佐川 元財務省理財局長を証人申請 「文書廃棄 共謀したか?」
8日に報じた通り、森友学園への国有地安値売却をめぐり、国会で「交渉記録はない」との答弁を繰り返した元財務省理財局長の佐川宣壽氏について、法廷での証言を求める証人申請が、きょう9日、大阪地方裁判所に提出された。佐川氏は国税庁長官を退官した後は公の場に姿を見せておらず、法廷での証言が実現すれば初めてのことになる。
公文書隠しの真相解明に佐川氏の証言求める
証人申請を求めたのは、神戸学院大学の上脇博之教授と、大阪の阪口徳雄弁護士を中心とする弁護団。上脇教授は2年前、国有地の森友学園への値引き売却の交渉記録を開示しない財務省近畿財務局の対応は不当だとして、情報公開を求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。財務省は公文書の改ざんが発覚して世論の批判が高まる中、今年になってようやく面談、交渉記録を開示した。しかし、2年前はなぜ開示しなかったのかの説明はない。
そこで原告側は、財務省が正当な理由もなく2年近くも情報開示を遅らせたのは違法だとして、国家賠償法に基づき1100万円の損害賠償を求めると、訴えの内容を変更した。そして、その事実を解明するために欠かせない人物として、佐川元理財局長を証人として申請した。
佐川氏にどんな説明を求めるか?
佐川氏は財務省理財局長だった2017年2月24日、衆議院予算委員会で「確認したところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした」と答弁している。しかし実際には記録があったことを財務省自身が認めている。そこで原告側は証人尋問で佐川氏に、「この時に存在しないと、誰と会って、どのように確認したのか?」説明を求めることにしている。
その後、国有地の売買契約に至るまでの財務局と学園側の交渉記録を国会に出さないことで、理財局総務課長だった中村稔氏らと共謀したことはあったかも尋ねる。
さらに、上脇教授が情報公開を請求した同年3月2日の時点で存在していた文書を廃棄するよう中村総務課長(当時)らと共謀した事実があるかも確認する。
そして、改ざんに関わらされて自ら命を絶った近畿財務局の職員について、亡くなった理由を聞いているか、ただすことにしている。
原告弁護団の阪口徳雄弁護士は語る。「国会で虚偽答弁を繰り返したのは、文書を公にすれば安倍首相に矛先が向かうと恐れたからだろう。その真相を解明するには、佐川氏本人を証人として呼ぶしかない。法廷でウソをついたら偽証罪になる。裁判所にはぜひ証人申請を認めてもらいたい」
再捜査による起訴で刑事裁判でも真相解明を
佐川氏は、公文書改ざんに関与したほかの職員らとともに公文書変造、公用文書毀棄(きき)などの罪で告発された。大阪地検特捜部は去年、佐川氏を含む全員を不起訴として罪に問わなかったが、検察審査会は今年3月、佐川氏らを起訴しないのはおかしいと「不起訴不当」の議決を行った。大阪地検特捜部は再捜査をしている。
これを受けて弁護士や研究者の有志が5月、大阪地検特捜部に厳正捜査を申し入れた。起訴されれば刑事裁判の法廷ですべての証拠が明らかになり、真相解明が進む。これについて阪口弁護士は次のように語っている。
・再捜査の結論が出るまでに国民世論から「特捜部、頑張って起訴せよ」という声が上がるかどうかが分かれ目です。ぜひ特捜部に対し「ちゃんと再捜査して起訴せよ」という声を上げてください。
佐川氏の証人尋問は実現するか?
佐川氏は理財局長の後、国税庁長官という要職についたが、公文書改ざんが発覚した直後に事実上更迭された。その後は一切公の場に出ていない。
しかし、この事件の最大の被害者と言える、亡くなった近畿財務局の職員は、改ざんについて「もとはすべて佐川理財局長(当時)の指示だ」と記している。その責任を明らかにするため、佐川氏にはぜひ法廷で真相を語ってほしい。
そのためには、裁判所が佐川氏についての証人申請を認める必要がある。大阪地裁第7民事部の判断が注目される。
【執筆・相澤冬樹】