「いいとこ取り」のユニクロ。「正社員のパート化」のほうが問題だ
●今朝の100円ニュース:ユニクロ1万6000人正社員化(朝日新聞)
やりたいことがある人ではなく、やりたくないことがはっきりしている人がフリーランスに向いている――。先輩のライターが語っていたのを思い出す。
会社員の人たちからは「一人で働いているなんてすごい(神経が図太い)ねえ。私は怖くて会社を辞められない」なんて言われることがある。でも、いろんな人たちと曲がりなりにも一緒に働いて成果を分かち合えるほうがよっぽど「すごい」と僕は思う。
僕たちフリーランサーには、よく言えば繊細、悪く言えば協調性に乏しい人が多い。人間の好き嫌いが激しく、それが態度に出てしまう。子どもっぽいのだ。
「相性の合う人」「好きな人」に仕事を頼まれたら調子に乗って張り切ってしまう。ギャラも気になるけれど、「次もぜひ大宮さんにお願いしたい」「また一緒に仕事したいから」といったフレーズに弱い。約束を守り、企画力に優れ、気遣いもできて、成果も上げ続けている人と組んで楽しく働きたいと思う。
一方で、「嫌いな人」にはなるべく近づかない。失礼な人は論外だけど、性格は良くても仕事の相性が僕と悪いこともある。そういう人と組んでいると気持ちが落ち込んできて他の仕事にも悪影響を与えかねないので、次に何か頼まれても「いま忙しい。たぶん、ずっと忙しい」と下手な言い訳をして逃げる。本当は来週の予定もガラ空きなんですけどね。
組織人は違う。メンバーの持つ力を継続的にほぼ独占することで、個人とは比較にならないほど大きな仕事ができる。その対価として、気の合わないメンバーとも折り合いをつけ、不調なメンバーの分はみんなで補い合うことが求められる。特にリーダーの責任は重い。
今朝の朝日新聞によると、ユニクロを運営するファーストリテイリングは国内店舗で働くパートやアルバイトの半数以上にあたる1万6000人を「地域限定正社員」にする方針を決めたという。優秀な店員の定着を狙ったものだろう。
僕はむしろユニクロで働く正社員の「パート化」のほうが気になる。同社で働く正社員4652人の平均年齢は30.0歳。店長は29.5歳で、現場のトップであるリーダー(117人)すらも39.5歳である。この20年ほどで急成長をしているために若い新人が増えている影響もあるが、何よりも「3年で3割、10年で8割」は辞めると推測される同社の高い離職率の「賜物」だと思う。この点については、1年前に東洋経済オンラインの記事で書いたので参照してもらいたい。
若くて元気で素直で優秀な人とだけ一緒に働きたい、40歳を超えて体力が落ちてきた人はハイパフォーマーを除いて会社を去ってほしい、もし会社に残るならばローリスクローコストの存在に落としたい、というのは企業経営者の本音だろう。実際、近年の日本では非正規雇用の人数が増加の一途を辿ってきた。
しかし、実行してはいけない本音もある。組織で動くメリットは最大限に享受したいけれどデメリットは切り捨てたい、という「いいとこ取り」は許されないのだ。「嫌いなヤツとは働きたくない」のであれば、僕たちのようなフリーランサーになるしかない。
ファーストリテイリングを率いる柳井氏は事実上の創業社長であり、今でも一人きりで個人商店を切り盛りする感覚で1兆円企業を経営していると感じる。それは同社の強みではあるけれど、社会から「いいとこ取り」をし続けてきたツケはいずれ払わされることになるだろう。