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西山朋佳女流三冠の試験将棋は9月10日に開幕――棋士編入試験五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
西山女流三冠が合格すれば史上初の女性「正棋士」資格獲得となる(写真:アフロ)

 女性として棋士・四段編入を目指す西山朋佳女流三冠(29)の棋士編入試験五番勝負は9月10日、東京都渋谷区「将棋会館」で第1局の高橋佑二郎四段(25)戦が行われる。

 女流棋界の第一人者である西山女流三冠=白玲・女王・女流王将は今年7月4日プロ公式戦で13勝7敗と規定の成績に達し受験資格を得た。五番勝負は持ち時間3時間で行われ3勝で合格(フリークラス編入)、3敗した時点で失格となる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

流れを決める初戦がカギ

<五番勝負の相手と対局日程>

第1局 高橋佑二郎四段 9月10日

第2局 山川泰煕四段 (26) 10月2日

第3局 上野裕寿四段 (21) 対局日未定

第4局 宮嶋健太四段 (25) 対局日未定

第5局 柵木幹太四段 (26) 対局日未定

<西山女流三冠の公式戦最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

11月11日 銀河戦本戦

対藤本渚四段 ●

12月8日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対佐藤康光九段 ●

12月25日 竜王戦6組

対小山怜央四段 ●

1月26日 棋王戦コナミグループ杯予選

対富岡英作八段 ○

3月5日 棋王戦コナミグループ杯予選

対谷合廣紀四段 ●

5月20日 NHK杯本戦

対木村一基九段 ○

5月24日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対石田直裕五段 ○

5月24日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対高橋道雄九段 ○

7月4日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対阿部光瑠七段 ○

※受験資格獲得

7月4日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対佐々木大地七段 ●

<高橋四段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月21日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対高野秀行六段 ○

5月21日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対本田奎六段 ○

6月8日 加古川青流戦

対是枝直樹三段 ●(持将棋指し直し)

6月20日 順位戦C級2組

対井田明宏四段 ○

7月9日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対古屋皓介アマ ○

7月18日 順位戦C級2組

対島朗九段 ○

7月23日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対石井健太郎七段 ●

8月1日 順位戦C級2組

対徳田拳士四段 ●

8月22日 王座戦1次予選

対長谷部浩平五段 ●

9月5日 順位戦C級2組

対小山直希四段 ○

 両者の直近10局は西山女流三冠が5勝5敗の指し分け。だが受験資格取得にあとがない状況から4連勝したのは、勢いに乗ればどんな強敵でも倒す底力を示している。

 高橋四段は6勝4敗と安定した成績。持ち時間が長く難敵ぞろいの順位戦で3勝1敗と白星が先行しているのもプラス材料だ。

 調子の比較では高橋四段がわずかにまさるが、女流タイトル戦で大舞台の経験豊かな西山女流三冠が力を出し切れば互角の勝負と見る。

 五番勝負トータルでは、西山女流三冠が白星先行することで勢いに乗れるかが合否のカギを握るだろう。

振り飛車対居飛車の対抗形でねじり合い

 戦型は西山女流三冠が生粋の振り飛車党で力強い指し回しが持ち味。高橋四段は居飛車党で、こちらも定跡系よりは手将棋を好む独特の棋風。振り飛車対居飛車の対抗形が予想されるが「研究合戦」ではなく中盤以降のねじり合いが勝負を決めることになるだろう。

 女性が棋士編入試験に挑むのは現・福間香奈女流五冠(清麗・女流王座・女流名人・女流王位・倉敷藤花)に続き2年ぶり2回目。両対局者が力を出し切った良い内容の将棋を期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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