ジム・ロジャーズ大予測 ポストコロナ、私ならこれに投資する
前回に引き続き、『ジム・ロジャーズ 大予測:激動する世界の見方』(東洋経済新報社) から経済危機の局面で天才投資家が投資をしている対象についてお伝えします。ロジャーズ氏はベア相場が続く可能性が高いとみている、当面のラリーの可能性もあり、資産運用を続けるべきだと言います。
観光業など一番やられたものに投資をする
楽天証券は3月の新規口座開設が約16万4000口座になり、2ヶ月連続で過去最多を更新しました。シンガポールのオンライン証券の口座開設も相次いで、自粛要請から少人数で回しているために時間がかかると聞きます。多くの個人投資家が米国のETFに投資をしたいと言いますが、ロジャーズ氏の口からは米国株についてはポジティブな意見は聞こえませんでした。
ロジャーズ氏の投資手法は「安く買って、高く売る」という至ってシンプルな手法です。米国株は戻りも早く、新興国株は停滞をしたままです。しかし、投資の結果は短期では図ることはできません。時間はかかっても割安な銘柄を見つけて辛抱強くも続けることが大切だと言います。
「簡単に言えば、一番やられたものを買うべきだ。現時点では、航空会社が一番だろう。レストランやホテル、観光関連、海運も含めた運航関連会社は壊滅的なダメージを被っている。再上場相場に入った際には、そういった産業に一番大きなラリーが訪れる。他には農業銘柄も買えるだろう。」
ロジャーズ氏は世界中の投資家から買われやすい米国株にはあまり関心がなく、割安な日本も含めたアジアの観光産業を注目しているようです。もうすでに十分に安くなっている銘柄であればそれ以上下がるリスクが低いのです。ベトナムなどの新興国にもETFを利用して投資をしています。ただし、十分に調査をする情熱があるなら、個別株に投資をするべきだと言います。自分で調査をして見つけた割安株を仕込んで、5年後、10年後に2倍3倍などに成長をしたら大きな成功を得ることができます。
観光産業は長期的には大きな伸び代あるものの、新型肺炎の影響で一時的に無残な状態になっています。しかし、ウィルスはいずれ収束します。人々がパニックになり株価が深刻な状態になっている時にチャンスがあるということです。
「私は日本の農業への投資を勧めたい。日本の農家の平均年齢は約66歳。そして彼らの子孫は大阪や東京、そしてシンガポールに移り住んでいる。アメリカの農家の平均年齢も約58歳と過去最高で、オーストラリア、カナダも似たようなものだ。そしてイギリスの農家の自殺率は非常に高く、インドも同様だ。今後、農業には大きな変化が起こると思っているので、農業への投資はお勧めしたい。」
他にも割安なものは次のような投資対象が挙げられるとロジャーズ氏は言います。例えば、森林火災があって大きなダメージを受けたオーストラリアやデモがあって壊滅的になっている香港などに注目しても面白いということです。オーストラリアドルは割安になっており、香港から撤退している日系企業も多く、不動産価格なども下落しています。こうした割安な投資対象を探して投資をするのが失敗しにくいと言うのです。
不安の時代には金や銀に投資するのが正しい
「私は2019年の夏から金を買い始め、それ以降も連続して買い続けている。私はもっと多くの人が金や銀に投資すべきだと思っている。誰もが医療保険や終身保険を持っているように、ポートフォリオとして金や銀を持つべきだ。医療保険や終身保険は、できれば一生使いたくないものだが、それを持っていると安心できるものだ。金や銀もポートフォリオの中で、そのような位置付けにあるべきだ。もちろん、タイミングが合えば大きな利益を生み出してくれる。」
リーマン・ショック時にも金価格は上昇しましたが、ロジャーズ氏は「人々が政府に対して信頼をなくしたとき、金や銀の価格は急騰している」と言います。現在、金価格は歴史的な高値水準になっています。
また、マイナス価格になっている原油に関してロジャーズ氏は次のように述べます。
「将来から現在を振り返ったときに、「2015年から2021年の間が複雑な底値だった」と認識するようになるだろう。そして、そこから原油価格はまた上昇する。過去に底値をつけた資産は、複雑な値動きを繰り返し、数年ほど安値近辺で横ばいに推移する。いまがそのときだ。私は原油をショートしていたが、まだ買い戻していない。」
「有事はキャッシュ」ではありますが、持つべき通貨に関しては間違えてしまうととんでもないことになると言います。リーマン・ショックの際にアイスランド・クローナで預金をしていた投資家は現金を全て失うことになりました。
「今回、持つべき通貨は、絶対に円でもスイスフランでもない。米ドルが最も魅力的な通貨と考えている。」
最大級の危機が中国の覇権を後押しする
「今回の危機で世界の主要国がみなダメージを受けると述べた。それは中国も例外ではないが、その中からいち早く立ち上がるのは中国だろう。私がアジアに移ったのは、中国が次の経済派遣を握ると信じているからだ。中国がアメリカに代わる覇権国になることを疑っていない。ただ、その過程ではさまざまな問題に直面するだろう。」
ロジャーズ氏は世界中から好かれている国よりも、むしろ嫌われている国や人の方に魅力を感じると言います。米国株やGAFAと言った割高な投資対象については辛口です。
「ベア相場が本当に到来するときにはアマゾンやアップル株は50%から80%は下がるとみている。けっして悪口を言っているわけではなく、これが相場の仕組みなのだ。」
ロジャーズ氏は流動性や買いやすさというよりも、割安かどうかを重要な視点とするようです。
ただし、個別株に投資をする場合、長年の経験と勉強が必要です。マクロ経済と個別企業を研究する必要があります。また、壊滅的なダメージを受けている航空会社のような対象の場合、失敗をすると紙屑となる場合もあります。ロジャーズ氏は投資をする場合、倹約をして元手を作ることが非常に重要だと言います。必ず、当面の生活費(最低でも6ヶ月前後)を現金、預金などの余裕資金で準備をし、長期投資をする場合は当面の間使わないお金で投資をするように心がけるようにしましょう。
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