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バレーボールV.LEAGUE男子大会が26日に開幕! 新リーグで何が変わる?

田中夕子スポーツライター、フリーライター
開幕はサントリーのホームゲーム。趣向を凝らした演出にも注目(写真は昨季の天皇杯)(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「変わる」の前にまずは認識されること

 女子バレーの世界選手権が閉幕し、いよいよバレーボールの国内シーズンが開幕。26日に東京・大田区総合体育館で行われるサントリーサンバーズ対JTサンダーズの開幕戦から、新たな挑戦が始まる。

 では、一体何が変わるのか。

 バスケットボールのBリーグ開幕時には大々的にテレビのゴールデンタイムに地上波で中継され、昨日開幕した卓球のTリーグも地上波で中継された。競技に精通していない人でも「何か新しいことが始まったらしい」と認識するには十分であった他競技に比べ、「新リーグが始動」とはいえ、バレーボールは何が変わるのか。理解しているどころか、26日に開幕するということが話題に上がることもほとんどないのが現状だ。

 実際にリーグで戦う選手も、取材時にこんなことを話していた。

「Vリーグが変わる、新しくなると言うけれど何が変わるの? と周りの人に聞かれても、自分たちも正直わからない。パッと見てすぐわかるのはチーム数が増えることぐらいなんです。運営の面でいえば、ホームゲームの収益がチームに入るようになるから、たくさんの方に見ていただくことがチームの利益にもつながる。でもじゃあそのために何が変わるの、と言われるとやっぱり答えられない。そもそもホーム&アウェイといっても完全にそのシステムが取り入れられているわけじゃないし、実際もう何年もリーグで全国のいろいろなところへ行くけれど、選手同士で食事に出るとほぼ毎回、どこへ行っても聞かれるんですよ。『お兄さんたち大きいけど、何の選手? バスケ? バレー?』って。まずは認識されることから始めないと、本当の意味で変わることすらできないですよね」

 開幕に先立ち、ファンを交えた一般公開で行われた開幕記者会見でも、豊田合成トレフェルサの高松卓矢が通行客に「Vリーグを知っているか」と尋ねるも認識されておらず、「まずは存在を知ってもらうことがスタートライン」と話した。真の意味で変化し、新リーグとしてスタートするにはまだまだ課題が多いのが現状でもある。

トライ&エラーを繰り返しながら新たなチャレンジを

 とはいえ嘆いてばかりはいられない。新たなスタートを切る。その第一歩となるのが、26日の開幕戦だ。

 これまでは男女のトップカテゴリーチームが一同に会し、2日間で各チームの開幕戦を同会場で行うのが常とされてきたが、先述の通り今季はホームゲームの運営はチームに一任されており、収益を得るだけでなく、そのためのさまざまなイベント運営もチームが行う。応援スタイルも従来とは異なり、ホーム、アウェイの違いが色濃くなる、ということは幾度となく伝えられてきた。

 だが実際に何がどう変わるのかというと、よくわからない、というのが大半だ。その試金石となるのが、新リーグのスタートとなる開幕戦。サントリーサンバーズのホームゲームとして開催されるのだが、サントリーは昨シーズンもナイトゲーム開催や、ハロウィンイベントやプロジェクションマッピングなど趣向を凝らした演出で、新たなチャレンジに着手してきた。企画の発案や実現に至るまで、事務局が中心となり現場の協力も得られるよう努力を重ね、難しい、と突っぱねられながらも1つ1つクリアし、実現してきた経緯がある。

 たとえばナイトゲームの実現1つに至っても、新たな層を集客するという面では平日の夜開催も利点はあるが、選手の立場だけで見れば土日の午後に試合が行われるのが常であるため、試合に向けたピーキングやコンディショニングの観点で言えば決して好意的な意見ばかりではなかった。だがそれもすべて、やってみなければいいか悪いかすらわからない。そう言うのはチームの指揮を執る荻野正二監督だ。

「バスケットや卓球、いろんな室内競技がプロ化する中、バレーボールも取り残されないようにしないといけない。見に行きたいと思われる試合をするのが現場の僕らの使命であり、あのチームをもっと応援したい、と思われる1つの方法がホームゲームでもあり、いろんなイベントの楽しさを実感してもらったり、居酒屋代わりにビールを片手にバレー観戦で『楽しかった』と思ってもらえるのも1つだと思うんです。事務局は大変だと思うし、選手にももちろん負担はある。でもVリーグを知らない人も多い中、新たな層を収穫して、知名度を上げるためには挑戦しないといけない。そこを、自分らがやっていかなきゃいけない、切り拓かないといけない、という思いは強いですよ」

 長い時間をかけて現場の選手が準備を重ねるように、ホームゲームを運営するスタッフも長い時間をかけ、試行錯誤を繰り返しながら準備を重ね、開幕を迎える。サントリーだけに限らず、今後さまざまなチームが展開するホームゲームの演出や、応援の中で、よかれと思って打ち出した策も、アウェイチームの関係者やファンにとっては「今まではそうじゃなかった」と感じることもきっとあり、すべての人たちが満足し、納得する方法を見つけるのは容易いことではない。特にそれが、他チームとは異なる最初のチャレンジであればなおさら、うまくいったことを賞賛されるよりも、うまくいかないことを叩かれることのほうが多いはずだ。

 それでも、トライ&エラーを繰り返しながら、プレーする選手、運営するスタッフ、会場に足を運んでくれるファンが満足するような最善策を探す。そのための第一歩となる開幕戦。もちろんそれはホームのサントリーだけでなく、対戦するJTサンダーズにとっても、記念すべき、貴重な一戦であるのは間違いない。JTサンダーズの副キャプテンを務める久原大輝が言った。

「記念すべき開幕戦の相手として、僕らがコートに立てるのは本当に光栄なこと。アウェイから始まりますが、その翌週は僕らのホームゲームなので今度はホームの力で後押ししてほしい。開幕カードを戦える誇りを持って、いつも通り戦いたいです」

 勝敗や選手のパフォーマンスはもちろんだが、それぞれのチームがどんなホームゲームを展開するのか。

 そのスタートとなる開幕戦のチケットはまだ販売されており、当日券も用意されているそうだ。何が始まるのか。何が変わるのか。変えようとしているのか。ぜひ多くの人たちに自分の目で見極めてほしい。バレーボールが好きな人はもちろん、今まで観戦機会がない人や、それほど興味がなかった人、他競技や異なる職種の人たちもこの機会に足を運んでみてはどうだろうか。そこで感じる1つ1つ、さまざまな意見やアイディアが結集することが、新しい形へとつながっていくはずだ。

スポーツライター、フリーライター

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)、「青春サプリ」(ポプラ社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した「当たり前の積み重ねが本物になる」(カンゼン)などで構成を担当。

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