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ドラフト注目株レポート1 注目度No.1の田嶋大樹は黒星スタートだが……

横尾弘一野球ジャーナリスト
左腕をしならせるフォームから150km/h台のストレートを投げ込む田嶋大樹投手

佐野日大高3年時にドラフト上位候補と評されたもののプロ志望届を提出せず、さらなる成長を目指してJR東日本へ入社した左腕・田嶋大樹が、再びドラフト指名解禁となる3年目を迎えた。1年目から公式戦に登板し、昨年はエースとして都市対抗一回戦で延長10回、167球を投げ抜くなど着実に成長。年明けから、プロ球団のスカウトにも密着マークされている。

今季の初戦は、3月11日の第72回東京スポニチ大会リーグ戦。対戦相手は、昨年の都市対抗を制したトヨタ自動車で、2回目の冬を越えた成長ぶりを確認するには絶好の相手と言えたが、5回までに6安打で4点を失い(自責点は3)、黒星スタートとなった。すると、2日後の日本新薬戦にも先発し、今度は8回を2安打1失点(自責点は0)。しかし、打線の援護がなく2敗目を喫してしまう。

このあと、3月23日の東京都企業春季大会準決勝でセガサミーを8回1失点、10奪三振と本領を発揮するも、チームは延長の末に敗れる。さらに、4月3日に開幕した第64回静岡大会のリーグ戦でも第1戦に先発。三菱重工名古屋を9回まで1失点に抑えたが、タイブレークの延長11回でマウンドを譲る。そして、9日にはヤマハとの準決勝に先発したが、8回3失点で3敗目である。

5試合で3敗という結果も成長の糧に

5試合に先発して0勝3敗という結果を見れば、プロの先発ローテーション投手でも少し心配になる。ただ、長い目で見れば、期待通りに勝ち星を積み上げるより、いい経験をしているという声は多い。

ある球団のスカウトはこう言う。

「田嶋投手が社会人で成長したのは、無闇に三振を狙って力んだりせず、打線の援護がない時でも辛抱強く投げられる点。しかも、39回1/3を投げて防御率は1.83。39奪三振も投球回数とほぼ同じで、数字的には文句ない。課題を挙げれば、5試合中4試合で先制点を献上していることですが、日本一を目指すチームのエースとして、どうすれば勝利に導くことができるのかを学んでいるはず。これから都市対抗予選に向けて、自分の投球をどう完成されていくのか楽しみです」

JR東日本は、2011年から4年連続で都市対抗ベスト8以上に進出するなど、圧倒的な戦績を残す中で実に14名をプロへ送り出している。それを踏まえて田嶋は言う。

「先輩たちは実力や将来性を評価されただけでなく、しっかりチームを勝たせてプロ入りした。けれど、僕が入社してから2年間は都市対抗も一回戦で負けている。まず、都市対抗で勝たなければ、プロ入りを考えることもできません」

田嶋の次の登板は、15日に開幕する第60回岡山大会になるだろう。テンポのいい投球で打線の爆発を誘発するか、あるいは今季初完封をマークするか。ドラフト注目株のいい流れを引き寄せる投球に注目したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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