鳴尾浜の開幕戦で、さっそく行われた“ヒーロースピーチ”《阪神ファーム》
ウエスタン・リーグが開幕して1週間経った23日、阪神ファームは本拠地での開幕戦を迎えました。お天気にも恵まれ、朝早くから多くのお客様が詰めかけた阪神鳴尾浜球場は試合開始前に入場制限がかかる盛況ぶり。さらに阪神は藤浪、桑原、ドリスという1軍投手陣が登板するとあって、取材陣も多かったですね。
『超積極的』をテーマに掲げる2018年の阪神ファームにとって、13日と14日の教育リーグ(ナゴヤ)で対戦した中日の加藤捕手は天敵と言ってもいいでしょう。その2試合で計6個の盗塁を阻止され、1つも成功せず。公式戦だった23日もスタメンマスクで、2つ刺されて2つ成功したものの、その2つに加藤選手は送球していません。公式戦で早くも10個くらい刺しているとか!すごいですねえ。
試合は、藤浪投手が自身のエラーで1点先取されるも、6回に先頭からの4連打と2盗塁で2点取って逆転した打線。そのまま逃げ切って、チームは3連勝となりました。そして24日の2戦目は延長10回まで戦って2対2の引き分け。岩貞投手が6回5安打2失点(自責1)、そのあと高橋聡投手、岩崎投手、石崎投手が投げ、延長に入ったため山本投手も登板して、それぞれ1イニングずつを0点に抑えています。阪神は計4安打で、得点は坂本選手の2ランのみでした。25日はルーキー・高橋遥投手が先発予定です。
新しい2018年型の阪神ファーム
試合結果の前に、少しおつきあいください。ことしの阪神ファームをご覧になって、昨年までと違うなと感じた方は多いと思います。走攻守に、1打席目から、初球からといった積極性はもちろんで、私も試合をボーっと見ていられない(今までボーっとしていたわけではありませんが…)というか、いつランナーが走るかわからないので“超集中”状態でいます。まだ3月の時点で、いくつかダブルスチールを企てるなんて記憶にありません。でもワクワクしますよね。相手チームが警戒するのも当然です。
ちなみに、24日の試合終了時点でウエスタン・リーグの最多盗塁は島田選手の5個(失敗数も5個で最多と思われます)、2位が3個で植田選手と熊谷選手、次いで2個の4位タイは板山選手と、見事に上位を阪神勢が占めています。 チームの盗塁数も18個あり、次が6個なので断トツ。ただし阪神の消化試合数が一番多いので、まだ比較しにくいかもしれません。
ゲーム以外にも違いがあります。開幕戦を見ておられた方はお分かりでしょうか。教育リーグ(ナゴヤ)の時にも書きましたが、勝って試合終了となった選手たちは、マウンド付近でハイタッチをしたあと戻ってきますよね?それを迎える側の順番って、阪神のファームは監督が先頭、次いでコーチ陣、試合で投げたピッチャーや出た野手などベンチにいる選手たちと続きます。昔から同じかどうかは不明ですけど、少なくとも平田監督、古屋監督、掛布監督は先頭で選手を迎えていました。
矢野燿大監督に代わって、昨秋のフェニックス・リーグでは写真の通り先頭で迎えたのですが、それ以降は安芸キャンプの練習試合でも教育リーグでも選手が先に並んでいます。監督とのハイタッチを撮ろうとカメラを構えた時に「あれ?監督はどこ?」と探し、よく見たら一番うしろに姿が。ある時、先頭だった今成選手に聞いてみたら「だって1軍は監督やコーチが最後でしょ?」とサラリ。おお、確かに!今まであまり気にしなかったけど、1軍は選手が先ですかね。
というわけで、矢野監督に確認してみました。「え、そうなん?今までどうだったか知らんから」。なるほど。これまで…と説明したものの、特にこだわりはない様子。ただ「1軍は監督のあとにコーチやろ?俺はコーチのあと。一番うしろにいるねん。そこは控えめに(笑)」だそうです。
『ヒーロースピーチ』第1弾
また23日は試合終了時にグラウンドで整列した際、北條選手が“勝利のスピーチ”をしました。矢野監督がヒーローインタビューをしようと構えたテレビのディレクターからマイクを奪い(笑)、それを北條選手のところへ持っていったのです。受け取ったものの何を話せばいいのかわからず戸惑っていると監督が説明し、北條選手は「ああー」と納得したもよう。その声もしっかりマイクに入っていましたけどね。
「きょうはたくさん応援に駆けつけていただいて、本当にありがとうございました。きょう鳴尾浜開幕っていうことで、何とか勝ててよかったです。チームも勢いづいているので、このまま1軍を目指して頑張ります。応援よろしくお願いします。きょうはありがとうございました!」。急に振られても、しっかりしゃべった北條選手。これが小虎初の“ヒーロースピーチ”です。
矢野監督によれば「2月のキャンプで『ヒーローインタビューは自分の言葉で伝えろ』というのは話していた。プロとしてプラスアルファで、自分の言葉で伝えることは必要やと思うし。まあここで『やります!』って言うのは今成くらい?(笑)。みんな当たりたくないと思ってるやろけど」とのこと。「それもプロとしてやるべきことなので、短くてもいいから何か伝える。ファンも喜んでくれて、それで選手を好きになってくれたら、お互いにいいよね」と続けました。1軍のお立ち台でも生かせる?「そうそう」
北條選手に、あのスピーチは急に言われた?と尋ねてみたところ「はい」という返事。それにしてはさすがです。「いや、花粉症なんで鼻が詰まっていて…」と辛そう。確かにものすごい鼻声でしたねえ。スタンドから「声が小さくて聞こえない」って言われていたことを伝えると「それは許してください」とのことです。わかりました。声は小さくてもいいから、またヒーローになってください!
鳴尾浜の初戦は逆転勝ち
では、お待たせしました。23日の本拠地開幕戦の詳細をご紹介します。
《ウエスタン公式戦》3月23日
阪神-中日 1回戦 (鳴尾浜)
中日 000 010 000 = 1
阪神 000 002 00X = 2
◆バッテリー
【阪神】○藤浪(1勝)-桑原-ドリス-S松田(1S) / 坂本
【中日】若松(5回)-●浅尾(1敗)(1回)-佐藤(1回)-田島(1回) / 加藤
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]左:島田 (3-1-0 / 1-1 / 1 / 0) .261
2]一:荒木 (3-1-1 / 1-0 / 1 / 0) .333
〃投:桑原 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃投:ドリス (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃打:小宮山 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .200
〃投:松田 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
3]遊三:北條 (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .261
4]右二:板山 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .346
5]中一:中谷 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .091
6]三:今成 (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .364
〃右:江越 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .071
7]捕:坂本 (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .667
8]二遊:熊谷 (2-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .278
9]投:藤浪 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 1) .000
〃打中:緒方 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .214
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
藤浪 6回 93球 (2-4-3 / 1-0 / 0.00) 152
桑原 1回 15球 (1-1-0 / 0-0 / 0.00) 147
ドリス 1回 20球 (1-2-0 / 0-0 / 0.00) 151
松田 1回 16球 (0-0-1 / 0-0 / 0.00) 149
《試合経過》※敬称略
藤浪は1回に2四球、2回に1四球と走者を出しながらも無失点。3回は1死から2番・井領に初ヒットとなる右前打を許し、二盗を決められますが後続を断って0点。4回は三者凡退。しかし5回、先頭の近藤に中前打されたあと加藤の犠打を自身が送球エラー。これで無死一、三塁とし、続く1番・石岡の二ゴロで1点を先に与えました。6回は三者凡退、その裏に代打を送られて交代です。
打線は1回、先頭の島田が四球を選ぶも、荒木の三振と島田の二盗失敗(併殺)など3人で終了。2回は三者凡退。3回は先頭の坂本が左前打し、熊谷の四球で無死一、二塁とするも、藤浪がうまくバントしたと思ったら前進するサードの正面に転がって5-6-4の併殺となるなど、チャンスを広げられず。4回は2死から板山の中前打のみ。5回は三者凡退と若松を攻略できませんでした。
1対0と中日がリードして迎えた6回裏、代わった浅尾から藤浪の代打・緒方が中前打し、島田の右前打で三塁へ。ついで島田が初球で二盗を決め(キャッチャー加藤は送球せず)無死二、三塁となって荒木の打球は浅尾のグラブをはじいて中前タイムリー!さらに荒木も二盗(ここも加藤は投げず)で、また無死二、三塁。続く北條の左前タイムリーで2点目!
そのあとは板山の中飛で荒木が本塁憤死の併殺などで終わりますが、2対1と逆転に成功しています。7回は1死から坂本が右前打したものの加藤に盗塁を刺され無得点。8回は田島の前に三者凡退で終了です。
一方の阪神リリーフ陣は、7回の桑原が先頭・野本にショート内野安打(熊谷はよく捕ったけど投げられず)を許しますが、後続はバント失敗や三振などで無失点。8回のドリスも2死から遠藤の右前打と盗塁はあったものの4番・阿部を見逃し三振に切って取り、0点に抑えました。9回は松田が登板し、1四球のみの無失点。最後は近藤の飛球を、レフト前まで走ってショートの熊谷がキャッチして試合終了。
しっかり投げられていたと矢野監督
矢野監督の話は藤浪投手からです。「晋太郎は悪送球とか、自分自身が乗り越えていかなアカンものやから、練習して受け入れてやっていくこと。投球自体はそんなに荒れていなかったし、バッターと戦えていたので、よかった。前回(13日、ヤクルトとのオープン戦)を引きずることなく、断ち切って次へいけるかなと思う。1軍のバッター相手になってどうなるかだけど、立ち上がりにちょっと間延びするくらいで、それ以外はしっかり投げられていた」
ついで「桑原はしっかり腕を振れていたので問題なし。ドリスも、すごくいいわけではないけど普通に。準備はしっかりできたんじゃないかな」とリリーフ陣への言葉がありました。また攻撃に関して、打撃面では「若松のところで崩していかないと。ここ(ファーム)でやるためじゃないんだから、ここで投げている相手に抑えられるようではね。積極的に打ちにいって見えてくるものがある。それで前に向かって行けるかなと思う」と矢野監督。
走塁面は「荒木がセンターフライでホームに還ってアウトになったけど、彼なら行ってもいい。坂本も(盗塁死)いいスタートだった。あれでアウトになったら仕方ない。ナゴヤ球場で盗塁を全部アウトにされたけど、それでも向こうは警戒してきていたからね。走らないと思われているヤツでも、1軍に行ったら走ってやろうかなとか、そういう選手になってほしい。チャレンジも必要かなと思う」という話でした。
登板した“1軍投手”のコメント
次に投手陣のコメントです。藤浪晋太郎投手は試合を振り返って「序盤、ちょっと自分の中でバランスがよくなかったが、4回ぐらいから下半身を使えて、いいバランスで投げられた。初回からボール自体はよかったので、全体的にはよかったと思います。ボールはよかったので、4回以降しっかり自分のフォーム、いいバランス、いい感覚で投げられた」と言っています。
「4回以降のいい感覚、いいバランスは初回から出して行かないと。初回からボール自体はよかったけど引っかけたりするのが多くて、タイミングが合わないなーという中で何とか投げていました。ゼロで抑えているのでいいけど、それはやっぱり初回から出せるようにしたい」。修正できたのが一番?「前回それができなかった。ボール自体はいいけど戻せなかったので。それが前回の一番の反省。(今回は)そこがよかった」
リリーフ陣は無失点リレー
桑原謙太朗投手に鳴尾浜は久しぶりですね、と言ったら「いや、ことし1月に」と。それは自主トレ。試合で投げるのは久しぶりでしょう?「そうですかね」。そうですよ。ファームでの登板は2016年9月25日のウエスタン最終戦(対ソフトバンク、タマスタ筑後)以来で、鳴尾浜だと9月21日のオリックス戦以来のこと。だって昨年は開幕からずっと1軍でしたから。
この日の登板について、先頭の野本選手の内野安打は「コースが甘かったのかなと思います。そういうとこ、しっかりしないと」と反省した桑原投手。「先頭を出してピンチを迎えましたが、結果的にゼロで抑えられたので、そこはよかったです。(1軍首脳陣が視察に)来ていたかどうかはわからない。結果を残していくだけ」
24日は連投だそうですね。「先頭を大事に。香田コーチがいつも言っているように、一(いち)を大事にしてやっていきたいと思います」。と言ったあと「ええこと言うた?」と自画自賛の笑いを残し、去っていきました。きょうは京セラドームのオープン戦で予定通り連投して、1四球のみで1回を無失点だったようです。
ドリス投手も連投して、こちらは1失点。きのう23日は久々の登板で「よかったです。普段やっていることだけ、打者に向かって投げるだけです。自分のピッチングをすることを心がけてやりました」と淡々。1週間後に迫った開幕に向けて、という記者の言葉に「ソウデスネ(笑)」と挟みさながら「体調もいいですし、一日一日練習を積み重ね、開幕に向けてやっていきます」という返事でした。
松田遼馬投手に、四球は反省?と尋ねたら「それもありますけど、次のバッターへの入りが反省です」とのこと。
「警戒された中で決める盗塁がいい」
続いて島田海吏選手です。中日の加藤選手には、ナゴヤ球場での教育リーグで2つ盗塁を試みて2つともアウトになりました。23日は1回に刺されたものの6回に成功!でも送球はしなかったので「投げてほしかったねえ」と言ったら「はい!あれは投げていてもセーフだったんじゃないですかねえ」と思い出しながら苦笑い。
1回は牽制を3度されてからの試みで「警戒されている中で走る選手になっていかないといけないので」と島田選手。「失敗してもいいから、牽制をもらっている中でチャレンジしていきたい。ノーマークより、警戒されながら決める方がかっこいいと思います。今はチャレンジ精神で」。きょう24日も1つ刺されたそうですが、いつか必ず盗んでみせる、という負けん気が見えました。
なお6回のライト前ヒットは初球の変化球を打ったもの。「ちょっと当てにいくバッティングをしてしまっていたので、思いきり振りにいって凡打の方がいいという考えで、初球からいけたのは収穫です」
最後は、6回の勝ち越しタイムリーが勝利打点となった北條史也選手。ただし「1、2打席目の内容がちょっと悪かったので…。あの打席は前の打者が連打でつないでくれて、いい流れに乗れたというだけです」という短いコメントでした。早く花粉から逃れられるように祈ります。
<掲載写真は筆者撮影>