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関東や東海で梅雨明け!なぜ西から順に明けない?空梅雨だった気がする!?夏の暑さ予想も気象予報士が解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

18日11時、気象庁は東海と関東甲信の梅雨明けを発表しました。ともにほぼ平年並みの梅雨明け(平年より1日早い)です。
前日17日に九州南部の梅雨明けが発表され、九州から中国・四国…という順に西から梅雨明けしていくと思いきや、すっ飛ばして関東などで梅雨明けしたわけですが、実は不思議なことではありません。
このあと夏の天候はどうなるのか、これまでの梅雨の特徴とともに気象予報士が解説します。

条件が整った状態で「晴れたら梅雨明け」

18日9時の実況天気図(気象庁HPより)。
18日9時の実況天気図(気象庁HPより)。

例年、梅雨明けの時期が近づいてくると、気象庁の予報官も民間の気象予報士も、梅雨前線の位置とともに太平洋高気圧の北端の位置が気になり始めます。
特に太平高気圧に関しては、上空5500m付近を見ることができる専門的な天気図で頻繁に位置を確認しますが、天気図上で「完全に梅雨明け」に見える形のときでも、それだけで梅雨明けとはなりません。
地上では前線や高気圧の位置以外の様々な要素によって雨が降ることがあるからです。

そのため、専門的な天気図での状況だけでなく、地上の天気として「このさき晴れる日が多くなりそう」という見通しが立ったところで、初めて梅雨明けとなります。

今回、東海や関東甲信で晴れる予報が出た一方で、九州や中国地方では地上付近で暖かく湿った空気が流れ込んで18~19日にかけて曇りや雨となるため、西日本の各地を飛ばして東海と関東甲信が先に梅雨明けしました。

2024年は空梅雨だった!?実は降水量はこんなに多い

2024年の梅雨期間の降水量を平年を比べたもの(気象庁データを元に作成)。
2024年の梅雨期間の降水量を平年を比べたもの(気象庁データを元に作成)。

18日に梅雨明けした東海と関東甲信も、そしてすでに梅雨明けしている沖縄・奄美・九州南部でも、2024年の梅雨の降水量は平年を上回っています。
名古屋は平年比が約130%、東京は約160%で、那覇では約350%でした。

西日本に関しては大雨のニュースが多かった記憶のある人が多いと思いますが、特に関東に住む人にとっては、梅雨の雨がしっかり降った印象はないかもしれません。

その理由は、関東ではもともと梅雨の降水量が比較的少ないことと、今年2024年の梅雨が「極端な短期集中型」だったことが挙げられます。

実は関東では、梅雨より秋雨の方が降水量が多く、平年の梅雨の降水量は東京で160ミリ程度。これに対して九州では鹿児島で平年値が700ミリを超えています。つまり、たとえ平年通り降ったとしても「少ない」と感じがちなのです。

さらに今年2024年の場合は、関東甲信で記録的に遅い梅雨入りだったにもかかわらず、梅雨明けはほぼ平年並みで、梅雨期間が短くなっていました。
しかもその短い期間中、雨が降らない「梅雨の晴れ間」の日には平年を上回る猛暑になっていたため、「梅雨らしさ」を感じにくかったのです。

このさきの暑さはどうなる?1か月予報は全国が「紫」!

週間予報(気象庁HPを元に作成)。
週間予報(気象庁HPを元に作成)。

例年、梅雨明け後には一気に暑さが厳しくなることが多いですが、実際に週間予報でも週末を中心に35度以上の猛暑日が続出する見通しとなっています。
特に18日~24日頃の期間については沖縄~関東・北陸に対して気象庁から「高温に関する気象情報」も出ていて、暑さへの警戒が必要です。

1か月予報(気象庁HPより)。
1か月予報(気象庁HPより)。

さらに1か月予報でも、このさき全国的に平年を上回る気温が予想されています。
上図で赤みがかった紫色になっている地域は、向こう1か月の平均気温が平年を上回る確率が非常に高いことを表していますが、もはや日本全国どこも紫色です。
太平洋高気圧の張り出しが強い傾向にあり、実は梅雨期間中に猛暑が多かった一因でもあるのですが、8月・9月にかけても平年を上回り続ける地域がありそうです。

このさき夏休みの旅行も含め、大人も子どもも外でのレジャーが増える時期ですが、できるだけ暑さ対策を優先して楽しんでください。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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