ローラさんの辺野古工事阻止10万筆署名賛同こそ、真の保守であり愛国者だ
・ローラさんは真の愛国者である
タレントのローラさん(28歳)が、米ホワイトハウスの請願サイト「WE the PEOPLE」において、辺野古移設工事を止めるよう求める署名活動についてインスタグラム等で賛同の意を示したことが大きな波紋を呼んでいる。
12月21日のデイリー新潮(週刊新潮WEB取材班)では、早速このローラさんの表明を「ローラが左傾化!? 沖縄米軍基地移設に突然「NO」を表明の裏にある“野心”」としてやや批判的な論調で結んでいる。
あるいはネットを概観しても、「ローラは反日になった」「芸能人が左傾的な発言を公にするのは控えるべきでは」などの極論すら見つかる。または、「政治イデオロギーの如何を置いておいても、芸能人が政治問題に介入するのはローラさんにとってマイナスにしかならない」などの意見もある。
しかし、私はローラさんが、辺野古移設工事反対10万筆署名に賛同の意を示したことの、どこが「左傾」「反日」なのか、まったくもって意味が分からない。
沖縄の先祖代々の土地を、米軍から取り戻したい。沖縄の先祖代々の土地に、これ以上米国の軍隊の基地を創って欲しくない―。これこそが保守であり、真の愛国者の姿勢では無いのか。
この観点からすると、ローラさんの意思表明こそが、まさに真なる保守であり、そして正にまっとうなる愛国者の姿勢そのものである。
土台彼女は「左傾」でも「反日」でもなんでもない。「ローラさん、ナショナリズムに目覚めたみたいだけど大丈夫?」というコメントは全然見当たらない。単純に在沖米軍基地反対=反日、左翼という、ネット右翼に古典的にある、ある種の沖縄ヘイトが、通念のように浸潤しているからこそ、ローラさんを「左傾」「反日」と罵るのである。実態はその逆なのにも関わらず。
・銃剣とブルドーザーで強制接収
1945年4月1日、米軍が沖縄に上陸。同年6月23日、日本軍守備隊第32軍は摩文仁洞窟で玉砕し、日本軍の組織的抵抗は終わった(沖縄終戦の日)。
生き残った日本兵や沖縄県民は米軍の管理下に置かれ、収容所生活が始まる。円の流通は停止され、米軍発行の軍票が公式通貨になった。沖縄戦で徹底的に焼き尽くされた沖縄本島は、本土と違い戦後復興を米軍に頼るしか無く、たかだか戦後5~7年程度で戦前の最高水準にまで復興した本土経済と沖縄は、まったく逆の経緯を辿った。
米軍基地の存在を前提とした沖縄経済。米軍発行の軍票は「B円」と呼ばれ、極端なB円高政策によって購買力が高まり、「工業無き復興」を成し遂げたのが戦後沖縄である。
そして米軍基地依存が進むのと時を同じくして、冷戦が深刻化。東アジアのキーストーン(要石)である沖縄は、アメリカにとって格好の軍事拠点となった。こうして、「銃剣とブルドーザー」というアメリカ軍の一方的で無思慮な基地建設が、沖縄県民の意思を無視して進められたのである。そうしてそうした基地から飛び立った爆撃機が、直接ベトナム戦争に於ける北ベトナムに爆弾の雨を降らせた。
このような半植民地的状況に立ち上がったのは、阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)を筆頭とする在沖縄の反基地活動家達であった。いわゆる「島ぐるみ闘争」の勃発である。72年の沖縄返還後、漸次的に在沖縄米軍基地は返還されていったが、いまだ普天間、嘉手納が健在であり、あまつさえ辺野古の海岸を埋め立てて新基地を創るという日本政府の方針に、納得できるという方が、あらゆる世論調査でも少ない。
本来、辺野古移設工事反対10万筆署名というのは、日本政府に対して行なわれるのが筋である。それが、日本政府は民草の意見を踏みにじるので、政府を通り越してアメリカ大統領に直訴しようという運動だ。本当は情けないが、日本政府の沖縄政策が暴虐に満ち、反対の声を黙殺しているのだから仕方が無い。こうするしか方法はないのである。
・怒るポイントが間違っている
ようく考えて欲しい。日本人は戦後、余りにも米軍の存在になれすぎている。普通の国家には、自国軍より強い外国の軍隊が、首都圏に駐留している時点で「国家が占領されている」事とイコールである。しかし何故か彼らはこの厳然たる事実には全く何の関心も無く、中国と韓国の脅威のみを説く。
日本に最大の労苦をもたらしているのは、物的に在日アメリカ軍である。日本には韓国軍や中国軍の軍隊施設はひとつも無い。私たちが声を上げる対象は誰なのか、は言うまでも無くアメリカだ。
なぜか去勢されたオオカミのように、彼らの牙がむくのはアメリカではなく「自分より劣等」ときめつけた中国と韓国も限局されている。――嗚呼、情けない。やはり戦後レジームは、その「脱却」と叫び続けながらもますます現政権下により継続・強化されるのであろうか。