雨雲の見え方と予想に違い 高解像度ナウキャストと降水短時間予報
日々、何気なく見ている雨雲。高解像度ナウキャストと解析雨量・降水短時間予報では雨雲の見え方や予想の方法に違いがある。雨雲をより詳細に、リアルタイムに知りたいならば高解像度ナウキャスト。大雨になる前に避難したいときは解析雨量・降水短時間予報が有効だ。
空梅雨一転、大雨に
梅雨前線の活動が活発になり、沖縄では断続的に強い雨が降りました。沖縄本島の国頭村奥では15日午後2時までの24時間に241ミリを記録し、6月としては観測史上最多となりました。東京でいえば、6月に降る雨量の約1.4倍です。
沖縄県は14日、県渇水対策本部会議を開催し、県民に節水を呼び掛けたばかり。今年の沖縄は2月から雨の少ない状態が続き、梅雨入り後もまとまった雨は降っていませんでした。
雨雲の見え方はこんなに違う
天気予報が雨のとき、空が暗くなってきたとき、決まって雨雲の様子をチェックします。
たとえば、こちらの図を見てみましょう。上図(1)が高解像度ナウキャスト、下図(2)が解析雨量です。どちらも15日午後3時の雨雲を示したものです。日本列島の色味が違うため、少々雰囲気が違って見えますが、そこは目をつぶってください。
上図の高解像度ナウキャストでは雨雲の輪郭や雨の強弱がはっきりしています。一方、下図の解析雨量は全体的に雨雲がぼやけて見え、沖縄付近の雨も高解像度ナウキャストと比べ強さが違います。
なぜ、見え方が違うのでしょう
雨雲の多くが海上など広範囲に広がり、地上に設置された雨量計で、すべてを捉えることはできません。そこで気象レーダを使って、雨量計のすき間を埋めるように、雨雲をキャッチします。これが解析雨量(下図)です。
さらに、上空の風データ(ウィンドプロファイラやラジオゾンデ)を使って、雨雲の内部を立体的に解析したものが高解像度ナウキャスト(上図)です。こちらは250メートル四方の細かさで雨雲を見ることができます。
それぞれ組み合わせるものが違うため、雨雲の見え方に差があるのです。
「一長一短」使い方に工夫を
今の雨雲を知るだけではなく、今後どのように雨雲が動くのか、予測することも重要です。高解像度ナウキャストは5分毎の雨雲予想図を1時間先まで表示します。
1時間先では物足りないと思われる方は解析雨量・降水短時間予報があります。こちらは1時間毎の雨雲予想図を6時間先まで見ることができ、今月20日からは15時間先まで延長されます。
高解像度ナウキャストは、ほぼリアルタイムで雨雲を捉えられる一方で、雨雲の動きを予想できる時間は短い。解析雨量・降水短時間予報は高解像度ナウキャストよりも詳細さは劣るものの、予想できる時間が長く、早めの避難に有効です。一長一短を知って、大雨被害軽減に役立てて欲しいと思います。
【参考資料】
木川誠一郎,2015:高解像度ナウキャストと降水短時間予報の改善,平成26年度予報技術研修テキスト,気象庁予報部,77-93.
蟻坂隼史,2017:降水短時間予報の改善,平成28年度予報技術研修テキスト,気象庁予報部,79-83.
木川誠一郎,2017:高解像度ナウキャストの改善,平成28年度予報技術研修テキスト,気象庁予報部,84-93.
気象庁:雨量分布の予報を15時間先まで延長します,2018年6月14日
沖縄県渇水対策本部:水事情の悪化に伴う節水のご協力について,2018年6月14日