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3年ぶりの開幕戦チーム1号は、藤谷選手の“プロ1号”!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
公式戦1号=プロ1号ということで『1』を示して笑顔の藤谷洸介選手です。

 阪神タイガースのファームは20日、今季初の公式戦を行いました。鳴尾浜で開幕するのは掛布雅之監督の初年度、2016年以来3年ぶりのこと。その時も今回と同じ中日が相手で、なんと3連敗だったんですよね。ことしは19日が雨天中止で、きのう20日に仕切り直して“開幕”。先発は阪神・秋山拓巳投手、中日・山本拓実投手(“たくみ”同士ですね!)で、両チームともスライド登板でした。

 1軍開幕ローテを狙う秋山投手は5回を投げ4安打無失点ながら、本人にとって課題の残る内容だったようです。打線は活発で、藤谷洸介選手の公式戦初アーチ、江越大賀選手の今季1号、他にも三塁打2、二塁打1を含む計11安打(5回を除く毎回安打)で8得点。なお8回に4点を返した中日は1回を除く毎回の12安打を放っています。

 そして今季も、勝った時のヒーロースピーチは行われるようですね!私も楽しみにしている1人なので、とても嬉しいです。きのう、トップバッターに指名されたのは藤谷選手でした。ごく普通のスピーチで特に面白いことは言っていませんが、のちほど本人の談話とともに書かせていただきます。なお別件で試合中に、よりによって藤谷選手のホームラン直前に現場を離れたため、写真が序盤と試合後のものしかありません。ご了承ください。

《ウエスタン公式戦》3月20日

2019年の開幕オーダーです。
2019年の開幕オーダーです。

阪神-中日 1回戦 (鳴尾浜)

 中日 000 000 040 = 4

 阪神 120 301 01X = 8

◆バッテリー

【阪神】○秋山(1勝)-呂-斎藤-高橋聡-尾仲 / 長坂

【中日】●山本(1敗)(4回)-石田(2回)-三ツ間(1回)-岡田(1回) / 松井雅-A・マルティネス(6回~)

◆本塁打 神:藤谷1号2ラン(山本)、江越1号ソロ(山本)

     中:友永1号3ラン(高橋聡)

◆三塁打 神:陽川、島田

◆二塁打 神:藤谷 中:モヤ

◆盗塁 神:島田(1)

中日の先発は地元・市立西宮高校出身、2年目の山本拓実投手です。
中日の先発は地元・市立西宮高校出身、2年目の山本拓実投手です。

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:江越 (3-1-1 / 1-2 / 0 / 0) .333

2]二:熊谷 (4-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .250

3]右:島田 (4-2-1 / 0-1 / 1 / 0) .500

4]三:陽川 (3-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .333

5]左:板山 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

6]一:山崎 (3-2-0 / 0-1 / 0 / 0) .667

7]指:藤谷 (4-2-2 / 2-0 / 0 / 0) .500

8]捕:長坂 (4-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .500

9]遊:小幡 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

〃遊:森越 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

秋山  5回 66球 (4-4-1 / 0-0 / 0.00) 143

呂   1回 9球 (1-0-0 / 0-0 / 0.00) 141

斎藤  1回 18球 (2-2-0 / 0-0 / 0.00) 150

高橋聡 1回 22球 (4-0-0 / 4-4 /36.00)143

尾仲  1回 14球 (1-1-0 / 0-0 / 0.00) 150

《試合経過》※敬称略

1回1死一、三塁で陽川選手が左犠飛!
1回1死一、三塁で陽川選手が左犠飛!
これで先制。ベンチで迎える平田監督(黒いジャンパー)、新井コーチ(その左)と選手たち。
これで先制。ベンチで迎える平田監督(黒いジャンパー)、新井コーチ(その左)と選手たち。

 まず攻撃から。1回は先頭の江越が四球を選んで1死後に島田の左前打とレフトのエラーで一、三塁となり、陽川が左犠飛を放って先制します。2回は左前打した先頭の山崎を一塁に置き、藤谷がレフトへの2ラン!3回は熊谷の右前打と陽川の右三塁打が出るも、併殺などで無得点。しかし4回に山崎の四球、藤谷の左二塁打で無死二、三塁として長坂が中前へ2点タイムリー!小幡のゴロと盗塁死で2死となったあと江越にも今季1号が出て、この回3点を追加。6対0としました。

 5回は中日2人目の石田に対し、島田が二ゴロ(ファーストの捕球エラー)で出て二盗成功。陽川は四球を選んでいますが得点につながらず。6回は長坂の左前打、小幡はピッチャーの送球エラー、江越の四球などで1死満塁となり、熊谷の三ゴロで長坂が生還。7回は山崎の左前打(暴投で二塁へ)のみ。8回は江越が二ゴロ(これまたファーストの捕球エラー)で出るも盗塁をさされましたが、そのあと熊谷は四球を選んで、続く島田がレフトへのタイムリー三塁打!8点目が入っています。

先発の秋山投手は5回4安打無失点で勝ち投手に。
先発の秋山投手は5回4安打無失点で勝ち投手に。

 次に投手陣です。秋山は1回、7球で三者凡退という立ち上がり。ちなみにこの試合、両チームを通じて三者凡退はこれだけでした。2回は先頭のモヤに左前打、2死後に暴投で二塁へ進め友永への四球で一、二塁としますが無失点。3回も先頭に滝野にセカンド内野安打を許しながら、後続を2三振などで封じています。4回は2死から松井佑に中前打されただけ。5回は先頭の松井雅に右前打されるも、島田から小幡への返球でタッチアウト!あとは山崎の好守備もあり、一ゴロ2つで片づけました。

 6回は呂が2死からモヤにショートへの内野安打を許しただけで無失点。7回の斎藤は松井佑と友永に連打されますが、中飛と三振2つで後続を断って2者残塁。しかし8回に登板した高橋聡が先頭の溝脇に中前打され、1死後にモヤの左翼線二塁打で1点。高松の投ゴロで三塁をアウトにして、代打・石橋の左前打で2死一、二塁となり、ここで友永にライトへ3ランを浴び、この回4点を返されました。

 9回は尾仲。簡単に2死とったあと溝脇の中前打はあったものの、無難に抑えて試合終了です。

それぞれの立場で目指す1軍

両監督と審判団によるメンバー表交換。
両監督と審判団によるメンバー表交換。
中日・根尾選手(左)はこの日、1番で出場。試合開始前に2番の溝脇選手と話しているところ。
中日・根尾選手(左)はこの日、1番で出場。試合開始前に2番の溝脇選手と話しているところ。

 試合後、平田勝男監督は秋山投手について「66球?まあ5イニング投げられたっていうことで順調にね。ちょっと5回は捉えられていたけどな。まあそんなものは。まずまずじゃない?点を取られないだから」と話しています。確かに、2回以降は毎回安打で走者を出しながら抑えました。「要所要所でフォークもちゃんと決まっていたし。スピードも143キロ出たか。きょうはそこまでいい方じゃなかったと思うよ。でもいい時ばっかりじゃないし、悪い中でさすがだよな。ちょっと、きょうはボールが高かった。フォアボールにしてもね」

 次は来週のウエスタン・オリックス戦あたり?「いや~オリックスの時には(1軍の)裏ローテが来るんじゃない?だからどうなるか。優先で秋山を投げさせてくれと言うのか、裏ローテのピッチャーが来るのか、というのはまだ。きょうまでは予定が決まっていたけど、今後は未定」

 一方、打線の方では藤谷選手に2ランが出ました。「見事だよ!ピッチャーをやめて、2ケタになりたいという育成の立場でキャンプからコツコツと。やっぱり初球から振っていこうと、食らいついていこうという姿勢が出ているもん。ホームランのあとのツーベースといい、見事じゃない?あしたも使いたくなるよ。しょうがない、打っちゃったから(笑)」

打つだけでなく、平田監督が評価した1回の江越選手の走塁。三塁へ滑り込んで、このあと犠飛で生還します。
打つだけでなく、平田監督が評価した1回の江越選手の走塁。三塁へ滑り込んで、このあと犠飛で生還します。

 2ケタ安打で開幕した打線について「打つのはもちろんだけど、最初(1回)に江越が走塁で先制のきっかけをつかんだ。(6回は)満塁での7点目、ボテボテのゴロでサードランナーの長坂がホームに還るというところも、しっかり評価できるんじゃないかな。きょうみたいな気持ちでやっていれば、いつチャンスが来るかわからんから。それを続けさせるのが我々の仕事なんでね」

 今後の戦いについて聞かれると「いろんな立場の選手がいるわけで。江越や板山や陽川や島田とか、そのへんは1軍にすぐ呼ばれてもいいよう調子を上げさせて力をつける。(藤谷)洸介や(小幡)竜平みたいな選手もね。まだ竜平なんか体作りも含めてやっているし。ファームってひとくくりじゃないから」と平田監督。

 開幕戦のウイニングボールは手元に?「一応、板山がくれたから。誰か根尾のサインもらってきてくれ(笑)。平田さんへ、って書いて」。一同大爆笑の締めくくりでした。

悪くても無失点、さすが秋山投手

秋山投手の四球や暴投を見たのは本当に久しぶりでした。
秋山投手の四球や暴投を見たのは本当に久しぶりでした。

 秋山投手は「ことし一番よくなかったですけど…開幕戦で、とりあえず試合を作れてよかったと思います」と言い、どういう課題が出たかの問いに「きょうは全体的に、まだちょっと思ったところに投げられていない球が多かったんですけど、バッターの反応はポップフライが多かったので強さはあるのかなと。真っすぐは切り替えて大胆にいこうと思いました。もともとフライピッチャーなので、そのへんは真っすぐが差し込めていたのかな」と答えています。

 次に向けては「もうちょっと自分ペースの投球ができたらいいんですけど、そういう時も続かないと思うので、きょうみたいな状態でも何とかやっていければ」とのこと。とにかく5イニング投げられたのはよかった?「そうですね。問題なく投げられたし、ちょっとイニング感覚が長いかなというのはあったんですけど。まあ5回はちょっとへばっていたかな」

ここまで来たら開幕ローテに入ってほしい気持ちと、焦らなくても活躍はできるからという気持ちが…。
ここまで来たら開幕ローテに入ってほしい気持ちと、焦らなくても活躍はできるからという気持ちが…。

 変化球で空振りが取れていた点も「でもまあ全体的によくなかったんで。高さかコースか、1つだけでもよければいいと思って。自分を窮屈にさせないようには心がけました」と振り返る秋山投手です。ことし安芸キャンプから4試合目の登板でしたが、与死球は初めてのこと。珍しいですね。

 7回に登板した斎藤友貴哉投手はこの日、最初からワインドアップでの投球でした。「ずっとセット(ポジション)だったし、セットの方がいいとは思うけど、大学ではワインドアップでよかったので。どれが合っているのか、いい球がいくのかを試しています」

 連打のあとは連続三振などで無失点だったものの「連打を食らったので、2三振を取っても…きょうはあんな感じだったかなと。先頭にずっといかれていて、先頭を出したら試したいこともできないので、先頭を意識していきたいです」と、ここは課題継続となっています。最後は根尾選手から空振り三振を奪って終了。「スライダーです。いいのを投げられました。自分の思う球を投げられたので、それは1つのプラスかなと思いますね」

プロ1号の記念ボールは「嫁に…」

 お待たせしました。最後に藤谷選手のコメントをご紹介しましょう。

これは1打席目の藤谷選手。ボールを見送って…と思ったらストライクでした。
これは1打席目の藤谷選手。ボールを見送って…と思ったらストライクでした。

 昨年8月31日から野手として練習を始め、公式戦は10試合で6打数1安打1打点(犠飛)という成績でした。しかし非公式戦では9月14日、トヨタ自動車との交流試合で1対1の9回裏に代打出場してサヨナラホームラン!これが“プロ1号”で、ことしは3月7日の近畿大学戦で2ラン、教育リーグ・中日戦でも3ランを放っています。これが通算4本目、今度は正式な記録にしっかり残る公式戦第1号となりました。しかも今季チーム1号ですからね。

 2回無死一塁で迎えた1打席目、ストライク2球のあとファウルとボール2球、さらにファウル3球があって、9球目の115キロの変化球を打っています。「抜けたスライダーかカーブか。カーブにしといてください(笑)。一番甘かったので、1球で仕留められたのはよかったです。それまでもボール臭いところは何とか食らいついていけたし」

 4回には初球を捉えての二塁打も。「次は、真っすぐのストライクゾーンに来たら自分のスイングをしようと思って打席に入りました。今、課題にしている1球で仕留めるということができてよかった」。バッティングがよくなってきた?「最初の頃に比べると自分自身も、よくなっているのかなと思いますけど、3打席目や4打席目のような可能性のない三振があるので、これからいろんな人に聞いて取り組んでいって、一日も早く先輩方についていけるようにやっていきたいです」

 試合後のヒーロースピーチは、まったく予測していなかったとか。映像を確認するとベンチ前でハイタッチをして整列する際、平田監督が「洸介」と担当者に伝えていますね。マイクを渡された藤谷選手は「え、俺?秋山さんちゃうの!」とビックリ。しかし動揺することなくしゃべりました。「ファンの皆さんのおかげで、開幕戦に勝つことができました。また、あしたからも勝ち続けられるよう頑張りますので、応援よろしくおねがいします!」

タイトル画像の『1』ポーズのあと、記念ボールも持って1枚。別のカメラに向いていますけど。
タイトル画像の『1』ポーズのあと、記念ボールも持って1枚。別のカメラに向いていますけど。

 とても真面目で、失礼ながら拍子抜けですよねえ。スタンドからも「次はもっとおもしろいこと言って!」という声が飛んだみたいですよ。ところでホームランボールは?「一応もらいましたけど。嫁に」。あ、奥さんもスタンドでご覧になっていて大喜びだったみたいですね。じゃあボールは奥さんにプレゼント?「嫁に…投げつけてやりますわ(笑)」。なんで投げつけるねん!

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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