Yahoo!ニュース

【国民民主党が会派離脱】 玉木雄一郎の「倍返し」が始まった!

安積明子政治ジャーナリスト
立憲民主党との共同会派を離脱を表明(写真:つのだよしお/アフロ)

共同会派離脱を表明

 国民民主党の玉木雄一郎代表は10月23日、立憲民主党、社民党と組む衆議院共同会派からの離脱を表明した。

「臨時国会におきましては、別の会派で臨むことに決めました。(菅政権での)本格的な初めての国会論戦を迎えるわけですので、まずは我が党としての足元をしっかりと固めていきたい」

 そもそも国民民主党は合流新党に参加しない仲間が集まった政党だ。にもかかわらず、衆議院内で議会活動を共にしていては、国民にはわかりにくい。すでに参議院では、国民民主党と立憲民主党との会派は解消している。にもかかわらず、衆議院で会派を共にするのは矛盾を孕む。

立憲民主党と一緒では、出番がない

 理由は他にもある。「立憲民主党と共同会派を組んでも、我々の出番がない」。これは以前、玉木代表が漏らした言葉だ。

 立憲民主党と共同会派を組んでも、7名の少数派では国民民主党の議員に質問が割り当てられることはいっそう少なくなる。そればかりではない。「自由がなかった」というのだ。たとえば矢田わか子参議院議員と田村まみ参議院議員が連合の女性役員とともに、4月7日に厚生労働省の自見はな子大臣政務官に「働く妊婦への配慮」を陳情した件だ。矢田議員は3月26日の参議院予算委員会で、新型コロナウイルス感染症に怯えながら出勤しなければならない妊婦への配慮について質問している。

 この問題についてはすでに1万以上の「国に妊婦の外出自粛を求める」電子署名が集まり、矢田事務所にも多数の要望書が送られていた。

「国民民主党だけで行くな、ということ。それでは迅速に問題に対応できない」

 玉木代表はこう述べたが、反対に立憲民主党の動きを国民民主党がセーブしたこともあったようで、もともと両者の考え方に隔たりがあるということだ。一緒にやるのには無理がある。

なんとか3名をかき集め……

 さらに立憲民主党と一緒では、憲法改正論議がままならないという制約もあった。これが共同会派解消の最大の理由だが、だとしても7名の会派では、議会活動もままらないのではないか。

 そこで希望の党の中山成彬衆議院議員、井上一徳衆議院議員と、無所属の高井崇志衆議院議員と共同会派を組むことにした。これでメンバーは10名となった。

「10名になればいろいろできる。憲法調査会にも幹事を1名出せる」

 だがなぜ彼らなのか。中山氏や井上氏なら、改正に向けた憲法議論は可能だろう。だが中山氏はかつて、選択的夫婦別姓を「国家解体政策」と呼んだことがある。

 一方で国民民主党は21日、橋本聖子男女共同参画担当大臣に選択的夫婦別姓を推進するように要請した。これは中山氏とは考えがまるで違う。

「同じ党になるわけではないから、いいんですよ」

 国民民主党のある関係者は、明るさを装いながらこう言ったが、国民民主党と中山氏らの国家観が似ているとは思えず、単なる数合わせ感を払しょくすることはできない。

 だが玉木代表は、「数合わせでいいんです。党として一緒になる予定はない」と断言する。

「小さな所帯だから質問時間は短いけれど、10人ならいろんな委員会に参加できて、いろんなことが主張できる。たとえば高井さんは衆議院議員で一番デジタルに詳しいから、デジタル庁の創設問題などでどんどん活躍してもらう」

 高井議員は新型ウイルス感染症特措法に基づく緊急事態宣言が出された直後に歌舞伎町の風俗店に入り、立憲民主党に除名された。そんな「曰く」があるにもかかわらず、高井議員を活用しようというのは、ある意味のふっきりを感じる。

言ってもいないことを言ったとされて……

 立憲民主党との合流新党に抗した玉木代表は、すっかり悪役にされていた。時には述べたことがないことさえ「言った」とされたこともあった。たとえば「創」11月号に掲載された田原総一朗氏と佐高信氏の対談だ。その中で田原氏はこのように述べている。

玉木議員と1時間くらい会って話したけれど、やっぱり権力の世界って怖い。玉木は負けたんだ。マスコミは全部、玉木批判ね。仲間も離れていく。で、玉木に3つ確認したの。「維新と組むんじゃないだろうな?」「組まない」、「自民党と組むんじゃないだろうな?」「組まない」、「枝野と対立するんじゃないだろうな?」「対立しない」と。そうしたら、「早い時期に田原さん、枝野と3人で会うようにしてください」と。要するに「枝野と志位が連立政権を作る時は加わるんでしょう」と言うと、「もちろん加わりますよ」と。

 これには非常に違和感があった。玉木代表は常々、共産党とは距離を置いていた。2016年の参議院選で、地元の香川県から共産党の党籍を離脱した候補が出馬した時でさえ、共に写真に写ることを避けたほどだ。にもかかわらず、共産党と連立を組むことはできるのか。

 そこで玉木代表に問い合わせると、「8月21日に田原さんが事務所に訪ねてこられたが、そのような会話はしていない」とのこと。実際に玉木代表はその10日前に緊急記者会見に開き、国民民主党を分党することを発表している。こうした会話は成り立つはずがない。

「むしろ反対。田原さんが『枝野と志位が連立を組んでも加わらなくていい』と言った」

 なるほどこういうことなのだ。黙っていては勝手にストーリーが作られ、意に反して駒にされてしまう。だからこそ共同会派から離れて、自分で発信していこうということなのだ。

「やる気があれば、できるんじゃない?」

 立憲民主党の安住淳国対委員長は、「事実上の(召集)前日の(会派離脱)表明で、大きな混乱が起きている」と苦言を述べた。委員会の構成の調整については、国会開会日である26日以降に行うだろうが、国民民主党に代表質問の時間が割り当てられるかどうか……。しかし「やる気があれば、できるんじゃない?」と玉木代表は至って明るい。

 いよいよ始まる臨時国会の会期はわずか41日。審議する法案も9本と少ない。菅政権はコロナ対策に専念しようとしているが、立憲民主党などは日本学術会議問題で菅政権を追及するつもりだ。

 そんな中で国民民主党は、野党ヒアリングにも参加せず、他の野党と一線を引く。玉木代表の壮大なリベンジはこれから始まる。

 

 

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

安積明子の最近の記事