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WMO予測 エルニーニョ発生確率70%で気になること

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
WMO専門家「圧倒される日本の水害は我々が考える気候変動だ」(写真:ロイター/アフロ)

 世界気象機関は10日、今年末までにエルニーニョが発生する確率は70%と発表した。しかし、これまで秋から冬にかけて発生したエルニーニョは少なく、高い発生予測に疑問が残る。

エルニーニョ発生確率は70%

 現在はエルニーニョでもなく、ラニーニャでもない平常の状態です。前回の予測(6月)では夏にかけて平常の状態が続く可能性が高い(75%)としていました。今回はエルニーニョの発生を意識した内容です。

WMOエルニーニョ発生予測、2018年末まで(WMOホームページより)
WMOエルニーニョ発生予測、2018年末まで(WMOホームページより)

 WMO専門家は「今のところ、エルニーニョの規模ははっきりしないが、今年5月から7月は平常の状態にもかかわらず、赤道域の海面水温は基準値より高く推移している」と述べたうえで、「この夏は北欧で記録的熱波、日本やインドなどでは圧倒される規模の水害が発生した。これらの多くは我々が考える気候変動だ」。

 エルニーニョ発生で、さらに異常気象のリスクが高まると警鐘を鳴らしています。

秋から冬にかけての発生はわずか

 気象庁は10日、定例のエルニーニョ監視速報のなかで、「秋は平常の状態が続く可能性もある(40%)が、エルニーニョ現象が発生する可能性がより高い(60%)」との見通しを示しました。暖かい海水(暖水)が太平洋東部に移動することで、緩やかに海面水温が上昇し、エルニーニョ発生に至ると予想しています。

 しかし、ひとつ気がかりなことがあります。

 記録が残る1949年以降、エルニーニョは15回発生しました。発生した季節をみると、春が最も多く8回、次いで夏の5回、秋が2回、そして冬はありません。秋から冬に発生した割合は全体の約13%です。

エルニーニョが発生した季節しらべ(著者作成)
エルニーニョが発生した季節しらべ(著者作成)

これまで発生が少なかった秋から冬。今年末までにエルニーニョは発生するのでしょうか?

 エルニーニョは異常気象の代名詞になりました。しかし、今なおエルニーニョの発生を的確に予測することは難しく、研究が進められています。2012年にはエルニーニョが短期間で終わり、幻となったエルニーニョもありました。

 これまでの発生を見る限り、最も発生回数の多い春にずれ込む可能性もあると考えています。

発生したら、この冬は暖冬?  

 これまでエルニーニョが秋に発生した1968年は西・東日本で暖冬に、1986年は西・東日本で平年並みの冬でした。事例が少ないため、はっきりしたことは言えませんが、この冬も暖冬になるのでしょうか。今月25日に発表される寒候期予報(この冬の天候予想)に注目しています。

【参考資料】

世界気象機関(WMO):WMO Update: 70% chance of El Nino by end of 2018,10 September 2018

気象庁:エルニーニョ監視速報 No.312,2018年9月10日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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