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参議院選挙投票日の天気はズバリ…

饒村曜気象予報士
選挙ポスター掲示板(写真:アフロ)

梅雨の選挙

 梅雨がないとされる北海道と、梅雨が明けた沖縄を除いて、曇りや雨の梅雨空の中、参議院選挙が行われています。

 先週の10日間予報では、多くの地点で雨の日が連続するというものもありましたが、最新の予報では、「雨の日が連続する」から、「雨の日が多い」に変わってきました(図1)。

図1 各地の10日間予報
図1 各地の10日間予報

 奄美では、梅雨明けの平年日を2週間ほど遅れているのに、まだ梅雨明けをしていません。

 梅雨入りが記録的に遅かった西日本は、そろそろ平年の梅雨明けの頃ですが、予報から、平年より遅い梅雨明けになりそうです。

 東日本や東北の梅雨明けは、もう少し先ですので、平年でも梅雨期間中です(表)。

表 令和元年の梅雨明け
表 令和元年の梅雨明け

 参議院選挙で気になるのは、投票が行われる7月21日(日)の天気です。

 近年、期日前投票をする有権者が増え、投票日の天気と投票率との関係がはっきりしなくなってきたと言われてはいますが、天気により投票率が変わり、その結果として、選挙結果が変わると言われているからです。

投票日の天気

 参議院の選挙が行われる7月21日の各地の天気予報です(図2)。

図2 各地の7月21日の天気予報
図2 各地の7月21日の天気予報

 図2から、北海道は概ね晴れ、それも、天気確率を見てもわかるように、雨の確率が小さいことから、降水の有無の信頼度は、札幌では信頼度の5段階評価で一番高いA、旭川は2番目に高いB、釧路は3番目に高い(真ん中)のCです。

 また、名古屋は、比較的雨の可能性が高いということで、降水の有無の信頼度はCです。

 かなり先の予報なので、図2に記載した北海道の3地点と名古屋以外の地点でいえば、降水の有無の信頼度が、5段階評価で一番低いEか、その上のDです。

 信頼度が低いのですが、参議院選挙の投票日の天気は、ズバリ、次のように言えそうです。 

投票日は、北海道では概ね晴れるものの、そのほかの地方では黒雲(雨の可能性がある曇り)か雨で、四国では雷の可能性もある。

低気圧による雨がなければといわれたイギリスの国民投票

 混乱が続いているイギリスのEU離脱問題ですが、出発点は、3年前の平成28年(2016年)6月23日に行われた「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」です。

 その国民投票の結果、EU残留が48.11パーセント、EU離脱が51.89パーセントと、接戦でしたが、EU離脱が多数派となりました。

 このときに言われたのが、国民投票の日に、低気圧による雨がなければ投票率は高くなり、選挙結果は違っていたということでした。

 平成28年(2016年)6月23日のイギリスの天気は、曇りの所が多かったのですが、ロンドンなど大都市が多く、南部にあるイングランドやウェールズは雨でした。

 これは、発達した低気圧がフランス北部を東進したことによる雨で、低気圧から遠い北部にあるスコットランドや北アイルランドは曇りでした(図3)。

図3 平成28年(2016年)6月23日の昼頃の地上天気図(図中Aは24時間前の位置)
図3 平成28年(2016年)6月23日の昼頃の地上天気図(図中Aは24時間前の位置)

 国民投票前のイギリスメディアによると、65歳以上の高齢者は6割が離脱・4割が残留であったのに対し、18~24歳は3割が離脱・7割が残留など、年齢が低いほど残留が優勢でした。そして、「関心の高さから投票率は8割を超え、残留が優勢」というものでした。

 しかし、実際の投票率は72.21パーセントと8割には届きませんでした。

 離脱派の多い北部では投票率が延びたものの、残留派が多い南部での投票率が延びなかったためです。

 また、事前の世論調査で劣勢を伝えられた離脱派の高齢者が雨でも投票に行ったのに対し、優勢を伝えられた残留派の若者が雨で棄権したなどという分析があります。

 計算上ですが、もし、投票率が8割にあがり、あがった投票の75%が残留ということであれば、結果は逆転していました。

 国民投票結果はイギリスでのことであり、論評する立場にはありませんし、その力もありませんが、「天気に左右された」と言われたことは、事実関係はともあれ、選挙制度のお手本の国として残念に思います。

 参議院選挙も結果が民意です。

 投票日が近づくにつれ予報精度があがりますので、最新の予報を入手し、期日前投票なども選択肢にして、「天気が投票結果に影響した」と言われないように、投票をお願いします。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁資料より著者作成。

表の出典:気象庁ホームページより。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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