NY中心地で外壁落下の死亡事故 有名ラーメン店がある日本人の多い歩道で一体何が
ニューヨーク・マンハッタンのタイムズスクエア近くで12月17日午前、ビルの外壁の一部が崩れて地上に落下し、通行人が死亡する事故が起こった。
午前10時45分ごろ、会社役員のエリカ・ティシュマン(Erica Tishman)さん(60)が会社から数ブロック先の、49丁目6番街と7番街の間を歩いていたところ、外壁から剥がれ落ちた破片がティシュマンさんの頭部を直撃した。ティシュマンさんは、その場で死亡が確認された。
ティシュマンさんが倒れた場所は6階建てのビル(152 West 49th St.)前で、1階は以前日本食レストランがあった場所で、現在は日本発のラーメンチェーン一蘭が新たに入店している。一蘭ニューヨーク3号店として今年3月にオープンしたばかりで、日本の本格ラーメンの味が恋しくなった当地在住の日本人の出入りが多い。またこの周辺はホテルや飲食店、地下鉄の駅が集まる繁華街のため、日本からの観光客の往来が激しい場所でもある。
当初、破片はこのビルから落ちてきたものではないかと見られていたが、調べが進むうちに、49丁目と7番街の角にある17階建てのビル(729 Seventh Ave.)から剥がれ落ちた、テラコッタの一部であることがわかった。
(ティシュマンさんに当たったとされる破片の一部は、ザ・ウォールストリート・ジャーナル紙で確認できる)
ニューヨークタイムズ紙やザ・ウォールストリート・ジャーナル紙の報道によると、このビルは築104年で、商業用不動産会社のHimmel + Meringoff Propertiesが管理しているという。
築100年以上の高層ビルと聞くと日本の感覚からすると驚くかもしれないが、地震がほぼない土地柄で古い建築物が大切に保存され、今も人々に利用されている建物の多いニューヨークでは、このビルだけが特別に古いという感じはしない。
しかしこのビルは、安全管理についての意識の薄さが問題になっていた。以前、15階より上のテラコッタに破損が確認されており、外壁の保護を怠ったとして、同社は今年4月、市に1,250ドル(約14万円)の罰金を支払っている。さらに10月と11月、外壁工事を行う許可を市から取得したばかりだった。
ニューヨークでは外壁工事を行う場合、歩行者の安全を守るためにビル前にスキャフォールディング(足場)が組まれる。しかし、事故当日はまだこの該当ビルに足場は設置されていなかった。
今回事件の原因とは直接関係がないものの、すぐ目の前で死亡事故が起こってしまった一蘭ラーメンは、一時はこの日の営業を見合わせか?と、側杖を食う形となった。
ザ・ウォールストリート・ジャーナル紙によると、タイムズスクエア近辺には日々38万人近くの人々が集まっているという。これから年末の観光シーズンとなり、さらに多くの人々がこの辺を往来するだろう。
ニューヨーク観光時に外壁落下事故を目撃したことがあると言う男性(日本在住)は、このニュースを見て自身の体験も思い出した。「昨年妻とブルックリンの住宅街を歩いていたら、2階の壁面がズルッと落ち、駐車中のベンツが破壊されたのを見てびっくりしました」。
「この街は、内装だけ立派にリノベートした安普請が多いのかもしれない。これから調べが進み、該当ビルにもっと多くの欠陥が出てきそうな気がします」と言うのは、業務で一蘭3号店に出入りしている当地在住の日本人男性。「近隣ビルからの落下物とは言え、表で死亡者まで出てしまい、被害にあった方にも店にも気の毒でしかない。ビルの所有者は安全状況を一番に考えてほしい。でなければ、安心して歩道を歩けません」
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止