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有望株・長谷川宙輝に見た、ホークス3軍制の意義とは

田尻耕太郎スポーツライター
5回まではノーヒット投球だった(筆者撮影)

 9月4日、福岡ソフトバンクホークスの3軍は四国アイランドリーグとの定期交流戦で香川オリーブガイナーズと対戦した。

【9月4日 定期交流戦 タマスタ筑後 220人】

香川     000001000 1

ソフトバンク 100000000 1

<バッテリー>

【OG】秀伍、原田――三好

【H】長谷川宙、児玉、齋藤――堀内

<本塁打>

なし

<戦評>

 両チームの投手が好投して引き分けた。ソフトバンクは初回に4番・大本の適時二塁打で先制。しかし、6回に追いつかれた。先発の長谷川宙は5回まで無安打投球だったが、先頭打者の失策出塁の後に初ヒットを許すと、1死二、三塁とピンチが広がり1番・白方に同点右前打を浴びた。

 勝ち越したいソフトバンクだったが、7回以降打線は無安打に終わり同点のまま9回を戦い終えた。その中でも3番で出場した増田は2二塁打、2死球で全打席出塁した。

 5日もタマスタ筑後で同カードが18時開始で予定されている。(了)

長谷川宙輝「フォームを一から見直した」

 先発の長谷川宙輝が好投を続けている。8月10日の日体大戦(帯広の森)は6回1安打8奪三振無失点。同25日の高知戦も7回2安打12奪三振無失点と2戦連続零封を見せて、この香川戦に臨んだ。

「立ち上がりは力んでいた」と言いながら、この日もまるで危なげないマウンドだった。5回まで許した走者は味方失策の1人のみ。4者連続を含む6つの三振も数えた。6回、先頭を味方失策で出塁を許して、続く打者に初安打を浴びた。その後同点タイムリーを打たれたが、「以前はピンチでどうしようと不安になったけど、今は前向きな気持ちで投げられている」となおも1死満塁を併殺打で切り抜けて勝ち越しは許さなかった。

 7回102球で2安打9奪三振1失点(自責0)。

「以前ほど球速は出ていないけど、今取り組んでいるのはソレじゃない。テーマにしていることが出来ました」

開幕前は1軍で登板も、シーズンで苦しむ

 2年目の今季は期待の有望株として、育成枠ながらA組キャンプに参加。1軍のオープン戦にも登板するなど、明るい未来に本人も周囲も胸躍らせた。しかし、実状は厳しく、今季中の支配下入りを果たすどころか7月4日を最後に2軍から3軍へ降格となっていた。

 フォームを崩していた。右肩が早く開く悪癖により、ボールが抜けた。小手先で修正しようとして次は引っ掛ける。悪循環に陥った。

「3軍落ちしてからフォームを一から見直しました。右肩を意識するのはもちろん、もう一つのポイントは左腰。それによって、左膝が遠回りせずにキャッチャー方向へ上手く進むようになり、いい形で体重移動が出来るようになりました」

3軍だから出来た、大胆な挑戦

 スピードガンの数字は落ちているが、見た目の球威は増した。「重心が低くなったように自分でも感じるんです」。リリースポイントが打者寄りになったことで球質が良くなった。

「変な言い方かもしれませんが、3軍に落ちて良かったと思ってるんです。じっくり考えることが出来たし、もし、2軍に居たままならばフォームを変える心の余裕も時間もなかったかもしれません」

 自分の進むべき道が見えた今。また長谷川宙に明るい表情が戻ってきた。能力の高さはピカイチ。これから先、必ずヤフオクドームのマウンドで躍動する存在であることは間違いない。

長谷川宙 最近5試合の成績

7月20日  

楽天  3回 2安打 2三振 4四死球 1失点(自責0)

8月1日

香川  4回 11安打 7三振 1四死球 7失点(自責5)

8月10日

日体大 6回 1安打 8三振 5四死球 0失点

8月25日

高知  7回 2安打 12三振 4四死球 0失点

9月4日

香川  7回 2安打 9三振 1四死球 1失点(自責0)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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