韓国で3月25日の日韓戦に対する反対意見が出ているという。日本ではサッカー専門サイト「ゲキサカ」が報じ、Yahoo! モバイルのトップページでも取り上げられた。13日午前には、日本のTwitterのトレンド入りもした。

韓国で日韓戦の中止を求める声「私たちは利用されている」日本の“思惑”を指摘

いったいこの報道をどう捉えるべきか。

大手一般紙「東亜日報」も報じた内容だけに、この点からすると「日本にも伝える価値がある」。

韓国大統領官邸「青瓦台」公式サイトの「国民請願コーナー」に「日本戦反対」の申し出がなされた。「この時勢に韓日戦とはどういうことか？」と記されているのだが、時勢とは「硬直化した日韓関係」ではなく、日本のコロナ感染状況への不安を記している。「対策が未熟な国」だと。

この「国民請願」とは日本に存在しないシステムだ。

韓国国民が、ここを通じて大統領に改善点を要求することができる。13日現在、公務員の住宅不正購入疑惑が浮上している「国内の新都市の開発を撤回してほしい」といった要望が寄せられている。

各自の投稿に対し、30日間で20万の”推薦（いいね!　に似た制度）”が集まると、大統領官邸側からサイト上に回答が来るというシステムだ。

ただし請願を出すには条件がある。「サイトに要請をアップする前に100人の同意を得ていること」。2017年8月17日（文在寅現政権時）に公式スタートした。細かい制度改正を重ね、今ではサイト運営側によるアップ内容の審査が必要となっている。

よく見ていくと情報には「別の一面」も

ここから先を細かく見ていく必要がある。この「日韓戦反対」の請願に対する、13日現在の推薦（賛同）数だ。

「6846」

これは非常に少ない数字と言わざるを得ない。じつは今回の報道…そんなに重大ではないという面もあるのだ。ちなみに3日13時18時時点の全体の賛同数1位は日本のワイドショーでも話題になっているMe too関連のもので、「女子バレー選手の校内暴力事態の真相解明ならびに厳正な対応を求める」。これは14万超となっている。今回の「韓日戦中止要請」の7000水準はかなり低い。

「海外が見る日本」の情報での「あるある」だ。「小さな動き」でかつ「過激な反応」それでいて「読まれそうなテーマ」というのは、日本メディアには大きく捉えられがちだ。特に3番目のポイント「読まれそう」という点を重んじることは、筆者としても痛いほどよく分かる。

とはいえ、ことさら韓国内での「日本関連の小さな出来事」は日本に大きく報じられがちだ。

例えば「慰安婦問題のデモ」。この問題自体については、日本は2015年の合意後にも被害者に寄り添うべきだと筆者は考えるが、デモの規模の大小でいうと、小さい。長年、毎週水曜日に行われてきた恒例のデモの参加者は多い時には1000人前後。いっぽう2008年、狂牛病問題での李明博大統領の対応の甘さを批判するデモには5万人規模が集まった。韓国人はそんなに日本のことばかりを考えているわけではない。これまた歴然とした実態だ。しかし派手なアクションが出てくると、そこが切り取られて報じられやすい。

さらにこの「国民請願」、投稿内容が荒れ気味であることでも有名だ。過去にはこんな内容が大統領官邸に向けて投稿された。

「スウェーデンと戦争しよう」

「有名オンラインゲームのディレクターを弾劾しろ」

「ドナルド・トランプ弾劾要求」

「SKYキャッスル（人気ドラマ）第20話の撮影し直し要求」

「中古ギター、売ります」

「日本戦やめろ」の話などいくらでもある

だから、「仲良く日韓戦をやりましょうね」ということは言わない。言いたいことはその逆だ。

こういった反発はいくらでもある。あえて、今回の日本戦への反発の反応をほじくり返してみよう。ただし、これを見つけるためには韓国語のインターネット上の深層に入り込まなければならない。

国内最大のポータルサイト「NAVER」スポーツニュースのコメント欄は2020年8月下旬に閉鎖された。するとニュースへの反応はサッカー専門の掲示板を持つサイトに求めるしかない。韓国には「サッカーライン」という有名なサイトがある。日々、サッカーの情報についてファンがコメントを残しているのだが…

今回の「韓日戦中止要請」のへの反応はとても小さなもの。リアルタイムアクセスランキングトップ10にも「韓日戦スタメン予想」の話が入っただけで、「中止しろ」という今回の話は入っていない。多くはイングランド・プレミアリーグや、ヨーロッパチャンピオンズリーグについて話している。

ただし3月3日の韓国内での今回の日韓戦の初報道の際には「日本からのオファーを受けるな」という話を中心に30のコメントが入った。

「いいね!」リアクションの多かったもの上位のうち、表現がここに記せる範疇のものを紹介しよう。

いいじゃないか。「国家間の関係がピリピリしているからこそ、緊張感のある国際Aマッチ」。今の日本にとって、そういった対戦が日韓戦・日朝戦の他にあるだろうか？　親善試合でのスリルは、欧州の代表チームとのアウェーゲームに凝縮されてきたが、今はそれが組みにくくなっているのだ。緊張感こそよき要素。やるときゃやろう。日韓たるもの、ぶつかる時は徹底的にぶつかるのが健全な関係。言わせとこう。決着はサッカーでつけよう。