エンゲル係数アップの要因、消費税導入、高齢化もさることながら、 年収300万以下が41%も
日本のエンゲル係数上昇 消費税導入後 単身者では15年度、一気に上がる
2015年、エンゲル係数が25%以上となった。エンゲル係数は昔、「経済的な豊かさの度合いを表す指標」としてよく使われていた。ちなみにエンゲル係数とは、消費支出における食の割合を算出した数値、これがエンゲル係数であり、非常にわかりやすい指標である。しかし昨今、ここまで社会状況が大きく様変わりし、エンゲル係数のみで論ずることは難しいとされ、しばし話題に上がらなかった。しかし、最近のエンゲル係数の上り率をみると、問題として注視されつつある。
要因として所得の低迷、そして消費税導入後、エンゲル係数アップ 単身者に直撃
2014年のエンゲル係数を月毎の数字で見ても、いずれも25%以上の月が多くなっており、2015年以降では25%超えている。その要因は、所得の低迷、そして2014年の消費税導入からと言われている。
そこで単身者と2人以上の世帯のエンゲル係数を見てみる。
2014年の消費税導入による影響は、この図を見ても解かるように、2世帯以上より単身者の方がエンゲル係数が逆転して多いことから、単身者に直撃していると考えられる。ちなみに2012年もエンゲル係数はアップしており、この年、団塊の世代が65歳を迎え、これがエンゲル係数に現れたとみられる。高齢になるにつれ、エンゲル係数が増加するというのは、一般に言われているように数字で表れている。
世帯別でみえてくること、そして年収300万以下が全体の40%以上
次に2015年の単身者の消費支出、食費、並びにエンゲル係数を家計調査で見てみると
・35歳未満の単身者 消費支出168351円、食費は45345円 エンゲル係数26.9%
・35歳から59歳の単身者 消費支出177085円、食費は44550円 エンゲル係数25.2%
・60歳から単身者 消費支出148890円 食費は36378円 エンゲル係数24.4%
2人以上の世帯では10歳ごとに区切られている。
50代 消費支出339967円 食費 78665円 24%
60代 消費支出289289円 食費 74463円 25.7%
70代 消費支出239454円 食費 66047円 27.6%
年齢がいくに従い、身体の行動範囲が狭くなることもあり、「食べること」が楽しみとなり、前述したように、エンゲル係数は増加すると一般に言われている。
しかし単身者の60歳以上を見ると、消費支出、そして食費ともに減少していることから、エンゲル係数が若干、減少しても「余裕がある」とは言い難い。家庭調査から、単身者の年収は全般に低く、状況は極めて貧窮していることが伺えるからである。そしてすでに単身者は全人口の37%となっており、今後も伸び続けるとされ、単身者の動向を無視することは出来ない。
問題なのが全体の人口の300万以下の所得層は41%を占めており、日本全体をみても、食費を削る方向に向かっているのだ。
エンゲル係数の上昇、見えない原因も
エンゲル係数が上がってしまった所以は、長らくデフレから所得低迷からの脱却がなかなか進んでいないこと、高齢化、消費税導入によることが大きいとよく言われている。そして、それらの状況をまともに直撃しているのが単身者であり、2人世帯より所得は低く、一人暮らしはやはり目立たないところで暮らしづらさからエンゲル係数がアップしているのである。
例えば、一人である場合、食事においても残らないようにする意味でも個食を購入する。しかし製造側、メーカーでは個食にすることでコストがアップし、それに伴い小ポーションは値段が通常より高い。今回、200人の単身者300万以下のアンケートで「デイスカウントで大量に購入したいが、住まいが狭いため、おのずと冷蔵庫も小さいものを購入しているので、賢く一つの食材を使いまわしすることが出来ない」と言った意見も見受けられた。このように日々、ちょっとしたことが重なりあって、見えないところでエンゲル係数をアップさせる原因になっているのではないだろうか。
年収格差の広がりから今後のエンゲル係数
リーマンショック後の2009年 嘗てない大量の希望退職を募り、その数は2万2,950人にもなり、2008年300万以下が人口の39.7%から一気に42%まで上がってしまった(国税庁「民間給与の実態調査結果」2014年参照)。当時、小売業では低価格路線に一気に小売業は流れ、それに伴って、コスト削減、しいては人件費をも大きく影響し、その後、雇用問題は抜本的な解決できず、300万以下は40%を切っていない。
所得がアップしない現状で、小売りでは商品を見ると、高付加価値から単価がじわじわ上がってきている。これにより減少していく客数を外食同様、単価を上げることでなんとかカバーしようとしている。しかし、それは顧客のニーズと商品との乖離を意味し、エンゲル係数はこの状況が続くとすれば、下がることは難しい状況と言えるのではないだろうか。