【韓国海軍レーダー照射事件】三峰号レーダー誤認説が間違いである理由
2018年12月20日に発生した韓国海軍レーダー照射事件について、韓国側から駆逐艦「クァンゲトデワン(広開土大王)」と一緒に居た海洋警察庁の警備救難艦「5001 サンボンギョ(三峰号)」のレーダー波を誤認したのではないかという説が唱えられています。警備救難艦の水上捜索レーダー「シャープアイ」と駆逐艦の火器管制レーダー「STIR-180」の周波数が似ているというのが理由です(アメリカのIEEEの分類でXバンド、EUの分類でIバンド)。しかし稼働中は360度常時回転する捜索レーダーと常時回転を行わない火器管制レーダーでは電波の当たり方が全く違うので誤認は考えられません。この点の違いについては日本防衛省は既に図解で説明済みです。
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(平成30年12月28日 防衛省)
360度常時回転する捜索レーダーは電波の当たり方が周期的なものとなりますが、火器管制レーダーは常時回転せず目標にアンテナを向けたら電波は当たりっ放しになります。擬音的に表現するなら捜索レーダーは「ピッ ピッ ピッ」という感じになりますが、火器管制レーダーは「ピー」という感じになります。電波の当たり方が全く異なるのです。
韓国海洋警察の三峰号の捜索レーダーはイギリスのケルヴィン・ヒューズ(Kelvin Hughes)社製シャープアイ(SharpEye)です。これは航海用の360度回転する水上捜索レーダーです。
- ケルヴィン・ヒューズ社の公式動画よりシャープアイ水上捜索レーダー
シャープアイはSバンドおよびXバンドの周波数を使用し、STIR-180はXバンドを使用するので、周波数だけを見れば誤認説はもっともらしいのですが、前述のようにアンテナが常時回転する・しないという単純な機械的特性から誤認の可能性は真っ先に除外される上に日本側はそのことを既に説明済みです。シャープアイには目標にアンテナを向け続けるという機能がありません。物理的に火器管制レーダーと同じ動きはできないのです。
レーダーの特性に詳しくない韓国メディアの一般紙が勘違いをして誤認説を唱えるなら仕方がない面もあります。しかし韓国国防部の関係者がメディアに誤認説を唱える行為は全く理解することができません。それは本当に関係者なのでしょうか? それとも関係者の説明をメディアが曲解していることはないのでしょうか?
※2019年1月19日、警備救難艦「サンボンギョ」の漢字表記は「参峰号」ではなく「三峰号」が正しいためタイトルを修正しました。また自衛隊は「サンボンギョ」とカタカナ表記していますが、韓国語の発音からは「サンボンホ」ないし「サムボンホ」がより正しいものになります。