Yahoo!ニュース

ヤクルト小川泰弘が球団8人目のノーヒットノーラン! 過去には金田正一の2回のほか…

菊田康彦フリーランスライター
神宮球場近くに掲げられた横断幕には、ヤクルトの「顔」として小川(左)の姿も(写真:アフロ)

 東京ヤクルトスワローズの小川泰弘(30歳)が、8月15日に横浜スタジアムで行われた横浜DeNAベイスターズ戦でノーヒットノーランを達成(奪三振10、与四死球3)。前身の国鉄スワローズ時代を含め、球団史上8人目(9度目)の快挙となった。

 7回で投球数が100を超えた小川だが、8回には味方のエラーで招いたピンチを切り抜けると、9回も当然のようにマウンドへ。簡単にツーアウトを奪い、最後は代打の乙坂智をフルカウントから外角高めの変化球で空振り三振に仕留め、135球で大記録を達成した。

2度達成の金田はノーノー、完全とも「1対0」

 小川以前にノーヒットノーラン(完全試合を含む)を達成した7人のうち、唯一これを2度成し遂げているのが、国鉄時代に球団記録の通算353勝を挙げた「伝説の左腕」金田正一だ。まずは入団2年目の1951年9月5日の大阪(現阪神)タイガース戦(大阪)で、奪三振4、与四死球5で初のノーヒッターを記録。18歳1カ月での達成は今でも史上最年少で、昭和生まれの投手ではこれが初めてだった。

 金田の2度目は1957年8月21日の中日ドラゴンズ戦、ダブルヘッダー第2試合(中日)。こちらは奪三振10で1人の走者も許さない完全試合だったのだが、9回裏の先頭打者の空振り三振を巡って中日ベンチが猛抗議をして、試合は43分間も中断。それでも金田は動じることなく、後続2人も連続三振に切って取っている。

 なお、前者は0対0の9回裏に国鉄が敵失でサヨナラ勝ちを収めたものであり、後者は中日の大エース、杉下茂の前に8回までゼロ行進だった打線が、9回にようやく1点をもぎ取ったことで達成されたもの。1対0でのノーヒットノーラン(完全試合)は1リーグ時代も含め計21回あるが(継投を除く)、1人で2回は金田しかいない。

ブロスの達成を救ったルーキー稲葉のダイビング

 国鉄時代にノーヒットノーランを達成した投手は、金田のほかに3人いる。1956年5月3日の中日戦第2試合(中日、奪三振0、与四死球2)の大脇照夫(おおわき・てるお)、同年9月19日の広島(現広島東洋)カープ戦第2試合(金沢、奪三振3=完全試合)の宮地惟友(みやじ・よしとも)、そして1961年6月20日の中日戦(後楽園、奪三振4=完全試合)の森滝義巳(もりたき・よしみ)である。

 その後、球団はサンケイスワローズ、サンケイアトムズ、アトムズ、ヤクルトアトムズと変遷し、ヤクルトスワローズの時代になって34年ぶりにノーヒットノーランを達成したのが、1995年9月9日の読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)のテリー・ブロス(奪三振10、与四死球1)。8回2死から右前へのヒット性のライナーを、ルーキーの稲葉篤紀(現野球日本代表監督)がダイビングキャッチで救った。この年、野村克也監督の下で開幕直後からセ・リーグの首位を独走していたヤクルトは、これで2位広島とのゲーム差を6に広げ、2年ぶりのリーグ優勝&日本一に上りつめる。

「ヤクルト」ではこれまで3回達成、うち2回は日本一

 2年後の1997年9月2日には、左腕の石井一久(現楽天GM)が小川と同じく横浜スタジアムで、DeNAの前身である横浜ベイスターズを相手に達成(奪三振9、与四死球4)。1977年に開場した同球場でのノーヒットノーランは、これが初めてだった。この年も首位をひた走っていたヤクルトは、翌日も2位の横浜に勝ってマジック21が点灯。そのまま野村政権で4度目のリーグ優勝、そして3度目の日本一を成し遂げる。

 球団名に「東京」が冠せられた2006年には、5月25日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で、来日2年目のリック・ガトームソンが達成(奪三振9、与四死球1)。前年から始まったセ・パ交流戦で、これが初めてのノーヒットノーランとなった。

 ちなみにこの2006年、ヤクルトは就任したばかりの古田敦也選手兼任監督の下で、3位になっている。つまり「ヤクルト球団」になって以降、3回のノーヒットノーランが達成された年はすべてAクラス、うちリーグ優勝&日本一2回だが、今年はどうか?

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

菊田康彦の最近の記事