存続するSMAP、民主化しないジャニーズ――SMAP解散騒動の煮え切らない結末
今後肩身の狭いSMAP
先週13日から生じているSMAP解散騒動ですが、どうやら収束する方向に向かうようです。18日の『SMAP×SMAP』は一部内容を変更し、番組の冒頭でメンバーの5人が以下のように話しました。
メンバーのコメントからは、今日までの報道が大筋で正確だったことを感じさせます。そして、そこからは以下のふたつの結論が見えてきます。
- SMAPは解散しない
- メンバーは全員ジャニーズ事務所に留まる
SMAPの5人がこれからも変わらず活動し続けることとなり、ファンも業界もまずは一安心といったところでしょう。とは言え、今後の懸念が完全に払拭されていないのも確かです。
その懸念とは、今回あらためて明らかとなったジャニーズ事務所およびメリー喜多川副社長の強権的な姿勢です。それは、草なぎ剛がジャニー喜多川氏に謝罪した結果、存続できると述べたことからもうかがえます。SMAPは、ジャニーズ事務所の封建性とともに存続することになったのです。
「SMAPは、ジャニーズのなかで肩身の狭い思いをしている」──元の鞘に収まっても、今後ファンの間で抱かれ続けるのは、このイメージです。
メリー副社長の恫喝
さて、ここで今回の騒動を簡単に整理しておきましょう。
まず、SMAPの育ての親であるチーフマネージャー・飯島三智氏が、今月ジャニーズ事務所を退社することとなりました。その引き金となったのは、昨年1月の『週刊文春』の記事「ジャニーズ女帝メリー喜多川 怒りの独白5時間」だと言われています。
このとき『文春』がメリー喜多川副社長に質問したのは、社内の派閥争いと後継者についてでした。メリー氏の実の娘である藤島ジュリー景子氏と飯島氏に、社内が二分されていると切り込んだのです。
そこでメリー氏は、ジュリー氏が「次期社長」だと明言し、記者の前で飯島氏を呼びつけてこう恫喝しました。
この記事では、メリー副社長が「SMAPは(嵐と比べて)踊れない」とも発言しており、中居正広さんはそれに激怒したという報道もあります。
そして、この記事からちょうど1年後の先週、中居正広、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の4人は飯島氏とともに退社して独立することを企図し、木村拓哉は残留を選択するとスポーツ新聞で報道されました。
それから6日間、連日の報道の末に本日のSMAPの全員残留ということとなりました。一方、飯島氏はジャニーズ事務所を退社し、芸能界から身を引くと報じられています。
結論から言えば、メリー副社長率いるジャニーズ事務所の勝利ということになるでしょう。退社というかたちですが飯島氏の追放に成功し、SMAPも服従させることになったわけですから。
今回の一件でもっとも重視されていたのは、もちろんSMAPの今後です。それは存続というかたちでことなきを得ましたが、そこではさらにもうひとつ期待されていたことがありました。それは、ジャニーズ事務所の“民主化”です。
『週刊文春』が明らかにしたメリー副社長の強権的な態度は、まるでブラック企業のようでした。今回の騒動によって、ジャニーズ事務所のそうした姿勢が改善されるのではないか、という期待もありました。しかし、それは飯島氏追放というかたちで収束してしまったのです。『週刊文春』で公にされたパワー・ハラスメントが、そのまま突き通されてしまったかたちです。
低迷期を支えたSMAP
さまざまに報道されているように、1988年に結成されたSMAPは当初は鳴かず飛ばずの時期を過ごします。それを地道に支えてきたのが、飯島氏だと言われています。それまでのジャニーズのグループにはなかったバラエティ性を強く打ち出し、アイドルの新しい道を切り開いたのです。
同時にジャニーズにとってのSMAPは、低迷しつつあった1990年代前半を支えた存在でした。田原俊彦が退所、光GENJI、男闘呼組、忍者が活動停止するなか、急激に人気を高めていったのがSMAPだったのです。それから現在にいたるまでのジャニーズの躍進において、その経済的基盤をSMAPが構築したのは間違いありません。
ただ、そうしたなかでもSMAPはジャニーズのなかでは異端だったという見方があります。しばしば指摘されるのは、嵐との共演がさほど見られなかったことです。逆に、Kis-My-Ft2とは共演が多く、そこに“派閥”というフレームが生じていました(※)。
『週刊文春』の昨年の報道は、こうしたSMAPの独自路線を支えた飯島氏の存在について、メリー副社長に直接質したものだったのです。飯島氏の存在とSMAPの独立は、ずいぶん前からファンの間では広く囁かれていました。SMAPファンの多くは飯島氏の手腕を高く評価しており、『週刊文春』で見られたメリー副社長による飯島氏の叱責は、そんなファンからは強く非難されていたのです。
ジャニーズの“民主化”
結果的に、飯島氏が離れ、SMAPは軍門にくだることになりましたが、今回の一件で広く知られることになったのは、メリー喜多川副社長の強権的な姿勢と、ジャニーズ事務所の強い封建性です。今後もジャニーズ事務所には大きなマイナスイメージがつきまといます。ファンからの不信感は、そう簡単には収まらないでしょう。
そもそもジャニーズは、ネット上に所属タレントの写真が出ることをいまだに禁じています。Amazonで売られている雑誌の表紙からも、所属タレントの写真がくり抜かれている奇妙な状況も周知の通りです。そんなトンチンカンなことすらもまかり通すズレた芸能プロダクション――それがジャニーズ事務所です。
芸能界では、一般と比べてもかなり特殊な慣行が続いていることは少なくありません。むかし見られたような暴力団の関わりは弱くなったものの、ジャニーズ事務所はブラック企業のようなパワー・ハラスメント行為を週刊誌で平気で開陳するほどにズレています。
今後も必要とされるのは、ジャニーズ事務所の“民主化”にほかなりません。それには、ファンの多くが声を上げることが必要となってきます。実際「世界に一つだけの花」のCDの購入によってSMAP解散を阻止する運動が見られましたし、それは大きな影響力を持ったと思います。しかし、ジャニーズの民主化は達成されませんでした。
また、メリー副社長は89歳、創業者のジャニー喜多川氏は84歳と言われており、ジャニーズ事務所は遠くない未来(おそらく5年以内)にその体制に変化を見せることは間違いありません。このときファンがなにを望むのか、そうしたことにも今後注視する必要があるでしょう。
※……このあたりは、トモコ「ジャニーズ事務所派閥騒動とはなんなのか SMAPファンの立場から」 『WEB SNIPER』2016年1月16日(このサイトは、未成年者が閲覧できないサイトです)を参照のこと。
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