巨大な蜂?いいえオオスカシバという蛾です。うっそー、ほんとー。信じられない。
子どもの頃、黄緑色の巨大な蜂を見つけて恐怖におののいた覚えがある人は結構多いかも。大人になって、あれは「オオスカシバ」という蛾なんだと知って、「うっそー、ほんとー」と驚いた人もいるだろう。いまだにオオスカシバを蜂だと思っている人もいるだろう。物知り顔の変な虫好きオヤジ(恐らく昆虫記者)から「バカだねー、あれは蛾なんだよ」と、うんちくを聞かされて、むかついた人もいるだろう。
そんなオオスカシバが4月に我が家で羽化した。昨年秋に近所のクチナシで捕まえてきた(害虫駆除です)幼虫が蛹で越冬して、春に成虫になったのだ。
オオスカシバは羽化直後には翅に鱗粉があって、蛾らしさを多少におわせているのだが、すぐに鱗粉をすべて落としてしまう。翅が透明になると、これはもう、どう見ても巨大な蜂だ。体色は派手な警戒色だし、お尻からは黒い針みたいなのがたくさん突き出ているし。昼間にブンブン羽音を響かせて忙しく飛び回ったり、ホバリングしたりしながら、花の蜜を吸っている姿も、かなり蜂に近い。
しかし、幼虫の姿を見ると、スズメガの仲間の蛾だと分かる。しばしばクチナシの葉をボロボロに食い荒らしている巨大なイモムシがオオスカシバの幼虫だ。幼虫のお尻にある角(尾角)は、スズメガの仲間の特徴だ。
オオスカシバの成虫を蜂だと誤解すると怖いが、毒針などの凶器を持たない蛾だと分かれば、恐ろしくも何ともない。安心して眺めてみると、モフモフの太い胴体で結構かわいい存在かも。この仲間は英語ではハミングバード・モスなどと呼ばれているようだ。ハミングバードは、ホバリングしながら花の蜜を吸うきれいな鳥。ハミングバードのような蛾と思えば、オオスカシバが急に愛おしく感じられるかも。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)