決勝トーナメントに突入する女子W杯。なでしこジャパン側の山はクセ者ぞろいに。
カナダで行われている女子W杯はいよいよ決勝トーナメントに入る。グループステージも印象的な試合は多かったが、やはり本当の戦いはここから。ドイツ、アメリカ、フランスというランキング上位の優勝候補がなでしこジャパンと反対側の山に入ったが、代わりにくせ者のダークホースが揃った恰好だ。
'''【決勝トーナメント表】'''(FIFA公式)
■高さとスピードのオランダ。守備の堅さとセットプレーも脅威
トーナメントを戦っていく上で強力な3カ国と決勝まで当たらないことはラッキーだが、やはり楽な相手はいない。C組1位の日本がR16で対戦するのは初出場ながら堅固なディフェンスと高さとスピードを活かした攻撃を見せているオランダだ。
3試合で2得点2失点というここまでの成績の通り、圧倒的な爆発力があるわけではないが、18歳のFWミティマのポストプレーから快足ウィングのメリスが前を向いて仕掛ける速攻は非常に迫力があり、どちらかと言えば日本の守備陣が苦手とするタイプだ。
守備の粘り強さも折り紙付きで、1−1で引き分けたカナダ戦もクリアのこぼれ球を押し込まれたが、崩された形はほとんど無く、守護神カーツも168cmと欧州のGKとしては長身ではないものの、フィールディングに安定感がある。
中盤の攻防に関してはグループリーグのスイスより優位に立てそうだが、そこからなかなかDFラインの壁を破れず、アンカーから攻撃を組み立てる司令塔スピッツを起点としたカウンターから高さも活かされる形で失点する危険は小さくない。スピッツのキックに178cmのCBファン・デ・・スラフト、182cmの長身MFデッカーなどがゴール前で合わせるセットプレーも要注意だ。
とはいえ日本が丁寧にグラウンダーでパスをつないで高い位置に起点を作り、エース大儀見優季が決定力を発揮できる形に持っていけば早い時間帯でリードし、経験値にものを言わせて逃げ切りる展開に持っていけそうだが、初戦の序盤でパートナーの安藤梢が負傷して以降、なかなかバイタルエリアで良い形を作れていない実情もある。
オランダのディフェンスも考慮に入れながら、佐々木監督が前線をどういう布陣にしてくるかが攻撃面のポイントになってきそうだ。一方のディフェンスはオランダの高さを考え、スイス戦で活躍した187cmのGK山根恵理奈を起用するかもしれない。
■好調ブラジルも危険だが、より危険な相手はオーストラリアか
準々決勝ではブラジルとオーストラリアの勝者が相手になる。彼女たちの試合は6月22日に行われ、日本のオランダ戦より2日も早い。なでしこは経験豊富でゲームコントロールに優れるが、接戦で終盤、延長戦となると体力面で不利になる展開も考えられる。
好調のブラジルは日本と同じく2試合でグループ突破を決めていたため、大黒柱のマルタなどを休ませることができた。また3試合で無失点というディフェンスも目立っており、“3強”やなでしこと並ぶ優勝候補であることを示しながら余力を残している手強い相手だ。
しかし、いざ勝ち上がってきた時により怖いのはオーストラリアの方だ。昨年のアジアカップではグループリーグで2−2の引き分け、決勝では前半に宮間あやのCKから宇津木瑠美を経由し、DF岩清水梓が決めた先制点を守り切る形で優勝を飾ったが、かなりギリギリの勝負だった。
最も危険な選手は快足FWのキヤ・シモンだが、平均年齢が約22歳の中盤はボール奪取力が高く、一気のショートカウンターからウィングが速いクロスを上げてくる。オランダほど高さはないが、スピードと運動量でなでしこを上回るものがあるので、テクニックを駆使して主導権を握っていきたい。
■欧米系の4カ国はどこも難敵だが、因縁のイングランドは特に要注意
準決勝は現時点で考えすぎる必要はないかもしれないが、開催国のカナダをはじめ、ノルウェー、イングランド、グループリーグで苦戦したスイスと、どこが来てもサイズや身体能力の部分では厳しい戦いになることは想定しておきたい。
開催国のカナダも好調だが、今年のキプロス杯でそのカナダを破って優勝したイングランドがやや有利か。なでしこはイングランドに前回大会で負けており、もし勝ち上がってくれば日本に苦手意識が無い部分でも難しい戦いになる。ただ、ここまで来たらファイナルを目指し、経験値を最大限に発揮して押し切ってほしい。
7月6日の決勝まで上り詰めた場合、相手がどこになるかは神のみぞ知るところだが、その頃には前回大会を経験した主力だけでなく、チームとして精神的にも戦術的にも逞しくなっているはず。とにかくR16から気が抜けない戦いが続くが、ぜひとも勝ち上がって日本に明るいニュースを届けてくれることを願っている。