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藤井王座連覇か、永瀬九段1期で復位か――第72期王座戦五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井聡太王座は永瀬拓矢九段のリターンマッチを迎え撃つ(筆者撮影)

 藤井聡太王座(22)=七冠に永瀬拓矢九段(31)が挑戦する第72期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)は第1局が9月4日に神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われる。

 藤井王座は昨年度の五番勝負で5連覇と名誉王座資格獲得のかかる永瀬王座(当時)からタイトルを奪取し前人未到の全八冠制覇を達成した。今回の五番勝負は永瀬九段にとってはリターンマッチである。勝敗と戦型を、データを基に予想してみた。

<王座戦五番勝負日程>

第1局 9月4日 神奈川県秦野市「元湯陣屋」

第2局 9月18日 愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」

第3局 9月30日 京都府京都市「ウェスティン都ホテル京都」

第4局 10月9日 兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」

第5局 10月31日 山梨県甲府市「常磐ホテル」

<藤井王座の最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

5月31日 叡王戦五番勝負第4局

対伊藤匠七段 ○

6月6日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

対山崎隆之八段 ○

6月17日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

対山崎八段 ○

6月20日 叡王戦五番勝負第5局

対伊藤七段 ●

7月1日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

対山崎八段 ○

7月6、7日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局

対渡辺明九段 ○(千日手指直し)

7月17、18日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第2局

対渡辺九段 ●

7月30、31日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第3局

対渡辺九段 ○

8月19、20日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第4局

対渡辺九段 ○

8月27、28日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第5局

対渡辺九段 ○

<永瀬九段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月15日 王座戦本戦

対郷田真隆九段 ○

5月30日 王座戦本戦

対菅井竜也八段 ○

6月14日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

6月27日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対狩山幹生四段 ●(持将棋指し直し)

7月5日 王座戦本戦

対鈴木大介九段 ○

7月12日 順位戦A級

対菅井八段 ○

7月22日 王座戦本戦挑戦者決定戦

対羽生善治九段 ○

8月3日 将棋日本シリーズ

対稲葉陽八段 ●

8月20日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対野月浩貴八段 ○

8月30日 順位戦A級

対稲葉八段 ○

両者安定感抜群も藤井王座やや優位

 両者の調子を比較すると直近10局で藤井王座は8勝2敗と変わらず安定の好成績。永瀬九段も7勝3敗と好調だが「勝率8割ペース」を常とする藤井王座には一歩及ばない。

 また直接対決は藤井王座の15勝7敗(2千日手)と差がついているが、最新の対局である今年2月の朝日杯将棋オープン戦決勝は永瀬九段が制し初優勝、勝負強さを示している。

 総合すると藤井王座がわずかに優位と見る。

角換わり中心も、永瀬九段の序盤戦略に注目

 昨年の五番勝負は角換わりを中心とした戦型選択で、永瀬王座(当時)が1勝3敗で敗れたものの内容的には押している場面が多かった。

 最近の戦型選択の傾向からは藤井王座先手なら角換わり志向が予想されるが、後手の永瀬九段が横歩取りや雁木などの力戦型に誘導する可能性もある。

 永瀬九段が先手番ならやはり角換わりを本線として、相掛かりと矢倉の研究手順をぶつけることもあるだろう。

 前期同様に激戦必至の五番勝負、一局でも多く良い内容の将棋が見られることを期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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