18歳選挙権時代直前、地方議員が「街」を語る必要性
70年ぶりの法改正、いよいよ18歳選挙権時代へ
来年2016年夏の参議院議員選挙から、選挙権年齢が18歳以上へと引き下げられることが17日国会で正式に決まった。1945年に女性に参政権が付与されて以来70年ぶりの大改正。この改正に向けて様々なことが議論されている。
その議論の大きな一つとして述べられていることは「教育」。さらにいえば、学校での教育に対して議論が集中している。18歳から選挙権が与えられるということから、高校3年生で誕生日を過ぎた人は選挙権を得ることにより議論が盛り上がっている。社会を知り、その中で自分はどう考えているのかを知り、そしてその考えの実現のために政治が関わることを知る。これが自分の考えるシティズンシップ教育の流れだ。詳細はまたの機会に書くとして、今回は少し視点をずらして「地方議員」ができることを考えてみたい。
地方政治と国政の違い
この18歳選挙権に関する議論、安保法制、派遣法の改正など国会で議論されている主なものに関してはメディアなどを通じて情報を持っているという方は多い。対して、住んでいる自治体の地方議会での議論などの情報に普段から接している人は少ないだろう。ちょうど6月議会の時期で、全国の多くの自治体で議会が行われている、もしくは来週辺りから始まるのではないだろうか?しかし、残念ながらその議会の論争の様子はあまり知られていない事実がある。
地方政治どころか街についても知られていない
冒頭の段落において、「社会を知り、その中で自分はどう考えているのかを知り、そしてその考えの実現のために政治が関わることを知る」と書いた。地方政治にこれを当てはめれば、まずは「社会」=「街」を知る必要がある。街の人口、年齢構成、主要な産業、街の売り、子供の数の増減、隣の自治体との違い等など。都市部の方で、住んでいる自治体と通勤・通学先が違う方。あるいは青年期まで住んでいた自治体とは違うところに住んでいる方などがこの状況に多く当てはまるのではないだろうか。
18歳と政治をつなぐ鍵は身近な地方政治にある
ここまで、地方政治や地方自治体が、国政や国に比べて、住民にとってあまり知られていない現状があることをお伝えした。しかしながら、自分は地方政治・地方自治体こそが18歳と政治をつなぐ可能性を秘めていると考えている。それは身近さという特徴があるからだ。「TPP・安保法制・参議院制度改革なんて分からない」という人にとっても、「いつも使う駅前の再開発」「通っていた小学校が併合でなくなる!?」といった話は自分事となる。なぜなら、「政治」の話ではなくて普段の「生活」の話としてとらえられるからだ。
さらに、18歳の多くが高校生だと考えると、長年住んでいる、つまりは小学校・中学校の時代を通して馴染みのある、愛着のある自治体に住んでいる可能性が高い。進学や就職で新たな街に住み始めたばかりの2年後に20歳になって投票権をもらうよりも、何年も住んでいる街に関わる投票権を得ることのほうが、投票意欲を持つのではないかと考える。もちろん、投票行為だけでなく地方政治自体への関心も高まると考える。
政策の前に、まず「街」について地方議員の皆さんには語っていただきたい
そこで、ぜひ全国の自分の街を愛する地方議員の皆さんには「街」のことから語っていただきたい。「この街は○○な状況にある。そのなかで、自分は現状の○○に着目している」「○○を問題だと思い、その問題を解消するために以下の政策を行いたい」「○○な今の状態を変え10年後に○○な街であるようにするのが私の目標だ」といった感じだろうか。
まずは、街の現状を語る。語ることで、住民と街の現状の知識・認識の共有をする。そしてその状況をどのように変え、どんな街を目指すのかを語る。これがスタート。その後に個別の具体的な政策を存分語っていただければと思う。しかし、最初から個別具体的な政策を伝えることは、受け取る側の共感を生むとは限らない。
ちなみに、HPのようなだれでもアクセスできる発信ツールを持たない人は、18歳選挙権時代、というかそれ以前に今の時代に合っていない。
若者を政治に巻き込むためには色々な人が色々なやり方で仕掛けることが必要。議員としてできることは自分の政策・信条を伝え、自分のファンになってもらい、ゆくゆくは自分に投票をしてもらうことではないかと考える。「街」を切り口に、どんどん若者を巻き込んでいただければ幸い。議員や政策の見比べ方などを教えるのは学校教育や自分たちNPO法人などの役目。自分としては、若者が批判的・主体的に考える力を養う仕掛けを続けたい。
※自分が代表のNPO法人YouthCreateでは全国各地でその街の若者と地方議員の気軽な交流会「Voters Bar」を開催中。
開催に興味のある方ぜひ連絡ください!
※この原稿は 政治・選挙プラットフォーム【政治山】さんから寄稿依頼をいただき作成したものである。