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ノート(41) 量産される供述調書と厚労省事件の弁護活動をめぐる諸問題

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~解脱編(13)

勾留13日目(続)

予定主張記載書面

 この日の中村孝検事の取調べは、午後3時前ころから午後10時前ころまでの間、夕食を挟んで6時間近く行われた。

 自白調書の作成とサインという作業は、一見すると実に地味なものだ。しかし、被疑者がいくら取調べ室で様々な話しをしていても、供述調書という形でまとめられ、そのサインを得ていなければ、将来の公判で使える「証拠」にはならず、取調べ官も神経を使う。

 被疑者も、いったん供述調書にサインしてしまうと、有利不利を問わず、裁判で「証拠」として使われる展開になるので、表現の一字一句から取調べ官の狙いを読み取るなど、細心の注意を払わなければならない。

 この日は、まず3通の供述調書にサインをした。1通目は改ざんの状況、2通目は取調べの中で行った改ざんの再現状況、3通目は僕が2009年7月に國井君に改ざんを告白した状況に関するものだった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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