーションを上げて、また次に頑張る感じです。

――上京してから、ホームシックになったことは?

 ありました。お盆で帰省から戻って、『僕ラー』で富山に撮影に行く前に、NewDaysのCMの取材を受けたんですね。一気に4件くらい。そういうことが初めてで、すごく緊張して、うまくしゃべろうと考えすぎて、頭がパンクしてしまって。終わってから、母に泣きながら電話しました。「どうした?」と驚かれましたけど、「最初からうまくはいかない。自分の言葉で話したのなら、わかってくれるから」と言ってもらって、何とか立ち直れました。

――女優として活躍するために、日ごろから努力していることはありますか?

 いつかアクションをやりたいと思って、週1でレッスンとキックボクシングに通っています。自分でジムを検索して、過去に映画でアクションを付けた経歴のあるところを見つけました。新体操をやっていたので柔軟性はあって、先生から「初めてとは思えない」と言ってもらいました。

いろいろな役を演じ分けられるようになれたら

――アクションは何かを見て、やりたいと思ったんですか?

 『キングダム2』の清野菜名さんや、その前の長澤まさみさん。あと、以前の『MOZU』の真木よう子さんも印象的でした。女性が戦うとカッコいいし、自分がその立場になれたらいいなと憧れたのがきっかけでした。

――映画やドラマはよく観るんですか? 広瀬すずさんが主演した『夕暮れに、手をつなぐ』のことはツイートされてましたが。

 よく観ます。最近面白かったのは『湯道』です。富山に行ってからサウナにハマったんですね。何分くらい入って、水風呂で冷やして……と教えてもらって。今まではお風呂に入るのが面倒でしたけど、サウナや温泉に行くようになって『湯道』も観たんです。またととのいに行きたくなりました(笑)。

――お芝居的にも惹かれるところはありました?

 コメディは自分もやってみたいなと思いました。全力でふざける感じで。

――変顔とかもやりますか?

 やれと言われたら……というか、むしろ喜んでやりますね(笑)。

――将来的には、どんな女優人生を思い描いていますか?

 目指したきっかけの広瀬すずさんみたいに、いろいろな役を演じ分けられるようになりたい、というのがあります。あと、アクションもやって、女性に憧れられるような女優になりたいです。

20歳前にブラックコーヒーが飲めるように(笑)

――8月には20歳になります。

 大人になる節目かなと思っています。かと言って、急に何かが変わるわけでもないですけど、とりあえず興味があることは、なるべく挑戦していくようにしたいです。

――自分で大人になってきたと思うところもありますか?

 ブラックコーヒーが飲めるようになりました(笑)。最近までカフェオレとか、砂糖やミルクを入れて甘くしないと飲めなかったんです。

――どうやって飲めるように?

 まず、東京に来てから、純喫茶巡りをしていたんです。オシャレなカフェはシャキッとしないといけない感じで自分に合ってなくて。ちょうどレトロカフェが流行って、そういう雰囲気が好きだったので、インスタやTikTokでピックアップして巡ってました。

――そこでコーヒーを飲んだんですか?

 最初はメロンソーダでした。でも、甘いケーキを頼んだとき、一緒にブラックコーヒーを飲んだら合うなと気づいて、すごくハマって。いつの間にかブラックコーヒーだけでもいけるようになっていました。味覚が大人になって、苦さも味わえるようになったんだと思います(笑)。

カバーガールエンターテイメント提供
カバーガールエンターテイメント提供

Profile

原愛音(はら・あいね)

2003年8月8日生まれ、福岡県出身。

2018年に短編映画『デッドバケーション』で初主演。主な出演作はドラマ『天国からのラブソング』、『メンズ校』、『More Than Words』、『スタンドUPスタート』、『ヒロインの親友はハードスケジュール!!』、映画『みなに幸あれ』など。JR東日本クロスステーション「NewDays」イメージキャラクター。5月26日より公開の映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』に出演。

『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』

監督/本多繁勝 脚本/西永貴文 

出演/酒井大地、原愛音、宮川元和、長徳章司、泉谷しげる、立川志の輔、丘みつ子ほか

5月19日より富山3館先行公開、5月26日よりユーロスペース、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

公式HP

富山県射水市に住む高校生男子3人組、トオル(酒井大地)、アゲル(宮川元和)、ヨシキ(長徳章司)は、それぞれ悩みを抱えながらも、同級生の女子・花凛(原愛音)との会話を弾ませ、放生津曳山祭を楽しみに過ごしていた。その祭りの前日、トオルの祖父が急死。家に借金があることを知り、町にもリゾート開発の不穏な空気が漂っていた。そんな折り、トオルたちは蔵で「射水の埋蔵金」という巻物を見つける。

(C)AX-ON
(C)AX-ON

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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