バルセロナを襲う「売却」と「育成」におけるジレンマ。
すでに来季に向けた補強を検討しているバルセロナだが、現時点で新戦力の到着は決まっていない。ラウタロ・マルティネス、ミラレム・ピャニッチ、ネイマール...。前線2選手+中盤1選手で戦力を充実させる考えがあるものの、バルセロナはジレンマに襲われている。
新型コロナウィルスの影響でリーガエスパニョーラは一時中断した。そして現在、6月11日からの再開に向けて動いているところだ。しかしながら各クラブの財政は圧迫されており、バルセロナの場合、1億5000万ユーロ(約178億円)の損失があるといわれている。予算のおよそ15%が「削られる」格好だ。
■補強候補と高額な獲得費
契約解除金が1億1100万ユーロ(約132億円)に設定されているラウタロをはじめ、ピャニッチ、ネイマールの獲得費は高額になるだろう。バルセロナは選手のトレードをオペレーションに含めて移籍金を引き下げようとしているが、いずれも交渉成立には至っていない。
そうなると、まずは選手を売却する必要がある。資金を捻出しなければならないからだ。ネルソン・セメド、アルトゥーロ・ビダル、イバン・ラキティッチ、サミュエル・ウンティティ、ジャン=クレール・トディボ、これまで複数選手が売却候補として挙げられてきた。
近年、バルセロナは「売り下手」なクラブから脱却しつつある。史上最高額の移籍となった2017年夏のネイマール(契約解除金2億2200万ユーロ/パリ・サンジェルマン)を筆頭に、巧みに選手たちを売り捌いてきた。
この3シーズンで、実に31件のオペレーションが成立している。2017-18シーズン(選手売却費2億3400万ユーロ/約278億円)、2018-19シーズン(1億3900万ユーロ/約165億円)、2019-20シーズン(1億8600万ユーロ/約221億円)と十分な収益を得た。なお、ここではボーナスは含まれておらず、買い取り義務オプションの金額が加えられている。
■カンテラーノの流出
一方で、弊害がもたらされている。カンテラーノの流出だ。
今季、カルレス・ペレス(移籍金1100万ユーロ/ローマ)、アベル・ルイス(800万ユーロ/スポルティング・ブラガ)、アレハンドロ・マルケス(820万ユーロ/ユヴェントス)らがバルセロナに別れを告げた。手塩に掛けて育ててきた選手たちをあっさりと売ってしまうのは、ヨハン・クライフが提唱した精神に反する。
昨年夏、Bチームからトップ登録されたのはムサ・ワゲのみ。そのワゲでさえ、すぐにニースにレンタル放出された。2019-20シーズン、新天地を求めたカンテラーノは8選手に上る。
先述したように、バルセロナは過去3シーズンで31件のオペレーションをまとめ、合計5億5900万ユーロ(約665億円)を得た。だがカンテラーノは流れていき、クラブはラウタロ、ピャニッチ、ネイマールを獲得しようとしている。いま、バルセロナは矛盾と対峙する必要性に迫られているのかも知れない。