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野党党首を「起訴すべきか、不起訴とすべきか」 元徴用工判決よりも注目される韓国検察の「重大決断」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「民主党」の議員総会で政府与党を批判する李在明代表(前列中央)(国会写真記者団)

 検察の出頭要請に応じるべきかで悩んでいた最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は結局、昨日(6日)検察に出頭しなかった。

 検察は大統領選挙での公職選挙法違反の時効日となる9月9日までに与党「国民の力」から告発された柏峴洞都市開発や大庄洞土地開発を巡る李代表の「虚偽発言」について事情聴取する必要があるとして6日午前10時までにソウル中央地検への出頭を要請していたが、李代表はタイムリミット寸前(2時間前)に党の首席報道官を通じて「出頭には応じない」と、検察に挑戦状を叩きつけた。

 出頭に応じない表向きの理由について首席広報官は「李代表は検察の書面調査の要求を受け入れて書面ですでに答えているので出頭要請の事由が消滅した」と説明していた。李代表は検察の裏をかき、前日(5日)にこの疑惑に関する自らの釈明を記した書面をソウル中央地検に送っていたのである。

 書面の内容は不明だが、柏峴洞の土地をグリーンベルトから準住居地域へと用途変更したことについて昨年10月国会国土委員会での国政監査で「変更しなければ、職務不履行で問題になると国土部から脅迫されたため」と発言したことは虚偽でなく、事実であると主張したものとみられる。また大庄洞土地開発疑惑の渦中に自殺した市職員についても「末端の職員なので市長在任時には知らなかった」と発言したことも「嘘ではない」と弁明したものとみられる。

 書面提出は出頭拒否のアリバイ作りに過ぎない。というのも、検察の出頭要請そのものを李代表も「共に民主党」も野党への政治報復、弾圧とみなし、宣戦布告されたと捉えていたからだ。従って、不出頭は既定方針となっていたと言える。

 李代表が出頭を拒否したことでボールは検察に移った格好となった。刻々と迫る選挙法違反の時効を前に野党第1党の党首を起訴すべきか、不起訴とすべきか、今度は検察が悩む番だ。遅くとも前日(8日)までに決めなければならない。

 政界もメディアもまた、法曹界も検察がどのような判断を下すのか注視しているが、李代表が問われている虚偽事実公表罪は客観的に発言が虚偽だとしても当時被疑者が真実であると信じていたことが立証されれば、成立しない。

 従って、偽証罪を立証するのは容易ではないが、李代表が出頭拒否を通告した6日、ソウル中央地検が京畿道庁に検察官と捜査官を派遣し、李代表の城南市長時代に広報業務を担当していた職員の事務室への家宅捜索を行ったことから起訴するのではないかとみる向きが多い。被疑者の事情聴取と同じ日に家宅捜索をやるのは極めて異例で、それだけ検察の起訴への強い意思が感じられる。

 検察は李代表の「虚偽発言」の中では大床洞土地開発疑惑の渦中に自殺した市職員について大統領選挙期間中の昨年12月にSBSテレビとのインタビューで「市長在任時には知らなかった」との発言を徹底的に調べているようだ。この職員が城南市長時代の2015年1月の豪州、ニュージランド視察に随行しているからだ。

 李代表は職員が一緒に映っている写真を突きつけられても「城南市傘下機関が4千人以上もいるのに市長がいちいち覚えているはずはない」と交わしていたが、李代表に提出していた書面調査では検察はこの点を重点的に問い質していたことから検察は偽証の裏付けとなる何かを掴んでいるようだ。また、「国土部から脅迫された」との発言はすでに警察が調べた挙句、「虚偽」と認定した結果、検察に送致されていただけに李代表が書面で弁明しても起訴が可能なようだ。

 起訴され、公職選挙法違反で罰金100万ウォン以上の刑が宣告されれば、当選無効となるが、李代表は大統領選挙で落選しているので適用外となる。従って、李代表は議員を失職することはないが、今後5年間は被選挙権を剥奪される。そうなれば、次期大統領選挙には出馬できない。事実上、政治生命を失うことに等しい。

 また、起訴となれば、李代表を大統領候補に担いだ「共に民主党」は中央選挙管理委員会から補填、返還された選挙費用434億ウォンを公職選挙法に基づき戻さなければならない。国家の補助金なしで政党が党を運営するのは至難である。2年後に国会議員選挙を控えているだけにダメージは大きい。最悪、「反李在明」の非主派が離党し、新党をつくるなど分裂の可能性も出てくる。

 検察の出頭要請に尹政権のそうした狙いが見え隠れしているからこそ李代表の側近が李代表に「戦争が始まった」とメールしたのではないだろうか。

 「共に民主党」は「目には目を」「やったらやり返す」とばかり尹大統領を「偽証罪」で告発し、金建希(キム・ゴンフィ)夫人の疑惑を特別検察官制度で調査することを国会で発議したのも起訴防止策の一環である。

 仮に今回、李代表が起訴を回避できたとしても、一難去って、また一難で李代表には疑惑の核心である「大庄洞土地開発疑惑」(背任容疑)、サンバンウルグループ弁護士代納疑惑、城南FC不法後援金疑惑を含め自宅の隣家を京畿道住宅公社(GH)名義で借り、大統領選挙時に使用した容疑から金恵景夫人の公務用クレジットカード不正使用疑惑などを抱えていることからいずれは起訴されることになるであろう。

(参考資料:「検察に出頭すべきか、すべきでないか」 絶体絶命の韓国最大野党党首)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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