Yahoo!ニュース

奇跡の36歳フェデラー、テニスATPファイナルズで決勝ならずも、今が人生でベストだと言う理由とは?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ATPファイナルズ準決勝で敗れたフェデラーだが、36歳という年齢を踏まえればベスト4でも十分素晴らしい結果だ。そして、素晴らしい復活を遂げた2017年シーズンだった(写真/神 仁司)
ATPファイナルズ準決勝で敗れたフェデラーだが、36歳という年齢を踏まえればベスト4でも十分素晴らしい結果だ。そして、素晴らしい復活を遂げた2017年シーズンだった(写真/神 仁司)

 男子ワールドテニスツアー最終戦であるATPファイナルズ(11月12日~19日、ロンドン・O2アリーナ)大会7日目の準決勝で、ロジャー・フェデラー(2位、スイス)が、ダビド・ゴファン(8位、ベルギー)に6-2、3-6、4-6で逆転負けを喫して、11度目の決勝進出はならなかった。

 過去にツアー最終戦の準決勝では、10勝3敗という好成績を残してきたフェデラーは、第1セット第1ゲームで、いきなりゴファンのサービスゲームをブレークすると勢いに乗った。サーブやグランドストロークが好調なフェデラーは、第6ゲームを再びブレークして、そのリードをいかしてわずか33分でセットを先取した。

 これまでフェデラーと6回対戦して1度も勝てていなかったゴファンは、対戦前から「何かを変えなければ」と語り続けていたが、第1セット終盤からボールへの感触が良くなり始め、サーブとリターンから攻撃的に打てるようになった。

 そして、第2セット第2ゲームで、フェデラーのサービスゲームを初めてブレークして、フェデラーの一方的な試合展開になるのをせき止めてみせた。

「成すべきところで、正確なサーブを打てなかったと思う。ゴファンは、とても大事なポイントでいいリターンでゲームに結びつけていった」とフェデラーが振り返ったように、ゴファンは、リターンから果敢に打ったり、ラリーでも凡ミスをなくしてフェデラーのミスを引き出したりした。

「ゴファンは、自分のゲーム(のレベル)を引き上げたが、自分はもはやついていけなかった」というフェデラーには、試合の終盤で少し疲れが見え、ファイナルセット第3ゲームで、ゴファンが再びフェデラーのサービスゲームをブレークして勝負の趨勢は決まった。

 試合前には、インドアのハードコートということもあって、圧倒的にフェデラー有利の声が多かったが、今回はフェデラーからの初勝利に結び付けたゴファンの勇気あるプレーを評価すべきだろう。

「もちろん自分のキャリアの中でベストの勝利になりました」(ゴファン)

 一方、フェデラーは、ツアー最終戦で大会史上最多となる7回目のタイトル獲得はならなかったものの、ATPファイナルズでベスト4という成績は、現在36歳という年齢を踏まえれば、素晴らしい成績であったことは言うまでもない。

 さらに、今季は35歳(大会時)にしてテニスの4大メジャーであるオーストラリアンオープンとウインブルドンで優勝して、グランドスラム2冠に輝き、昨年2月の左ひざの手術から見事な復活を成し遂げた劇的なシーズンとなった。

「自分にとっては、驚くべき年でした。(シーズン)最初から今日(準決勝)まで、高いレベルでプレーできたことが嬉しい。今年自分の人生でベストタイムを迎えることができた。このプロセスを自分自身でかみしめながら楽しんだ」

 今のフェデラーは、テニスを本当に楽しんでいる。そして、奇跡的ともいえるような華麗なテニスを披露して、男子史上最多となるグランドスラム19回優勝という偉業を成し遂げた。われわれは、2017年にフェデラーが起こした奇跡を目撃できたことに感謝すべきなのだろう。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

神仁司の最近の記事