プロ最多、104球の粘投!“初打席”も経験した高橋遥人投手《阪神ファーム》
1軍のオープン戦全日程が終了して、阪神は2勝12敗2分けで最下位となりました。まあ過去のデータがどうであろうと、本番はこれから。2018年の開幕は30日、東京ドームで迎えます。1軍のメンバーも固まってきたようですね。
一足先に開幕したファームは、ここまでウエスタン・リーグの公式戦3カード、計8試合を消化しています。本拠地である鳴尾浜では23日(金)~25日(日)まで、中日を迎えての3連戦が行われました。1戦目は藤浪投手と若松投手、2戦目は岩貞投手と山井投手、3戦目が高橋遥投手と大野雄投手の先発で、1勝1敗1分けという成績です。
ちなみに27日は鳴尾浜で関西大学との交流試合が予定されていて、ルーキー・石井投手が先発するそうですよ。
では、25日に行われた中日3戦目の詳細をご紹介しましょう。高橋遥投手は開幕カードだったソフトバンク戦で、18日に先発してから中6日の登板です。この日はプロに入って自身最長の7回2/3を投げ、7安打3失点。また最後に、榎田投手との交換トレードで西武から移籍してきた岡本洋介投手(32)が初めて登板しました。
《ウエスタン公式戦》3月25日
阪神-中日 3回戦 (鳴尾浜)
中日 002 000 010 = 3
阪神 000 001 000 = 1
◆バッテリー
【阪神】●高橋遥(2敗)-尾仲-岡本 / 長坂
【中日】○大野雄(1勝)(5回)-丸山(1回)-浅尾(1回)-S佐藤(1S)(1回) / 杉山
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]一:荒木 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .111
2]三:森越 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .091
〃打右:緒方 (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .263
3]遊三:北條 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .200
4]右二:板山 (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .353
5]中一:中谷 (4-0-1 / 0-0 / 0 / 0) .067
6]捕:長坂 (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .316
7]左:江越 (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .100
8]二遊:熊谷 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .240
9]投:高橋遥 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000
〃投:尾仲 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃投:岡本 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃打:今成 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .308
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
高橋 7.2回104球(7-5-1/3-3/2.84) 145
尾仲 0.1回 3球(1-0-0/0-0/5.40) 139
岡本 1回 5球(1-0-0/0-0/0.00) 140
《試合経過》※敬称略
先発の高橋遥は1回、1死からストレートの四球を与え、続く3番・井領の左前打があったものの後続を断ち、2回は三者凡退でした。ところが3回は9番の伊藤康に左前打され、犠打と溝脇の左前打で1死一、三塁として井領の右前タイムリーで1点。4番・阿部は遊ゴロで2死三塁となって石垣の中前タイムリー。この回2点を先取されました。
打線は1回に2死から四球を選んだ北條に続き、板山が右前打を放つも得点なし。2回、3回、4回と大野雄にパーフェクトピッチングを許します。5回は先頭の長坂が左前打を放ち、1死後に熊谷の打球がピッチャーを強襲する内野安打となって、次はプロ2打席目の高橋遥がキッチリと初球で投犠打!これで2死二、三塁としましたが、荒木は見逃し三振で無得点。
しかし6回、中日2人目の丸山から代打・緒方が四球を選び、1死後に板山の右前打で一、三塁とします。続く中谷の遊ゴロで緒方が生還!ショート遠藤からの送球がうまく渡らず(記録はセカンド溝脇の捕球エラー)1死一、二塁と走者が残りました。ただ、直後に板山が牽制死、長坂は二ゴロで1点のみです。
さて3回に2点を失った高橋遥は、4回、5回、6回と完璧に抑え、この時点で82球。目安となる100球にはまだ余裕があり、7回もマウンドへ。先頭の杉山に中前打され、犠打で1死二塁としましたが、しっかりと後続を打ち取って無失点。ここで球数が92球までいったものの続投した高橋遥。8回1死で井領の左前打を浴び、阿部を二ゴロに打ち取ったところで交代しています。
2死二塁で代わった尾仲は、石垣にレフトへのタイムリーヒットを許します。井領が還って3点目。これはレフトフェンスを直撃する当たりだったのですが、江越が捕って二塁へ送球してタッチアウト!そして9回は岡本が登板。1死から杉山に中前打されるも、代打・野本は右飛、捕ったライト緒方が一塁に送球!飛び出していた杉山に荒木がタッチして併殺です。
なお、こちらの攻撃は7回が江越の内野安打のみ。8回は三者凡退。9回は1死から長坂の右前打と江越の死球があったものの、続く熊谷は空振り三振。代打・今成は見逃し三振で追いつけず、試合が終わりました。
100球を超えたことで1段階クリア
では試合後の話をご紹介します。最初は高橋遥投手についての矢野燿大監督の談話。「まずは100球を超えられた、やれることをやれたと。ストレートの走りとかコントロールは、今までの中で一番よくなかった。その真っすぐをとらえられたり、いいポイントで振られるのが多かった。緩いチェンジアップでカウントを取れたのはよかったと思う」
8回途中まで投げて与えた四球は1つでした。「ま、結果ね。カウントが苦しいところもあったし。いつも言っているように、1軍ならどうかなって部分では怖い、危ないと思うけど。(高橋自身の)段階としてはクリアかな」。スライダーでそこそこ三振も取っていたことを聞かれ「前(18日)の方がよかったな。きょうはスライダーより、ツーシームでゴロを打たせたのはよかった」と矢野監督。
失点したあと4回から6回まで三者凡退だったことには「点を取られたあとズルズルいかないのは大事やからね。3巡目を持たせるには、左バッターのインサイドへ突っ込んでいける部分がないと。コーナーワークより球のキレや強さで抑えるピッチャーだからね。もうちょっとインコースを使うことが課題としてあるかな」と、ステップアップを求めました。
次に、高橋投手コーチは「前回は最初からよかったけど、今回は前半が悪かった。でも4回以降がよかったので、粘りのピッチングができた。1つ課題が出て、1つクリアして、ということですね。内容は前の方がよかったけど、粘りを見せてもらったと思う」と評しています。
まず鳴尾浜でお披露目
また岡本投手の話もここで書いておきましょう。矢野監督いわく「タイプ的には先発かな。今後はもう少し待ってて長いイニングをと思っているけど、トレードで来て最初は気も使うし、オレもそうやった。いきなり先発というより、こうやって投げておく方が楽になるから」というわけでお披露目となった岡本投手。
本人は「多少の緊張感はありました。ただ5球で終わったんで…」と、あっという間の登板に少し苦笑いです。先発タイプと監督が話していますが「ライオンズではキャンプから先発としてやっていたし、去年も先発しかしていないけど、どちらでも求められるところで結果を出したい」とのこと。
実は、守屋投手が岡本投手の弟さんとHonda鈴鹿の同僚(年は守屋投手の方が下だけど同期入団)だったそうで、トレードが決まった時に「めっちゃ優しくて、いい人」と移籍を楽しみにしていました。だからきっと世話を焼いているかも。「まあ、いろいろ(笑)。みんなにもよくしてもらって、ありがたいです」。関西の人ですから、すぐに馴染んでもらえるでしょう。
スライダーに苦しんだ序盤
高橋遥投手は「細かいコントロールとか、インコースに投げきるとか、そういったところができていなかった。前回、タマスタで投げた時はスライダーが武器になったんですけど、きょうはそのスライダーが全然決まらなくて。序盤はストレートばかりになって苦しんだ」と試合を振り返りました。
「点を取られたところは、追い込んでから先頭バッターに打たれて、2点目のタイムリーも追い込んでから(どちらもカウント2-2からの6球目)で。ストレートを投げるんだったらもっと厳しいとこへ投げなきゃいけないし、投げられないなら試合中や試合前のブルペンで、ストレート以外の球種を準備していけたらと思います」
真っすぐの走りも前回より悪かった?「ストレートとわかって打ちに来て、打ち返されているから、走っていなかったというよりも力不足だと思いました。4回以降はテンポよく、スライダーも修正できたかなと。最初は全然コントロールが定まらなかったので」。5回の2三振は?「スライダーです。カウント有利の時に、しっかり腕を振って投げたスライダーは空振りを取れた。どっちもボール球だったので、ああいう明らかなボールじゃなくてもっと際どい、ストライクからボールになるようなものを投げきれたら」
“プロ初打席”も経験しました
8回途中まで、100球以上というのはプロ初。特に大きな変化は?「きょうは序盤の方が苦しかったので、途中からは全然。ストレート自体は走っていなかったけど、終盤は楽に考えた」。スタミナも問題なかったのでは?「バテてはいなかったです。コントロールがアバウトなのは直していかないといけないんですけど、疲れていても疲れていなくてもアバウトなので。疲れはなかったですが、ストレートが走っていないのは、もっとしっかりトレーニングをしないと」
今後の課題を自ら挙げてくれた高橋遥投手は、やはり「それと、変化球の精度ですね。変化球がよければストレートがもっと生きてくると思うので」と自分で述べました。それだけじゃありません。聞かれる前に、と思ったわけではないでしょうけど「あと、しっかりバントをします!」と言って苦笑い。7回は失敗したけど、5回はちゃんと初球で決めたから。「もう1つも決められるように。しっかり頑張ります」
ところで打席に立つのはいつ以来?「高校3年の夏以来です」。走ったあとは大丈夫だった?(7回1死一塁で2つ目のバント。しかし二塁封殺、本人は一塁セーフ。次の二ゴロで二塁封殺、チェンジ。すぐにマウンドへ)「ピッチングには影響なかったですが、ちょっと息が上がっていました(笑)」。それはそうですよね。お疲れ様でした。
貫く“積極性”は自分のため
打線に関して矢野監督は、いつものように“最初”を仕留めることを説いています。「大野がよかったけど、何とかしたいよね。この3連戦とも、ストレートの見逃しが多かった。俺は(一番大事なのが)ファーストストライクやと思う。最初のストライクを見逃したり、空振りしたり、ファウルしたら、1軍では終わりやもん。振りにいって一発で仕留めないと。そういう意識を高めようという話はしました」
その言葉通りにヒットを打ったのが板山選手です。「きょうは特に真っすぐを1球でとらえられるように、という課題を持っていて、それができたのでよかったです」。1回は大野投手の初球、6回は丸山投手の2球目、どちらもファーストストライクを打っての安打でした。「見逃していたら1軍に上がった時、結果が出せない。上がった時のため積極的に、というのは矢野さんもいつも言っているし、それを継続していけたら自分のためになると思ってやっています」
なお6回に1点返した直後、牽制で刺された点は「サインは出ていたけど、ワンステップ早かった。でも攻めていっての失敗なので、次はどうすればいいか頭で整理できています。次に生かしていきたい」と板山選手。キャンプの時から変わらず、今も守備交代や凡打の際に全力疾走を続ける板山選手。すべては1軍で戦うために、ですね。
手応えを感じる、2年目の春
最後は、板山選手と同じく2安打した長坂選手です。ことしはよく打っていますね。「たまたまです」。いやいや、昨年と比べても違うし、公式戦の打率もまた3割を越えました。「まあ実際にヒットも出ていて、いい感覚では打てていますけど…でも1軍で打たないと」。やっぱりそこですね。とはいえ、オープン戦で多くの経験を積めたのは確かでしょう。自信とまでいかなくても。「ことしは1軍のベンチ入りとか、試合に出られるチャンスもつかめるところにいると思うので、きょうからファームですが、しっかりやって早く上がりたいです」
高橋遥投手とのバッテリーで、自身のリードについては私のスコアブックを見ながら振り返りました。「ランナーが出た時に」と指差したのは、1回1死から四球を与えた次の打者にヒット、3回は先頭に打たれてから計4安打で2失点の部分です。
「あとで考えたら、なんでそれ(選択した球種のことでしょう)をいってしまったんだろうと思って。意図を持って投げさせたものが、持っていないように見えたかなと。もちろん打たれないのが一番いいんですけど、点を取られるにしても色んなやり方があったのに。やりきって打たれたのなら、まだよかったのに」
オープン戦、教育リーグ、ウエスタン公式戦と行ったり来たりしながらも、けっこう試合に出場したので充実感はあるんじゃないかなと思って聞いたら「ことしは楽しいです!」と、わかりやすい答えが返ってきました。とても無邪気な笑顔で。
<掲載写真は筆者撮影>