コンビニでは1日に何箱たばこが売れているのかをさぐる(下)…利益検証編(2023年公開版)
最近は値上げや健康志向の影響で勢いは落ちているものの、たばこがコンビニにおける主要商品の一つには違いない。大手コンビニの一つであるローソンの統合報告書による公開値から検証したところ、直近では1店舗あたり1日で約253箱が売れ、1日の来店客数663人のうち1割強が、たばこを購入しているとの計算結果が出た(【1日約253箱…コンビニでは1日に何箱たばこが売れているのかをさぐる(上)…概算編】参照のこと)。
この売上はローソン全体の3割近くに該当する。
しかし企業は(業績上においては)売上がアップするだけて良しとするものではない。売上はあくまでも利益を得るためのもの。商品が一つ売れるとどれだけ利益が得られるかはもちろん決算短信上などでは非公開だが、JTのIR資料によれば、JT販売のたばこに関しては、たばこの販売店におけるマージン(販売手数料)は販売価格の10%であることが確認されている。
そしてローソン(単体ではなくグループ全体)に限れば商品区分別の粗利益は、通常商品は3割から5割が平均的な値。他社コンビニでも大きな違いは無いだろう。
この状況は何を意味するか。「同じ売上でも、たばこは他の商品の1/3から1/5しか利益が得られない」、言い換えれば「たばこは儲かりにくい」との事実が浮かび上がってくる。例えば、400円のお弁当(利益率30%)を売れば120円の儲け(400×0.3)だが、同じ額面の400円のたばこを売っても40円しか儲からない(400×0.1)。同じ手間がかかるのなら、採算性が1/3に減少したことに他ならない。無論、廃棄期間をはじめとした管理や占有体積などの諸要素による勘案は必要だが。
粗利益率の観点で商品を見直すと、レジ横・レジ前の甘味系食品やフライヤーアイテムと呼ばれる揚げ物、そしておでん、中華まんなどは非常に粗利益率が高い。コンビニがレジ横・レジ前商品に力を入れているのも、中食需要が伸びたのが主要因だが、粗利益率の低いたばこ購入者にも、必ず通るレジ横にこれらの商品を配置して「ついで買い」させるとの思惑が一因、と考えた方が自然である。
たばこのセールスはマイナスへのトレンドの中にある。加熱式たばこの盛況ぶりで一時的に持ち直しを示しているが、今後売上が伸びるとは考え難い。たばこが売上の観点で、そして集客アイテムとしても大きな存在だったコンビニにとっては、無視できない状況には違いない。
コンビニ各社がたばこに代わる主力選手(例えばオリジナルスイーツ、プリペイドカード、カウンターコーヒー、高付加価値のプライベートブランド、健康志向の強い独自食品)を急ぎ育成中なのも十分理解ができる。多様な総菜の積極的な展開も、通年販売が可能で集客力が強い特徴に気がつけば、容易に納得できる。
今後コンビニにおけるたばこの立ち位置は少しずつ、そして確実に変化していくに違いない。
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