【なぜ仮面ライダーは神を超えたのか?】刑事が変身する仮面ライダーG3の戦いとその熱き魂とは?
みなさま、こんにちは!文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
ゴールデンウイークも終わりましたが、みなさまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「警察」です。
広辞苑によると「警察」とは、「国民の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防・捜査、社会秩序の維持を目的とする行政。またその組織。」と定義されています。
交通整理をしたり、悪い人を捕まえたりと、国民の生活と社会の秩序を守るために活動されている方々というイメージが強い方も多いと思います。
私もお仕事で見知らぬ地域へ向かうことも多々あるのですが、その際に道がわからないときは、交番でお巡りさんに道を尋ねることもよくあります。それ故、警察の方々には日々感謝しかありません。
そんな「警察」ですが、悪い人を捕まえたり、人々の暮らしを守ったりと、「正義の味方」を彷彿とさせる印象の強さから、我が国が世界に誇る「特撮ヒーロー番組」でも、普遍的に使用されてきたモチーフでもあります。
そんな数ある「警察」モチーフの特撮ヒーロー番組の中でも、今回焦点を当てるのは東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダーアギト(2001)』。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第2作でした。
そんな『仮面ライダーアギト(2001)』には、3人の仮面ライダーが登場しますが、主人公である仮面ライダーアギトと共に活躍したのが、警視庁が開発した仮面ライダーである仮面ライダーG3。
仮面ライダーG3は先述しましたとおり、警視庁が開発した仮面ライダー。
よってこれまでの仮面ライダー達のような、悪の秘密結社がつくった「改造人間」ではありません。ショッカーのような反社会的な勢力ではなく、社会秩序を守る行政機関出身の仮面ライダーでした。
つまりこの仮面ライダーの正体は、警察の人間。何の超人的な力のない「ただの人間」が仮面ライダーとなって、人を襲う怪人達と全力で戦ったのです。
今回はこの仮面ライダーG3に焦点を当てながら、特別な力を持たずとも人々を守り抜いた彼の大活躍を、少し紐解いていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【時代をゼロからはじめよう】生まれ変わった仮面ライダーシリーズ!新ヒーロー像を確立した平成仮面ライダーの魅力とは?
さて、ここからは仮面ライダーG3のお話に入る前に・・・少しだけ、仮面ライダーシリーズについてご紹介をさせてください。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
そして時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、これまでの仮面ライダーシリーズにおいて構築された「お約束の破壊」でした。
つまり「仮面ライダー=改造人間」、「仮面ライダー対悪の秘密結社」、「奇声を放つ戦闘員の集団と、それを率いる悪の怪人」といった、昭和の仮面ライダーシリーズで定着していた概念、いわば「お約束」を破壊し、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。
『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語が描かれました。
上述した『仮面ライダークウガ(2000)』は、徹底した現実志向的な作風で物語が展開されました。仮面ライダーや怪人という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃されたのです。
怪人を倒すのはもちろん主人公である仮面ライダークウガですが、彼と共に戦ったのは「警察」でした。怪人が殺人や事故等の事件を起こせば、警察が出動して怪人と戦闘あるいは捜査を行い、最終的に仮面ライダーが活躍して怪人を倒して解決・・・という展開が描かれました。
実際、警察も仮面ライダークウガが登場して暫くは、彼を「未確認生命体」と呼称して怪人達と同格の警戒対象(未確認生命体第4号)と認識しており、時に仮面ライダーに向けて銃を向けることさえありました。
そんな『仮面ライダークウガ(2000)』を語る上で欠かせない「警察」ですが、その次回作『仮面ライダーアギト(2001)』において大きな飛躍を見せることになります。
これまで仮面ライダーのように対等に怪人と戦えなかった警察に、強力な新戦力が導入されたことで、怪人達と互角に戦えるようになったのです。
そんな警察による対怪人戦力として登場したのが、仮面ライダーG3。
次章からは、『仮面ライダーアギト(2001)』における彼の活躍を概説していきたいと思います。
【・・・ただの人間だ!】その男、超人にあらず!強い正義感で人類の創造主と戦った仮面ライダーG3、氷川誠とは何者か?
前章で述べた『仮面ライダークウガ(2000)』の後を継承し、平成仮面ライダーシリーズの第2作として放送されたのが『仮面ライダーアギト(2001)』でした。
『仮面ライダーアギト(2001)』は、人類が次なる姿である「アギト」へと進化を遂げようとしていた現代を舞台に、その進化を快く思わない人類の創造主が送り込む怪人から人々を守るため、3人の仮面ライダー達が対立・共闘を繰り返しながら人類の進化と繁栄を守る物語。
「なんか、複雑な話だね・・・」と思われるかもしれませんが、ざっくり概説すると下記が物語の流れです。
本作に登場する悪の根源は、謎の青年の姿をした「人類の創造主(闇の力)」、すなわち「神様」でした。神様は人類をまるでペットのように愛しすぎて、かわいい人類のままでいてほしい。しかし人類は次なる進化の段階に突入しており、ひとりひとりが新たな人類の姿である「アギト」になる可能性を秘めていた。よって神様は「アギト」になる可能性のある者を、配下である怪人達を使ってひとり、またひとりと殺害していく。
しかし、本作の主人公である仮面ライダーアギトと、彼と共闘する2人の仮面ライダー(仮面ライダーG3、仮面ライダーギルス)から成る3人の仮面ライダーは、進化へと進んでいく人類の未来を守るために怪人と戦い、最後には神様に勝利する・・・というのが、大まかな本作の流れです。
先述した『仮面ライダーアギト(2001)』には3人の仮面ライダーが登場します。はじめに、仮面ライダーの力を手にした記憶喪失の主人公・仮面ライダーアギト。2人目が、警視庁の人間が特殊なスーツを着て戦う仮面ライダーG3。3人目が、望まず仮面ライダーとなった仮面ライダーギルス。この3者を中心に、物語が展開されました(後に4人目の仮面ライダー、アナザーアギトが加わるが、最終回を迎える前に死亡)。
仮面ライダーに「なった者」であるアギト、仮面ライダーに「なろうとする者」であるG3、仮面ライダーに「なってしまった者」であるギルス、以上3者の視点から物語が描かれていたのです。
そんな仮面ライダーに「なろうとする者」であったのが、仮面ライダーG3。
未知なる怪人の出現から人々を守るために、警視庁の未確認生命体対策本部が製作した強化装甲服(G3システム)を人間が「着用」することで活躍する仮面ライダーでした。
つまり、彼はこれまでの仮面ライダーのように、主人公がポーズを決めて「変身!」のかけ声と共にパッと変わるような存在ではありません。「変身」というよりも、その実態は「装着」であると言っても差し支えないと思います。
そんなG3システムを着用して、仮面ライダーG3として戦うのが、氷川誠(演:要潤)。彼は警視庁に所属する警部補で、G3システムの装着員として活躍することになります。
怪人が出現して事件を起こせば、氷川警部補はトレーラーに乗り込んでG3システムを着用します(マスクをはじめとする全てのパーツは一人で着用できないため、補佐が必要)。
警視庁が用意したバイク(ガードチェイサー)に乗り込み(これも一人で発進できず、補助が必要)、トレーラーから発進。戦闘において使用するのは、銃や振動ソードといった近代装備で、他の仮面ライダーのように「ライダーキック」をはじめとする超人的な能力は持ち合わせていませんでした。
それ故、主人公である仮面ライダーアギトと比べて、怪人に対する戦績は芳しくなかった上、他の仮面ライダーとの対立に陥った際に破壊される憂い目に遭う等、当初は「弱い」仮面ライダーだったのです。
「人智を越えた存在に対して、近代装備で戦うんだから仕方ないでしょ?」
・・・と言われますと、確かにその通りだと思います。しかし、G3は修復に修復を重ねながら性能が向上し、物語の進行につれて次第に強くなっていきます。怪人を撃破できるようになる等、超人であるアギトに負けず劣らずの活躍を見せていくようになりました。
これはG3の機能面での向上はもちろんですが、装着者である氷川誠自身の「強さ」でもありました。彼自身は生真面目で正義感が強く、海難事故において複数の乗客をたったひとりで無事救助する等、その精神力もかなりのもの。
・・・とはいえ、そんな責任感が強い彼も完璧超人ではありませんでした。自分はG3の装着者として相応しいのか苦悩するだけでなく、不器用かつ抜けたところもあったのです。ムキになって意地を張った結果、物を壊したり、豆腐を綺麗にとれずテーブルを水浸しにしてしまったほか、他人(しかも仮面ライダーアギトこと津上翔一)と比べられて悔しがり、必死に翔一くんの粗探しをしたりと非常に「人間臭い」部分も持ち合わせていました(※その粗探しというのが、翔一くんのバイク免許不所持疑惑という、仮面ライダーを名乗る上で死活問題的なテーマ)。
ここまで上述してきたように、氷川は決して完璧超人ではありません。しかしその熱い正義感と人間臭さのギャップを持ち合わせているからこそ、彼を応援したくなる。それが氷川誠(仮面ライダーG3)の魅力なのだと思います。
そんなG3ですが、彼のこれまでの活動データをもとに後継機となる新たなスーツ(G3-X)が製作され、氷川は当スーツの装着者として抜擢されますが、彼を待っていたのはさらに激しさを増す戦いの日々でした。
まず、氷川が着用するG3-Xのスーツは性能上の欠陥がありました。G3-Xに搭載された高度なAI機能が仇となり、氷川にかつてない肉体的負担が強いられてしまったほか、悪戯心でG3-Xに銃を向けた他の刑事(強化服着用)に対して暴走し、完膚なきまでに叩きのめしてしまったりと、システム上の危うさも秘めていたのです(後に改良)。
さらにG3の後継機を想定されつつも、装着員へのすさまじい負担から封印されていた仮面ライダーG4のデータが自衛隊に流出し、暴走したG4とG3-Xは激しい戦闘を繰り広げることになるなど、次々に苦難が氷川を襲いました。
しかし氷川はそれでも、人々を脅かす様々な脅威と戦い続けました。
そして『仮面ライダーアギト』の物語は終着点を迎え、これまで怪人を送り込んできた人類の創造主、「闇の力」との最終決戦に、G3-Xをはじめ3人の仮面ライダー達は挑みます。
G3-Xが力を振り絞り懸命に戦う姿に、「闇の力」が使役する怪人は問います。
「おまえはアギトではない。なぜこれほどの力を・・・?何者なんだお前は?」(怪人:地のエル)
「・・・ただの、人間だ!」(氷川誠:仮面ライダーG3-X)
3人の仮面ライダー達の活躍により「闇の力」は撃退され、平和が戻ります。
氷川は仮面ライダーG3としての戦いを終え、刑事としての職務に復帰するのでした。
ここまで上述してきた『仮面ライダーアギト(2001)』の物語には、3人の仮面ライダーが登場します。その中でも仮面ライダーG3(氷川誠)は、超人的な力を持つ他の2人の「仮面ライダー」と異なり、特殊な力を持ってもいなければ、改造人間でもありません。
そんな「仮面ライダー」になりきれない氷川の力を補ったのは、現代技術の粋により製作された特殊なスーツ。それをわざわざ「装着」して戦うというのは、見方によっては、「仮面ライダー」と呼べないのでは?という意見もあるかもしれません。
しかし、未知なる脅威から人々の命を身を挺して守り、神様に反旗を翻して人類を守り抜いた彼の熱き姿は、「仮面ライダー」と呼ぶ以外他ならなかったと思います。
だからこそ、彼は「仮面ライダーG3」なのです。
『仮面ライダーアギト(2001)』の放送終了から、早20年以上の月日が流れました。しかし、「ただの人間」であった氷川の活躍は、『アギト』と共に人生を歩んできた人達の心に、いつまでも輝き続けることでしょう。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.2 仮面ライダーアギト』、講談社
・『小野浩一郎(エープロダクション)、『決定版 オール仮面ライダー&全怪人超百科 平成編』、講談社