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アン・シネに影響か、イ・ボミらは?…韓国女子ゴルフが海外ツアー参加を制限へ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
来季は韓国ツアーを主戦場とするアン・シネだが…(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

来季は韓国女子プロゴルファーたちの海外ツアー参加に制約があるかもしれない。KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)が来季から、新たな規定を設けることを検討しているからだ。

筆者が最近入手した『2019年KLPGAツアー説明書』によると、「KLPGA1部ツアー出場選手(シード選手)の、同一期間内に海外で開催される海外ツアー出場回数は1シーズン最大3回までとする。なお、KLPGAのメジャー大会と海外ツアーが重なる場合、メジャー大会に義務的に参加しなければならず、規定違反した場合は10試合出場停止・最大1億ウォン(約1000万円)の罰金が負荷される」と記されていた。

この『2019年KLPGAツアー説明書』はKLPGAが来季スポンサーのために公示した資料で、新規定は11月6日の理事会で話し合われ、あとは最終的な承認を待つだけになっているという。

次世代セクシークイーンは対象外だが…

新規定はイ・ボミ、キム・ハヌルなどすでに日本やアメリカなどの海外ツアーでシード権を持ちそこを主戦場とする韓国人選手には適応されない。

あくまでもKLPGA正規ツアー(1部ツアー)を主戦場とする韓国人選手たちが対象となる。そのため、今年11月の日本ツアーのファイナルQTで話題となった“次世代セクシークイーン”のユ・ヒョンジュは対象外だ。

ユ・ヒョンジュは昨季1部ツアーのシード権を逃し、今季は2部ツアーにあたるドリームツアーに出場。それでも韓国のカメラマンたちの間で話題になるのはさすがだが優勝は1度もない。

(参考記事:“韓流ゴルフ女神”ユ・ヒョンジュの男心をつかむフィジカル【PHOTO】)

そのため2019年もKLPGA1部ツアーのシード権は持たず対象外となるが、“先輩セクシークイーン”アン・シネはこの新ルールを無視できないだろう。

というのも、この規定には「最初に発表されたKLPGAのシーズン(つまり2019年)基準で、全体の30%に出場した選手は該当シーズンから適用される」という追加文もある。

アン・シネはどうなる?

先日の日本ツアー・ファイナルQTで51位に終わったアン・シネは来季、韓国ツアーを主戦場にしながら(2015年に韓国のメジャー大会のひとつであるKLPGAチャンピオンシップ優勝で2019年までのシード権を持つ)、日本ツアーは推薦出場などで4試合前後に参加するのではないかと見られているが、韓国のほうで「3試合まで」との制限が設けられるわけだ。

アン・シネが日本のステップ・アップ・ツアーに専念するなら問題ないだろうが、KLPGA1部ツアーのシード権を持ち来季は韓国を主戦場にする予定であることを示唆しているだけに、アン・シネを含め“韓国美女ゴルファー神セブン”にも名を連ねるキム・ジャヨンらの動向は、日韓両国のゴルフファンたちとって気になるところだろう。

かつてKLPGAには、「KLPGAに新規登録された正規会員は登録日から2年間国内で活動しなければアメリカや日本ツアーのQTは受験できない」という“2年ルール”というものがあったが、それに代わる“縛り”になるとも言えなくもない。

制約に踏み切った背景にあるものとは?

KLPGAがこうした規定変更に踏み切った背景には、2017年に続き2018年も賞金女王に輝いた“ホット・シックス”ことイ・ジョンウン6のケースがあったためではないかと言われている。

イ・ジョンウン6は今季、アメリカKLPGAツアーに7試合、日本ツアー1試合(ワールドレディス・サロンパス杯)などに出場したため、KLPGAツアー10試合に欠場した。それでも2年連続で賞金女王に輝いたのだから凄いが、女王不在でファンやメディアの関心が薄れ、スポンサーからの不満も買ったと言われる。

韓国・聯合ニュースの取材に応じたKLPGA関係者によると、「規定変更は選手たちの海外進出に歯止めをかけたいわけではなく、韓国を主戦場にしているときはKLPGAツアーに専念してほしいという趣旨」だというのだ。

ただ、KLPGAツアーも試合数は多い。2017年は30試合、2018年は28試合あり、前出した『2019年KLPGAツアー説明書』には「2019年は28試合プラスα。歴代最大規模(最多は2016年の32試合)を予定中」と記されていた。

そんな中で「3試合限定な上にメジャー大会中は禁止」となれば、韓国人選手の選択肢も限られてくる。少なくとも日本やアメリカツアーへの試合選びは慎重になるだろう。

来季の日本ツアーには、ファイナルQTを通過した“韓国のツヨカワ・ゴルファー”ペ・ソンウがやってくるが、2018年の韓国ツアーで2勝・賞金ランキング2位の彼女はKLPGAツアーのシード権も持つだけに、規定変更となればそれが彼女の足かせになってしまうかもしれない。スポンサーとの兼ね合いで、1年目は韓国と日本のツアーを並行する選手が過去には多かったからだ。

(参考記事:日本進出する韓国の“ツヨカワ”女子ゴルファー…賞金1位・2位が韓国女子ツアーから抜ける)

ちなみにイ・ジョンウン6はアメリカ女子ツアーの「クォリファイング(Q)シリーズ」を1位で通過し、来季からアメリカに挑戦する。

2014年のキム・ヒョージュ、2015年のチョン・インジ、2016年のパク・ソンヒョンなど、近年のKLPGA賞金女王たちと同じように、イ・ジョンウン6も韓国を離れることになったわけが、KLPGAツアーの2019年シーズンはすでに始まっている。

12月7日〜9日には2019年シーズン開幕戦となる『ヒョソン・チャンピオンシップwith SBS Golf』がベトナム・ホーチミンで行われ、2015年KLPGA新人王のパク・ジヨンが優勝した。

それだけではなくトップ10・12人(10位タイ)のうち、実に4名が新人で1999年生まれや2000年生まれの若手たちだった。日本でも今年は1998年生まれの“黄金世代”が話題だったが、韓国でも新たな力が台頭しているのだ。

(参考記事:韓国女子ゴルフツアーに18歳の大物ルーキー登場!? “2000年生まれ”三銃士とは)

いずれにしても韓国女子プロゴルフ界は近年続出する有力選手たちの海外進出に何らかの制約を設ける方向に舵を切ろうとしている。それが吉と出るか凶と出るか、注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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