アップル、雑誌や新聞も「定額制」へ 2019年春にも新サービス開始との観測
先ごろ、米アップルが、iPhoneなどのiOS端末で雑誌や新聞の定額制読み放題サービスを立ち上げる計画だと、ブルームバーグが伝えた。
Newsアプリに新サービスを導入
アップルは昨年3月、雑誌の定額制読み放題アプリを手がける米ネクスト・イシュー・メディアを買収すると発表した。
この会社は、「テクスチャー」と呼ぶアプリで、「タイム」や「ピープル」「フォーブス」「ニューズウィーク」「ニューヨーカー」「ナショナルジオグラフィック」「ヴォーグ」など200以上の雑誌が読み放題になるサービスを、月額9.99ドルで提供している。
ブルームバーグによると、アップルは、米国や英国などの国でiOSに標準搭載している「News」アプリを刷新する計画で、これにテクスチャーのサービスを加える。新バージョンのNewsアプリは、2019年春にも登場する可能性があるとブルームバーグは伝えている。
これに伴い、アップルは、ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズといった新聞にもこの新サービスに参画するよう働きかけているという。
アップルは、2014年に米ビーツ・エレクトロニクスを買収し、そのサービス「ビーツ・ミュージック」ベースにした定額制音楽聴き放題サービス「Apple Music」を開発した。同社は、その成功モデルを雑誌や新聞の分野でも展開したい考えという。
- 米国音楽ストリーミングサービスの再生回数推移(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
出版社の懸念払拭を図るアップル
ただ、メディア企業の幹部の中には、「メリットもあるがデメリットの方が大きい」と考える人も少なくないと、ブルームバーグは伝えている。
メディア企業は、自社で定期購読サービスを展開している。アップルの端末で、それと同じサービスが提供されれば、自社サービスから利用者が離れていくと懸念している。
こうした懸念を払拭するため、アップルのインターネットソフトウエア&サービス担当上級バイスプレジデントのエディー・キュー氏率いるチームは、メディアの幹部らに会って、説得を続けているという。
新サービスでは、加入者数の伸びに支えられ、出版社の定期購読サービスを大きく上回る収益が得られると、同社は説明している。
また、アップルはApple Musicの加入者数が今では5000万人以上に増え、同事業が成功を収めていることを強調している。ただ、ブルームバーグは、「雑誌、新聞サービスが、音楽サービスと同様に成功するかどうかが問題だ」とも伝えている。
出版業界を取り巻く現状
ブルームバーグによると、アップルが2010年にiPadの初代機を市場投入した際、メディア企業の幹部らは、新たなデジタルコンテンツの時代が到来したと、大いに喜んだ。しかし、その後、iPadを利用した雑誌、新聞の購読が大流行したとは言い難い状況だ。
にもかかわらず、ネット媒体普及の影響か、印刷媒体の定期購読契約件数は減少の一途をたどっている。また、企業の広告出稿先は、印刷媒体から、グーグルやフェイスブックなどのネット媒体に移っている。こうした出版業界を取り巻く近年の現状が、彼らの対応を慎重にさせているようだ。
「何よりも、メディア企業は、アップルなどのテクノロジー企業のプラットフォームに頼るのではなく、読者と直接つながりたいと考えている」と、ブルームバーグは専門家の見解を伝えている。
- (このコラムは「JBpress」2018年12月14日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)