コロナ禍で注目のつくばエクスプレス沿線で「電車から見えるマンション」が売れる理由
コロナ禍で注目が高まり、今年は新規分譲マンションの数が増えそうなのがつくばエクスプレス沿線。都心の秋葉原駅から茨城県のつくば駅を結ぶ路線の周辺エリアだ。
全長約58キロメートルのこの沿線には、コロナ禍で注目を高める要素が複数備わっている。
まず、駅に近い場所にも大きな公園があるなど、街に潤いとゆとりが多い。そして、電車の速度が速いため、郊外の駅でも秋葉原駅までの所要時間が短い。
また、道路が広く、駅前ロータリーがしっかり整備されているところが多いなど、車で生活しやすいという特徴もある。
なによりも、広く、割安なマンションが見つかるのも、つくばエクスプレス沿線の特徴。コロナ禍で家時間が増えたファミリーには、魅力的な要素が多い沿線となる。
そのつくばエクスプレス沿線には、不思議な現象がある。それは、「電車から見えるマンションの売れ行きがよい」ということだ。
車窓から見えるマンションが人気になりやすい
つくばエクスプレスでは、線路沿いに建ち、車窓からよく見えるマンションが人気物件になりやすい。
いうまでもなく、線路沿いで駅から徒歩3分以内であれば、他の路線でも人気マンションとなる。しかし、つくばエクスプレスの場合、駅から10分程度歩く場所でも、車窓からよく見えるマンションが人気になりやすいのだ。
数年前には、建物ができあがり、その外壁に「好評分譲中」の看板を掲げたときから、急に売れ行き好調になったマンションもあった。
つくばエクスプレスは窓が大きく、景色がよく見える。パノラマ効果で、マンションの魅力がアップするのかもしれない。
また、つくばエクスプレスには踏切がひとつもなく、防音壁がしっかり整備されているので、線路近くの騒音が小さい。つなぎ目のないロングレールを使用していることでも騒音が軽減され、それも線路に近いマンションの人気を高める要因になっている。
電車内のマンション広告が効果的?
つくばエクスプレスでは、もう一つ、「電車から見えるマンション」が人気になりやすい、といえる現象がある。といっても、窓の外に見えるマンションではない。電車の中で見ることができるマンションの話だ。
じつは、つくばエクスプレスの車両にはマンションの広告が多く、その効果が大きそうなのだ。
今から3年ほど前には、1車両に6つのマンション広告が張り出されているのを見たことがある。1物件で4コマ分を占める横長広告もあったので、さながら“住宅情報電車”に乗っているかのようだった。
これだけ車内広告が多ければ、心動かされる人が少なくないはず。そして、つくばエクスプレスでは、電車内だけでなく、駅構内の広告も多い。
なぜ、そんなにマンションの広告が多いのか。
考えられる理由はいくつかある。他の路線と比べて、広告を出す費用が安いのかも知れないが、それよりも可能性が高いのは、「つくばエクスプレスでは、車内広告が効果的である」ということだ。
もともと、つくばエクスプレス沿線のマンションは、「狭域」の集客が多いとされてきた。これは、購入検討者の多くはつくばエクスプレス沿線に住んでいる人、もしくはつくばエクスプレス沿線に地縁のある人であることを意味する。
逆の言い方をすると、「広域」からマンション購入者を集めるのに苦労する場所ということになる。世田谷区に住んでいる人や横浜市に住んでいる人が、いきなり「つくばエクスプレス沿線のマンションを買いたい」と考えることは少ないわけだ。
日本中から来場者を集めるテーマパークや日本最大級の商業施設でもあれば、住んでみたいと思う人も出てくるだろうが、つくばエクスプレス沿線にそのような目玉施設はまだない。
しかし、沿線に住んでいる人は、ゆったりした街づくりや環境のよさを気に入って、住み続けたいと思う。だから、沿線住民に向けた車内広告が効果的となり、マンションの広告が数多くつくばエクスプレスの車両に出されるのだろう。
そのつくばエクスプレス沿線には、コロナ禍で「広域」から注目が集まりだした。従来は「意外に都心に近いのに、マンションが割安な穴場」とされたつくばエクスプレス沿線に転換期が訪れるかもしれない。