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豊島将之名人vs木村一基九段、注目の「十番勝負」――第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
三冠復帰を目指す豊島将之名人(筆者撮影)

 広瀬章人竜王への挑戦者を決める第32期竜王戦(読売新聞社主催)は8月13日に豊島将之名人(ランキング戦1組4位)と木村一基九段(ランキング戦1組3位)の挑戦者決定三番勝負第1局が大阪市福島区「関西将棋会館」で行われる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

20代vs40代の「十番勝負」

<挑戦者決定三番勝負日程>

第1局 8月13日

第2局 8月23日

第3局 9月5日

 両者は第60期王位戦七番勝負(新聞三社連合主催)でもタイトルを争っており、合わせて「十番勝負」の長丁場だ。王位戦では開幕からタイトル保持者の豊島が2連勝したが第3局で木村が1勝を返したばかり。

 29歳の豊島は今年に入って名人戦、棋聖戦、王位戦とタイトル戦続きのなか好調を維持している。棋聖戦では渡辺明・現三冠(35)にタイトルを奪われたものの、本棋戦準決勝ですぐ渡辺に借りを返したのは大きい。

 46歳の木村は40代後半の「羽生世代」の中では一人気を吐く存在。「千駄ヶ谷の受け師」、「将棋の強いおじさん」の異名を持ち、応援するファンの声も後押しになっているのだろう。

対戦成績は僅差。木村の後手番戦略に注目

<豊島名人vs木村九段全成績と戦型>

2013年7月18日

順位戦B級1組

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2014年9月1日

順位戦B級1組

豊島●(先)-○木村

相矢倉3七銀

2015年6月11日

順位戦B級1組

豊島●-〇木村(先)

角換わり腰掛け銀

2016年3月23日

竜王戦出場者決定戦1組

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2016年6月1日

王位戦挑戦者決定戦

豊島●-○木村(先)

横歩取り3三角

2016年7月11日

棋王戦本戦

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2016年11月10日

順位戦B級1組

豊島●-○木村(先)

横歩取り3三角

2017年8月7日

NHK杯争奪戦本戦

豊島(先)○-●木村

角換わり腰掛け銀

2019年7月3、4日

王位戦七番勝負第1局

豊島(先)○-●木村

横歩取り3三角

2019年7月30、31日

王位戦七番勝負第2局

豊島○-●木村(先)

相掛かり

2019年8月8、9日

王位戦七番勝負第3局

豊島(先)●-○木村

相矢倉

 データが示すとおり、過去11局で豊島の6勝5敗と拮抗しておりほぼ互角。

 戦形は豊島先手ならば相掛かりか角換わり腰掛け銀が予想される。

 木村が変化するとしたら横歩取りへの誘導だが、豊島の横歩取り先手勝率は高く、王位戦第1局も完勝だったためやや使いづらい印象だ。

 木村先手ならば初手▲2六歩からの相掛かりが本命。豊島は横歩取りなど他の戦型に誘導せず、正面から受けて立つだろう。

 タイトル獲得など実績で比較すれば豊島やや有利と見るのが自然だろうが、将棋内容では王位戦第3局で豊島の先手矢倉に対し、木村が得意の受けまくる展開で勝ったのは大きな自信になっているはず。

 「40代の逆襲」が見られる可能性は十分残されている。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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