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【確報】9月に実施した円買い・ドル売りの為替介入で、政府が得た為替差益は約1.3兆円

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
9月22日に円買い・ドル売りの為替介入を実施した(写真:ロイター/アフロ)

9月30日、財務省は、8月30日~9月28日にかけての「外国為替平衡操作の実施状況」を発表した。これによると、同時期に実施した為替介入の規模は、2兆8382億円だったという。

9月28日に、拙稿「円買い・ドル売りの円安阻止介入は無駄でなかった!約1.7兆円の為替差益で借金返済」を公表した時点では、当時最新の報道によると、この円買い・ドル売りの為替介入の規模は、約3.6兆円とされていた。これに基づいて、政府がこの為替介入によって得た為替差益は、約1.7兆円と推計していた。

この度、前掲のように財務省から正式に為替介入の規模が、約2.8兆円と示されたことを受けて、筆者が再推計したところ、これによって得た為替差益は約1.3兆円とみられる。この為替差益は、為替介入のために外国為替資金特別会計で負った借金(政府短期証券)の返済に充てられる。

その推計根拠を示そう。

まず、政府・日本銀行は、9月22日に円買い・ドル売りの為替介入を約24年3カ月ぶりに実施したことを明らかにしている。だから、8月30日以降で9月21日以前には為替介入はしていないと考えられる。

また、9月22日以外の日には、為替介入をしたとは明らかにされていない。また、介入が引き起こしうる為替変動は観察されていないとみられる。

そうなれば、8月30日から9月28日の間で9月22日以外に、円買い・ドル売りの為替介入をしたとは、今のところ考えにくい(それが、完全に確定できるのは、財務省が11月1日から8日の間に公表する予定としている、2022年7月~9月における日次ベースの外国為替平衡操作の実施状況である)。

9月22日に為替介入をしたとみられるときの円ドルレートは、1ドル=145円程度だった。このレートで為替介入したと仮定すると、2兆8382億円の円買いは、約195.73億ドル(=2兆8382億円÷145円)のドル売りをした模様である。

では、この約195.73億ドルを、どのように政府は調達していたのか。

それは、拙稿「円買い・ドル売りの円安阻止介入は無駄でなかった!約1.7兆円の為替差益で借金返済」でも言及したように、外国為替資金特別会計がカギを握る。

外国為替資金特別会計の仕組みの詳細については、拙稿「円買い・ドル売りの円安阻止介入は無駄でなかった!約1.7兆円の為替差益で借金返済」に譲るが、過去に実施した円売り・ドル買いの為替介入によって得たドルを、この外国為替資金特別会計が保有し続けていたことによる。その為替介入のために要した円貨は、外国為替資金特別会計で借金(政府短期証券)を負って調達した。

もちろん、過去には何度も円売り・ドル買いの為替介入を行っており、それに要した借金(政府短期証券)は、今や76兆2114億円(2019年度末現在)にも達している。しかもこれは、1年以下の満期で毎年度借り換えに次ぐ借り換えで負い続けている。もし今後短期金利が少しでも上がれば、満期が短く残高が多いだけに利払費はたちまち巨額にのぼる。

こうした経緯を経て円売り・ドル買いの為替介入によって得たドルは、いついくらの円ドルレートで得たものかというと、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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