元日本代表キャプテン・廣瀬俊朗、東芝にコーチで復帰し低迷脱却へ。【ラグビー旬な一問一答】
元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗が、一昨季までプレーしていた東芝でバックスコーチを務めている。
チームは国内最高峰のトップリーグで過去5回優勝も、前年度は16チーム中9位に終わった。親会社が業績不振に苦しむなか、体制を刷新。2010年度以来に復職した瀬川智弘監督とともに、第1次瀬川体制下でキャプテンだった廣瀬も現場に戻った。
8月4日、東京・府中グラウンドでおこなわれたサントリーとの練習試合(24-0で勝利)の後、心境を語った。
以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。
――前年度王者のサントリーに完封勝ちしました。
「去年は軸がなかったのですが、今年は春からストレングス、フィットネスもやってきて、スタンディングラグビーを掲げてきた。それがいい形で出たと思います。これから各チームにスーパーラグビーの選手が帰ってきて、シーズンになるとどうなるかはわからない。ただ、いまのところはよく頑張っているとは思います」
――本社が大変な時期とあって、ラグビー部の活力が注目されます。
「いままではチームに色々なことがあった時に会社が守ってくれていた。いまは、会社が大変な時にスポーツが頑張る。それも企業スポーツの価値だと思います」
――このタイミングでコーチを引き受けた決断について、伺えますか。
「瀬川さんが帰って来るなか、瀬川さんと瀬川さんの間にあの時(前政権時)を知っている人がいるのは大事かな、と思いました。オリンピックで結果を出した瀬川さんがチームをどう作っていくかにも興味がありました(※)。何より、ラグビー部が好きだった。去年は9位で…」
※ 瀬川監督は2016年、男子7人制日本代表のヘッドコーチとしてオリンピックリオデジャネイロ大会4位入賞を果たした。
――ご自身が離れている間にチームは低迷。もどかしさは。
「皆、苦しんでいるなと思って見ていました。とはいえ当事者ではないので、ズバズバとは言えなかったですけど」
――現場に戻ってみて、浮上するポイントは見つかりましたか。
「東芝ってわかりやすくて、不器用でもいいからどんどん行くフィジカルなラグビーが持ち味だった。それを思い出すところから始まるんじゃないかな、と」
廣瀬は現役時代、大阪・北野高校、慶應義塾大学、東芝でキャプテンを歴任。特に東芝のキャプテン就任2季目の2008年度は、部員の不祥事に見舞われながらも日本最高峰のトップリーグを制覇。翌年には2連覇を達成した。
日本代表としては約5年ぶりに復帰した2012年春から2年間、キャプテンを務める。2015年のワールドカップイングランド大会時は試合出場こそなかったものの、相手の分析に時間を割くなど歴史的3勝を陰から支えた。
引退後は、現役時代から立ち上げに関わった一般社団日本ラグビー選手会の代表理事を務めた(現在は辞任)。ビジネスブレイクスルー大学に入ったり障がい者スポーツへ注目したりと、視野を広げてきた。
いざグラウンドへ戻れば、チームのアイデンティティの明確化を支える。サントリー戦では力強いタックルと立ってボールをつなぐ意識が垣間見えた。「メンタルでこちらのほうがタフだったのがよかった」と廣瀬。視界は明るいようだ。