NHK、史上最高の利益剰余金5,135億円を記録。NHKという名の投資ファンド。有価証券保有が4割も
NHKの『値下げ』と『2倍割増』受信料よりも事業支出が多い構造改革と放送法を考える…
という記事を書いたが、東洋経済の『NHKの正体』の特集でも、『受信料ビジネス』という視点で解説されている。
特筆すべきは、受信料が減りながらも確実に利益を出し続ける経営手腕だ。
■金融資産が急膨張 まるで投資ファンド
■NHKの財務諸表は簡単に入手できる
NHK予算のページ
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/
2023年、令和5年度の収支予算と事業計画
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2023/youyaku.pdf
一般企業でいうところの、『P/L損益計算書』で見る限り、2023 年の受信料が減り6,240億円、事業収入も6,440億円となった。一般企業でいうところの営業利益の『事業収支差金』は▲280億円の赤字が見込まれる。
2023年度(令和5年度)の事業計画では、事業支出の6,720億円の内容に放送に5,031億円74.9% 受信料の収納に607億円9.0%となっている。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2023/siryou.pdf
なぜか、事業支出の6,720億円以外の数値が合わないと思うと…、
よく※キャプションを読むと、『業務ごとの経費(物件費)に、人件費と減価償却費を要員・施設の投じて配分したもの』とある。
つまり、変動費と固定費が見事に混ぜられているグラフだった。
■NHKの決算書から見える高収益構造
現在、令和4年度の中間決算が発表されている。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/
便宜上、1年間の令和3年度(2021〜2022)の財務諸表を比較してみた。
ジャンル別番組制作費
ジャンル別の番組制作費3,070億円がどのような構成で支出されているかがわかる。
ニュースが一番高く30.8%を占め945億円
ライフ・教養で25.5%で783億円
スポーツ14%430億円
ドラマ11.8%361億円
エンタメ音楽 7.6%234億円
と続く。
これらは出演料、著作権料、放送権料、美術費、回線料、人件費、減価償却費を含めた番組総経費と固定費も含まれている価格だ。
実質の固定費と分離させたのがこちらのグラフ
直接の変動費にあたる経費は、3,070億円のうち、63%の1,937億円だった。制作会社などの人件費やスタジオはもこの中に含まれるので、NHK側のコストは37%の1133億円あることとなる。
■『契約収納費』622億円に縮小だが、実質は62億円の公平な受信料負担の強制力
受信料の『契約収納費』は、『営業経費』という名目だが、『営業経費=契約収納費+人件費+減価償却費』である。136億円はNHK側のコストであることがわかるので実質の回収コストは、486億円。それでも経費関連の手数料が292億円を占める。法人委託の手数料も131億円。実質に集金に動いているスタッフコストは62億円分と、10%だ。このスタッフで未納世帯は2倍の負担といっても何も影響力がない事がわかる。
■一人当たりの平均給与は、1,629万円
給与1,114億円と退職手当・厚生費517億円を足すと1,631億円,
職員数10,175人で割ると、平均一人当たりで1,629万円となる。純粋に給与1,114億円だけでも、平均一人あたり、1,094万円となった。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2021/gaiyou_r03.pdf
令和3年度NHK単体財務諸表 令和3年4月1日〜令和4年3月31日
NHK単体
純資産合計が8,579億円
内訳は、固定資産充当資本という、公益法人特有の資本が4,923億円。剰余金が3,654億円、建設積立金1,693億円も積立られている。資産合計で1兆2,720億円だ。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2021/t-zaimu_r03.pdf
一方、法人税が発生するグループ会社もまとめた連結のB/Sがこちらだ。
資産合計は、1兆3,961億円となり、純資産は9,577億円に及ぶ。
令和3年度NHK 連結財務諸表 令和3年4月1日〜令和4年3月31日
https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2021/r_zaimu_r03.pdf
B/Sをもとに、NHK連結の有価証券や剰余金を緑で表示してみた。
まずは調達のクレジット側
NHK連結グループの資産は1兆3,961億円
資金調達の68.6%は純資産で9.577億円
流動負債の大半は受信料の前受け58.2 %
固定負債の大半は退職給付引当金で79 %
NHKの資産の1割は退職給付引当金であった。
そして運用のデビット側
流動資産の71.4%は有価証券
固定資産の19.9%は長期保有の有価証券
有価証券の合計で5,487億円となり、1.3兆円資産の39.3%も占めている。さらに建設積立資産が1,693億円と12.13%を占める。
損益計算書や予算書では赤字に見えても…。バランスシートでは、内部留保や減価償却費計上による莫大なキャッシュフローがあることがわかる。
公益法人ということでNHK本体には税負担がない。連結の決算でも法人税は24億円ほど。純資産9,577億円の0.25%にすぎない。
この状況でインターネットからも受信料という話がでてくる時点で、NHKの『本来業務』をまっとうすべきではないだろうか?
日本を代表する受信料で運営される公共放送のNHKの運用が、有価証券保有率が4割近くもあるというのは、もはや公共ファンドとして存在させ、受信料の負担者に、配当金を還元するべきかと思う。