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コロナ入国拒否、「なぜイタリアは?」の蓮舫発言に違和感。根本認識が間違っている

山田順作家、ジャーナリスト
いったいなんのために政府を追及しているのか?(写真:つのだよしお/アフロ)

 今日(3月9日)、国会で、立憲民主党の蓮舫氏は、安倍晋三首相に「なぜイタリアも入国制限をしないのか」という主旨の発言をし、政府の姿勢を問いただした。

 韓国に入国制限の措置をとった以上、同じように感染者が激増しているイタリアに対しても同様の措置をとらないのかと言うのだ。これに対して、安倍首相は、韓国への措置は「外務省とも相談したうえで判断した」と説明。さらに「イタリアを対象とすべきか議論を行っているところだが、必要であれば躊躇なく判断したい」と述べた。

 そこで言いたいのは、蓮舫氏も安倍首相も現状に対する認識が根本的に間違っているということだ。なぜなら、2人の発言の背景には、「韓国やイタリアに比べて日本は感染者数が少ない」=「日本のほうが安全だ」という認識があるからだ。だから、入国制限をすれば、国内感染の拡大は防げる。こう考えているのだろう。

 しかし、この認識にはなんの根拠もない。つまり、認識そのものが間違っている。

 私は、これまで、何度も、日本は一刻も早く、日本人の海外渡航を禁止せよと訴えてきた。それは、日本がすでに「感染大国」になった以上、日本人が海外に行くことは、「ウイルスをバラまいている」と思われかねないからだ。日本人が「ウイルスの運び屋」となってしまう。

 つまり、相手国からの渡航を制限・拒否する前に、こちらがその逆を実行しなければならない。そうしなければ、相手国に多大な迷惑をかける。

 中国は、1月25日の時点で、国民の海外団体旅行を禁止した。情報統制をし、国民の自由を奪っている中国政府をいくら非難してもかまわないが、中国が早期にとったこの措置だけは評価すべきだ。それによって、海外にウイルスが広まるのをある程度は防止できたからだ。それなのに、日本は、先日まで、中国に対して渡航制限・拒否の措置をとらなかった。

 しかし、いまや、日本と中国は立場が逆転している。日本がいましなければならないのは、自国民の海外渡航の自粛・禁止だ。

 日本のほうが安全だという認識には、日本のほうが感染者数が少ないという数字のトリックがある。日本の場合は、数字そのものは間違ってはいないが、検査数が圧倒的に少ない。無症状の人は、保険適用されたというのに、いまだに検査対象になっていない。つまり、感染者数が少ないのではなく、「確認されている感染者数」が少ないだけだ。よって、「確認されていない感染者数」がどれだけいるかはわからない。

 感染を広げるのは、「確認されていない感染者」の可能性も十分にある。つまり、「確認されている感染者数」を比べることにほとんど意味はない。 

 すでに、イタリアでは北部諸州を閉鎖し、人の動きを止めた。いまだに、日本は国内移動も自由だし、海外渡航に制限もかけていない。これを続けていたら、日本の信用は地に落ち、日本人の安全も守れない。

 蓮舫氏も安倍首相も、根本認識を改めてほしい。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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