H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗 2段着火ならず機体を指令破壊
2023年3月7日午前10時37分55秒に打ち上げられた日本の新型基幹ロケットH3試験機1号機は、第2段エンジンへの着火が確認されなかった。打ち上げミッションを達成する見込みがないため、機体へ指令破壊信号が送信された。ロケット機体、搭載された先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」はともに失われた。
【3月7日 11:00】
種子島宇宙センターでの打ち上げは当初は順調に進み、気象条件も適した中でH3試験機1号機は離床から順調に飛行していったように見えた。リフトオフから7~8分後、「2段着火が確認されず、状況を確認中」とのアナウンスがあった。その後10:50分すぎ、「打ち上げミッションを達成する見込みがないため、機体へ指令破壊信号を送信」とのアナウンスがあり、H3試験機1号機の打ち上げは失敗したことが明らかになった。指令破壊信号の送信は10時52分ごろとの発表。
【3月7日 13:00】
現時点でJAXAから情報の更新はない。
H3試験機1号機の飛行計画では、10時37分の打ち上げ後はいったん東へ、続いて南方へ飛行する予定だった。主要な飛行中のイベントのうち、達成されたとみなされるのはリフトオフから303秒後(約5分後)の「第1段・第2段分離」まで。その後は第2段エンジンに着火していないとすれば、「第2段エンジン第1回推力立上り(SELI1)」は起きていないことになる。第2段は飛行できなかったことから、第1段とほぼ同じ海域(フィリピンの東方沖、約12万平方kmのエリア)に落下していると考えられる。
【3月7日18:00】
3月7日午後2時すぎから、現在の状況についてJAXAより記者会見が開催された。H3プロジェクトチームの岡田匡史プロジェクトマネージャは、今回のH3の飛行中断と続く機体の破壊について、「第2段のLE-5B-3エンジンに点火しないという事象はセンサーのエラーではなく実際にあった事象」と説明した。
原因究明の情況については、「まだデータをくまなく見ておらず、時間順に並べる作業をしている。網をかけようとしている部分は、ロケット機体の電気、電子搭載機器とエンジン側でそれを受ける部分。そこをつぶさに見る必要があると思っている。エンジニアたちはしゃかりきになって議論を進めているが、まだ検討がつかない。LE-5B-3はこれまでの上段エンジンと根本的な違いがあるわけではない。ただし、全体の信号の系統をあたらないといけない。『これが臭い』はまだないが、決めつけると本当のことが見えなくなる」(岡田PM)とし、緊張感を持って原因究明を進めているものの、データ整理の段階であり何かを判断できる状態ではないとした。一方、衛星を失った「だいち3号(ALOS-3)」のチームに対しては「管制センターで3つ先の席にいるALOS-3の匂坂プロジェクトマネージャのところへ、すぐには行くことができなかった。匂坂プロマネも相当ショックを受けられていたが『起きたことなので仕方ない』という返事をもらった。ALOS-3の関係者に本当に申し訳ない。」と厳しい報告を行った際の情況について語った。
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