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スーダン難民からNBA選手へ~レイカーズの背番号35に注目だ!

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズンもロスアンジェルス・レイカーズは苦戦を強いられている。"KING"レブロン・ジェームスを擁しながら、プレイオフ出場を逃した昨シーズン。今季は顔ぶれも変わり新たなスタートを切ったかに見えたが、レブロンが左内転筋の張りのため欠場を余儀なくされ、目下9勝12敗で、西地区15チーム中12位と低迷に喘ぐ。

撮影:筆者
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 ただ、背番号35のウェイン・ガブリエルがこの名門チームと本契約を結び、プレー時間を延ばしている点が見逃せない。現在25歳のガブリエルは、身長206cm、体重93kgのパワーフォワードで、八村類の同期だ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 スーダン生まれのガブリエルは母国の内戦から逃れるため、誕生から2週間後にエジプトに渡った。およそ2年後に国連による難民支援として、ガブリエル家はマンチェスターを経由して米国ニューハンプシャー州に逃れる。後のNBA選手は10歳でバスケットボールと出会った。

 ケンタッキー大で活躍後の2018年、アーリーエントリーでNBA入りを狙うが、どのチームもガブリエルを指名しなかった。同年のサマーリーグで存在感を見せ、サクラメント・キングスとの2Way契約を得る。

 その後、ポートランド・トレイルブレイザーズに移籍。2020-2021シーズンはニューオーリンズ・ペリカンズの選手として21試合に出場した。とはいえNBAには残れず、昨季の開幕は下部組織であるGリーグで迎えた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2021年12月21日に10日間契約をブルックリン・ネッツと結び、NBA復活を果たす。同契約終了後には、ロスアンジェルス・クリッパーズとの10日間契約を2度締結した。

 コロナが蔓延する前、記者が試合前後にロッカールームでインタビュー出来た頃のポートランド時代に何度か言葉を交わしたが、苦労人だけに礼節を弁えた男だった。

 そのガブリエルは2022年3月1日にレイカーズと2Way契約し、4月8日には本契約で晴れて名門の一員となった。

撮影:筆者
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 今季は今のところ全試合に出場中だ。133-129でミルウォーキー・バックスを下した現地時間12月2日のゲームでも14分22秒プレーし、6リバウンド、5得点、1アシストをマーク。"KING"レブロンから学ぶこと、吸収することは無限にあるだろう。

 ガブリエルは、スーダンの希望でもある。彼の活躍を期待したい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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