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前・福岡ソフトバンクのマルティネスは、パドレスのローテーションに入れるのか。契約は4年2000万ドル

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニック・マルティネス August 7, 2021(写真:ロイター/アフロ)

 ニック・マルティネスは、今シーズン、福岡ソフトバンク・ホークスで21試合に先発し、140.2イニングを投げて防御率1.60を記録した。規定投球回には2.1イニング足りなかったものの、パ・リーグで70イニング以上の34人中、防御率2.50未満は、193.2イニングで防御率1.39の山本由伸(オリックス・バファローズ)とマルティネスしかいなかった。

 来シーズン、マルティネスは、サンディエゴ・パドレスの投手として投げるようだ。ESPNのジェフ・パッサンらが、そう報じている。直後にロックアウトとなったため、契約が合意の段階なのか、締結に至ったのかは不明ながら、入団することは、まず間違いないだろう。

 ただ、来シーズンの開幕ローテーション入りは、確定とまではいかない。今シーズンのパドレスでは、ジョー・マスグローブダルビッシュ有ブレイク・スネルクリス・パダックの4人が、それぞれ20試合以上に先発した。彼らはいずれも、現在もパドレスにいる。さらに、来シーズンは、昨年11月にトミー・ジョン手術を受けたマイク・クレベンジャーが復帰する予定だ。彼らが揃い踏みすれば、ローテーションの5枠はすべて埋まる。

 4人のうち、今シーズンの防御率が4.00未満はマスグローブだけながら、昨オフにトレードでパドレスに加入した3人、マスグローブ、ダルビッシュ、スネルは、前のチームでエースあるいはエース格だった。パダックは、ここ2シーズンこそ不本意な結果とはいえ、2019年の開幕まではプロスペクトと目されていて、このシーズンは140.2イニングで防御率3.33を記録した。年齢は、来年1月に誕生日を迎えても、まだ26歳だ。クレベンジャーは、2017~19年にクリーブランド・インディアンズ(現ガーディアンズ)で、3シーズン続けて120イニング以上&防御率3.15未満。2018年は200.0イニングを投げ、トレバー・バウアー(現ロサンゼルス・ドジャース)らとともに、史上初の「200奪三振カルテット」を結成した。

 しかも、パドレスには他の候補もいる。ディネルソン・ラメットは、2020年に12先発(69.0イニング)で防御率2.09を記録した。マッケンジー・ゴアライアン・ウェザースは、2017年のドラフト全体3位と2018年の全体7位だ。2人のうち、ウェザースはすでにメジャーデビューしている。

 パドレスがマルティネスと契約したのは、ローテーションの候補に厚みを持たせる、という意味合いが大きいような気がする。先発投手でなくても、パドレスは、先発とリリーフの両方をこなすスウィング・マン、あるいは長めのイニングを投げるリリーフ投手として起用できる。マルティネスは、2014~17年にテキサス・レンジャーズで、先発68登板とリリーフ20登板を記録している。

 もちろん、パダックを押しのけて――あるいは他の投手の故障などで――ローテーションに入り、そこで好投する可能性もある。2010年のコルビー・ルイスや2018年のマイルズ・マイコラス(セントルイス・カーディナルス)は、日本プロ野球からメジャーリーグへ戻ってブレイクした。ルイスは201.0イニングで防御率3.72、マイコラスは200.2イニングで防御率2.83を記録した。こういった例は、彼らだけではない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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