Yahoo!ニュース

メンタリストDaiGo氏「ホームレスの命はどうでもいい」大炎上:発言者を叩いて終わりにしないために

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
イラストはイメージ(提供:akaricream/イメージマート)

■DaiGo氏YouTubeでの差別発言が大炎上

「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃない。生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい。生活保護の人が生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで」(DaiGo氏「ホームレスの命はどうでもいい」に批判殺到。支援者は「ヘイトクライムを誘発」と問題視:BuzzFeed 8/13 Y!

メンタリストのDaiGoさんが、YouTube(チャンネル登録250万)の発言で批判されています。

■DaiGo氏発言の悪影響

DaiGoさんの発言が問題なのは、当然です。当然すぎてコメントが言いにくいぐらいです。なぜ、こんな発言をしたのか、不思議なほどです。

ネット上では、以前から匿名の人たちの差別的発言が問題になっていましたが、今回のような有名人、インフルエンサーの発言なら、悪影響はさらに大きくなるでしょう。

このような人が堂々と語って良いなら、誰が語っても良いことになりかねません。語るだけではなくて、さらに乱暴しても良いという人まで出かねません。すぐにそうなるわけではないでしょうが、そんな社会の雰囲気を作りかねないと思います。

この騒ぎの中で、不安に感じている人もいるでしょう。「生活保護の申請は国民の権利」との厚労省の下記ツイートはグッドタイミングだと思います。

■DaiGo氏発言をどう批判するか

DaiGo氏の発言は批判されて当然です。反論の余地もほとんどないでしょう。ただ、だからと言って、みんなで石を投げるようなことをしても良いとは思いません。批判をするのと、罵詈雑言、誹謗中傷は違います。

「メンタリストDaiGoを炎上させたい人がすげぇがんばって炎上させている感じ〜こいつはとんでもない奴だ、死ねー!〜ストレスの発散の先がみんなほしい。誰か(ターゲット)を常に探していて、誰かを吊し上げたいんですよ」(堀江貴文氏「すげぇがんばって炎上させている」DaiGoの炎上騒ぎで私見:日刊スポーツ8/13Y!

このように、ただのスケープゴートにしてしまってはいけませんね。それは、人権問題であり、また問題の本質を見失うことにもなると思います。

■DaiGo氏発言は本当に間違っているか/個人の感想なら良いか

DaiGoさんは、今回の発言はあくまで「個人の意見」「個人の感想」としています。もちろん表現の自由がありますから、例えば生活保護精度のあり方に関する意見もOKです。法に反しない限り意見を述べる権利があります。

DaiGoさんは、「自分にとって必要のない命は僕にとって軽い」とも言っています。これも、そう感じることは事実でしょう。家族や親友が亡くなれば、私たちは何日も悲しみの底に沈みますが、大勢の人の死を伝えるニュースを聞きながら私たちは普通に夕飯を食べています。

また「個人の意見なので扇動してるわけではない」とも語っています。

しかし、法律に反しなければ何を言っても良いわけではないでしょう。DaiGoさんは、「だからホームレスの命はどうでもいい」とも語っています。心の中でそう思うのは自由です(内心の自由)。個人的な場のおしゃべりでも良いでしょう。

けれども、インターネットのような公の場で許される発言ではありません。誰に対してであれ、「死んでも良い」「その人の命など、どうでも良い」といった発言は批判されるでしょう。

影響力のある人が、「○○なんて死ねば良い」「○○の家が火事になれば良いのに」などと公言すれば、扇動される人も出かねないでしょう。

実際に実行に移す人などいなくても、社会の雰囲気を作り出していく可能性はあります。私たちは、誰かの命が軽んじられるような社会を望みません。

■発言者としての注意点

誰かの言動が、法律に反しているわけではなくても(少なくとも起訴されるレベルではなくても)、世間から大きく批判されることが次々起きています。

時代は次々変わっていき、以前なら問題なかった言動が、今なら男女差別とかハラスメントとか言われるようになってきました。時には、発言者の常識とはズレていることもあるでしょうが、時代は変わっているということを、発言する人は理解する必要があるでしょう。

■なぜ石を投げてはいけないのか

ただ、高齢の権力者に対して「老害」などと言えば、今度はその人が「年齢差別!」と批判されることになるでしょう。間違った人に対してなら何を言っても良い訳ではありません。

悪い人、強い人だからといって、誹謗中傷してはいけません(たとえば、Yahooコメント欄であは、相手が誰であれ誹謗中傷は禁止です)。誹謗中傷する人は、いつも相手が悪い人、強い人と思っていることでしょう。

また、みんなで石を投げるような行為をするとき、私たちは相手が完全な悪、自分たちは完全な善と思いがちです。しかし、そんなことは多くはないでしょう。

ネット上では、生活保護に関する激しい意見は、日常的に見られます。ある街で大きなイベントがあれば、ホームレスが一掃される(施設等に入所していただき、通行する人からは見えないようにする)ことも、よくあることでしょう。それが間違っているわけではありませんが、ホームレスに対して否定的な感情を持つ人は少なくないでしょう。

今回のDaiGoさんの発言は間違いであり、批判されて当然です。しかし、みんなでDaiGoさんに石を投げて終わりではなく、話題になったこれらの問題をしっかり考えるきっかけにしたいと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○「まず、罪のない者から石を投げよ」

誰かが悪いことをしたからといって、断罪し石を投げ、自分のストレス発散にしても良いわけではないと思います。もちろん、この有名な聖書の言葉は、批判や裁判や刑罰を否定しているわけではなく、心の問題を言っているのだと思います。

○DaiGo氏YouTube

現在、「間違った言ったので謝罪します」という動画を準備中のようです(8/13.19:00)。

○DaiGoさんとDAIGOさんは、別の人

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事