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初手、春歩! 桜咲く4月、渡辺明名人(37)に斎藤慎太郎八段(28)が挑む名人戦七番勝負開幕!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月6日9時。東京都文京区・ホテル椿山荘東京において第80期名人戦七番勝負第1局▲渡辺明名人(37歳)-△斎藤慎太郎八段(28歳)戦、1日目の対局が始まりました。

 本局で使われるのは双玉の「名人駒」。奥野一香師作で、書体は「宗歩好」です。

 対局開始前、両対局者は「大橋流」で駒を並べていきました。

 同時代に一人だけ存在する名人は、江戸時代以来の伝統ある称号。1世名人に数えられる初代大橋宗桂(1555-1634)以来、「大橋」の名がつく名人は6人います。

 七番勝負開幕に先立つ振り駒は表の「歩」が3枚、裏の「と」が2枚出て、渡辺名人の先手と決まりました。

 本局の立会人を務めるのは青野照市九段(69歳)。あと一局を残して引退が決まっている桐山清澄九段(74歳)に次いで、青野九段は現役で2番目に年長の棋士です。

 午前9時。

青野「定刻になりましたので、渡辺名人の先手番で始めてください」

 渡辺名人、斎藤挑戦者は「お願いします」と一礼。持ち時間各9時間(2日制)の対局が始まりました。

 渡辺名人はしばし瞑目。そして初手、7筋の歩を一つ進め、角筋を開きました。江戸時代のいろは譜で記せば「春歩」となります。

 将棋界の歳時記では、桜咲く春4月は名人戦七番勝負開幕の時節です。毎年、名人戦の第1局は特別な感慨で迎えるというファンの方も多いことでしょう。

 斎藤八段は急戦をにおわせながらの駒組。現代最前線の進行です。40手目の時点では、昨年11月の▲羽生善治九段-△藤井聡太三冠(現五冠)戦と同じ局面でした。

 41手目。渡辺名人は端9筋の歩を突き越します。これで前例を離れました。斎藤挑戦者はさほど時間を使わず、4筋の歩を突きます。渡辺名人、斎藤挑戦者ともに、事前研究は十二分なのでしょう。

 44手目、斎藤挑戦者は自陣四段目に角を据えます。渡辺名人の手番で12時、昼食休憩に入りました。

 お寿司はサビ抜きなのが、いつも通りの渡辺流です。

 昨年の名人戦第1局は斎藤挑戦者先手で、やはり初手は「春歩」でした。そして同じく矢倉の戦い。結果は斎藤挑戦者が勝っています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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