ついに歴史が変わる! 仙台育英が東北勢13度目の正直で優勝旗を持ち帰るか!
100年を超える高校野球の歴史が変わるか!波乱続きだった夏の甲子園は、仙台育英(宮城)と下関国際(山口)が決勝に進出した。焦点は、これまで延べ12校が挑んで果たせなかった東北勢の甲子園初優勝なるか。今回はこれまで以上に大きなチャンスと言える。
仙台育英は11点の超ビッグイニング
準決勝は2試合とも、消耗度の差が明暗を分けた。聖光学院(福島)はエース・佐山未来(3年)に球数制限抵触の可能性があったため左腕の小林剛介(3年)が先発。初回のピンチは切り抜けたが、2回の仙台育英の猛攻を止められなかった。途中で佐山を救援させたが相手の勢いを抑えられず、11点の超ビッグイニング。結局これが試合を決め、東北勢同士の準決勝は18-4と意外な大差がついた。2回の聖光の守りでは失策も絡み、めったに四球を出さない佐山にも制球の乱れが出た。初戦の日大三(西東京)から横浜(神奈川)、敦賀気比(福井)と甲子園優勝経験校を連破し、九州学院(熊本)との打ち合いも制してきたが、最後に力尽きた印象だ。
近江・山田も中盤以降疲れ出る
第2試合は中盤の6回以降に、消耗度の差が出た。近江(滋賀)の最速149キロ右腕・山田陽翔(3年=主将)は体にキレがなく、四球からピンチを招く。要所で三振を奪い、今大会最速タイの148キロもマークしたが、5回までが精一杯だった。2-2で終盤勝負かと思われたが、6回表に2四球と犠打野選で無死満塁とされると、1死から7番・森凛琥(りく=3年)に高めのボール球を右翼線へ運ばれ、2点を勝ち越された。下関国際は代わった星野世那(3年)からも連続スクイズなどで追加点を奪って突き放し、8-2で快勝した。近江は攻守両面で山田を援護できず、昨年の準決勝同様、終盤、一気に元気がなくなった。1試合目と同じで、試合数の差が(近江5試合目、下関国際4試合目)選手たちの体力だけでなく、気力までも奪っていたように映った。守備面で集中力が切れたのがその証拠である。
仙台育英はチーム状態万全
さて決勝は、仙台育英と下関国際の顔合わせとなった。仙台育英は7年ぶりの決勝で、春も合わせると4度目の進出となる。下関国際は初めての決勝で、どちらが勝っても初優勝になる。仙台育英は5人の力のある投手を擁し、日程運にも恵まれて、やりくりに余裕が感じられる。エース・古川翼(3年)の状態は万全と言えないかもしれないが、準々決勝で先発した左腕・斎藤蓉(3年)や過去2試合先発の右腕・高橋煌稀(2年)が好調で、ディフェンス面での不安はない。攻撃陣は、須江航監督(39)が試合ごとに打順を変えているが、1、2番の出塁がカギになるだろう。長打力こそないが、選手たちの次打者へつなぐ意識が徹底されていて選球眼も良く、相手投手は根負けしないことが要求される。8強が決まった段階で、最も状態のいいチームだと見ていたが、万全で決勝に臨めそうだ。
大敵連破し、自信と勢いある下関国際
準々決勝でセンバツ王者の大阪桐蔭を倒し、同準優勝の近江にも快勝した下関国際には、自信と勢いが感じられる。近江戦では、速球派右腕の仲井慎(3年)を早めに救援させたが、8回130球を投げ切った。大きく曲がるスライダーと140キロ超の真っすぐをうまく投げ分ける。決勝では、先発が予想される左腕・古賀康誠(3年)の踏ん張りに期待したい。近江戦では制球に苦しんで、30球しか投げていない。最後にエースの意地を見せられるか。野手では1番を打つ赤瀬健心(3年)が打撃好調で、守備でも好捕を見せている。3番の仲井や大阪桐蔭戦決勝打の4番・賀谷勇斗(3年)は好機に強い。仙台育英は継投が確実なだけに、先発を早く降板させ、継投機に畳みかけるような攻めができれば面白い。強豪を連破した勢いが発揮できるような展開に持ち込めれば、勝機は十分にある。
東北勢の初優勝へ最大のチャンス
決勝の焦点は、東北勢の初優勝なるかに尽きる。仙台育英は33年前の夏、剛腕・大越基投手(現山口・早鞆監督)を擁し、大旗に近づいた。この時は大越の消耗が激しく、帝京(東東京)に延長で屈したが、その時よりも期待感は高い。107年前の第1回大会の秋田中(現秋田高)の準優勝に始まり、53年前の三沢(青森)の松山商(愛媛)との延長18回引き分け再試合での惜敗、ダルビッシュ有(パドレス)の東北が惜敗した19年前の夏など、東北勢の挑戦はことごとくはね返されてきた。13度目の正直へ、最大のチャンスが訪れたと言いたい。